合格者を水増しする進学校の「ヤミ」

私の勤務校でも合格者数の開示を毎年行っています。

中学校も併設し、進学コースを設定していることもあり、進学実績を気にして受験や入学を考える生徒や保護者も多いためです。

また学習塾からの評価にも直結し、受験生に受験を勧めてくれる機会の数に直結するため、ないがしろにはできません。

当然ながら、難関大学の合格実績や早慶やGMARCHの合格実績も重要です。

しかし、地方、特に九州の受験事情において需要の多いボリュームゾーンであり、生徒獲得に直接つながる合格者の数はやはり「国公立大学」です。

「国『公立』大学」の合格者数

地方の国立大学、主に県名を冠した大学はその地域においてのネームバリューが絶大です。

しかし、難関大学と地元国立大学だけではどうしても合格者数が寂しいことになります。

地元国立大学といえど、学区トップの学校では上位3割、県内トップの公立進学校であっても上半分の成績でなければ合格しないのが実情です。

したがって、その数を埋めるのが『公立』大学です。

公立大学は「○○県立大学」という名称が多く、難易度は比較的低いけれども、共通テストを利用した統一日程での受験ですので、くくりとしては国立大学と合わせて「国公立大学」とされています。

公立大学の多くは共通テストが50%前後の得点率で受験が可能で、二次の記述試験でも2科目以下の受験が可能なためハードルがかなり下がります。

したがって、ほとんどの学校では「国公立大学」として合格者数を計上しています。

ただ、受験者や保護者が進学実績を見る場合、地方の県の○○県立大学と同じ公立大学であっても、東京都立大学、大阪公立大学、横浜市立大学などを別に確認しておく必要があります。

これらの大学は難関、もしくはそれに次ぐ難易度の国公立大学と同等のレベルです。

ですから、これらの大学への進学者は、地方の県名国立大学より上位の生徒ということになります。九州ではあまり知られていない大学ですから。
(首都圏や関西圏の人からすると笑い話でしょう)

公立大学を合格者数に入れることに関しては、第一志望者も多く一概に「ヤミ」とも言えないのではないかと思います。

文科省管轄外の学校(省庁大学校)

ここまでの話は特に「ヤミ」というほどではありません。

私が勤務する地域の周辺では高校3年生の国公立大学志望者に防衛大学校(以下防衛大)を受験させる習慣があります。

防衛大学校について

防衛大はその名の通り、防衛省管轄の大学校で幹部自衛官を育成する機関です。正確には大学ではありませんが、それに相当する教育機関として認められています。卒業した場合、学位授与機構より学士が授与されます。

防衛大の試験は一次の学力試験と二次の適正試験があり、無料で受験できます。一次試験が11月に実施されるため、勤務校の周辺では、模擬試験代わりに受験をする習慣があるようです。
(これは試験を悪用しているように見えますが、自衛隊側からも潜在的な自衛官候補に機会を増やすという観点から推奨されています)

防衛大学校=国立大学?

ここからが問題なのですが、私の勤務校の近隣では国公立大学の合格者数にこの防衛大の合格者数を組み込んで計上している学校が複数存在します。

防衛大が政府の設置機関という特徴を利用して防衛大=国立大のように見なして合格者数を発表しているのです。

百歩譲って、二次まで受験して合格したのであればそれをカウントする道理も立ちますが、一次の合格者(つまりまだ合格していない)を組み込むのは明らかに誤謬を狙った詐欺まがいに近い行為と私は感じます。

指標の信用性を失墜させる行為

そもそも、国公立大学者の合格者数は第一志望がほとんどであるために、卒業生の進路実現度のバロメータとして成立しています。

防衛大を合格者数に組み込む行為は、他校と差をつける独善的なルール違反をしているということだけではなく、指標自体の信用性を失墜させる行為であるため、非常に憤りを感じます。

当然ですが、私の勤務校では防衛大(+それ以外の省庁大学校)の合格者数は決して国公立大学の合格者数には入れていません。

私立大学の合格者数に関して

私立大学の合格者数に関しては、合格者が必ずしも進学しないケースも多いためどうしても被りが出てしまいます。

そのため必ず「合格者数は延べ数」という文言を加えています。

ちなみにこの「延べ数」を利用して、一人の受験生に大量に私立大学を受験させて合格実績を水増ししていた学校もあるようです。

しかも、高校側が受験費用を負担し、謝礼も渡していたケースもあるようです。

ここからわかるように、受験生側としては、私立大学の合格者数はそこまであてにならない指標であることは知っておくべきでしょう。

それ以外の大学校の場合

防衛大以外にも気象大学校や航空保安大学校、海上保安大学校など複数の省庁学校が存在します。

これらは特定の目的のために作られた非常に優れた機関です。受験自体を勧めることは人材獲得の観点からも決して悪いことではありませんが、水増しに使われることはあまり褒められる状況ではないでしょう。

基準がないため曖昧

合格者数の定義や基準があいまいなため、各学校のモラルによって基準が変わっているのが現状です。

九州においては、特に国公立大学の評価が高いため起きている特有の現象でもあるのでしょう。


一次合格って、それまだ試験中でしょう、と思うのは私だけでしょうか…?

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