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大阪府の高校無償化の肝は「高校版ふるさと納税制度」


大阪府の高校無償化

大阪府の高校は私立学校も含めて原則無償化することが決まりました。

決定までは紆余曲折があったようで、上限60万円の支給としていた点で府は大阪私立中学校高等学校連合会と対立していました。

この理由としては60万円を超える額に関しては私立学校側が負担をするという点だったのですが、府側が限度額を63万円としたことで連合会と合意したということです。

3万円の攻防はなぜ

年間3万円の分に関してどうして揉めていたのかは疑問です。

確かに大阪府内の私立高校の学校の中には授業料が60万円を少し超えている学校が存在するため、このままではそれらの学校で法人側の手出しが発生したと考えられます。

私立学校からすれば授業料をはみ出した分に関しては教育充実費や施設充実費という実費で回収すれば良いわけで、そこまで問題にはならないと考えがちですが、どうして連合会は反対の立場になっていたのでしょうか。

ここからは予測ですが、仮にそうした学費変更を行う場合、私立学校は寄附行為と呼ばれる定款の変更が必要です。

寄附行為の変更の認可申請は監督官庁(今回の場合は大阪府)へ行う必要があり、認可が下りるまでに2か月ほどかかると言われています。

理事会の招集から金額の決定、変更の申請、認可、周知までを考えると生徒募集やパンフレット、募集要項に間に合うタイミングではありません。

その結果、最低1年間の収益悪化から3万円の攻防が発生したのではないかと考えられます。
(この辺りは多分に個人的な推測を含んでいます)

「高校版ふるさと納税制度」

今回のニュースの肝はそうした無償化そのものではなく、その財源をどうするか、というところにあります。

どうやら大阪府はその財源として、「ふるさと納税制度」の高校版を計画しているようです。

また府は、新制度導入に伴い、ふるさと納税の仕組みを活用した「母校応援ふるさと納税制度」を6年度から始めることも決めた。府の基金を通じ、希望する高校に卒業生らが寄付できる仕組みで、寄付金から2千円を引いた全額が所得税の寄付金控除の対象となる。学校法人に直接寄付するよりも、控除される税額が大きくなるという。

一般的に私立学校への個人寄付の場合、寄付した金額から1万円を引いた金額が所得税の控除として認められます。

この金額では大口の寄付をする人であれば十分に意味があるのですが、小口の寄付に関しては税制上のメリットが全く存在しません。

しかし「ふるさと納税制度」であれば2000円を引いた金額が控除額として認められるため、5000円、1万円の寄付であっても控除の意味があり、数万円の場合は割合から見て、ほぼ全額に近い額が控除可能となります。

大阪府の吉村知事は以下のようにコメントしています。

「教育のために納税したい人は多い。学校側が在校生の学費以外に財源を確保できる仕組みは非常に有益だ」

教育のために、母校や後輩のためにお金を使いたいというニーズは決して小さくなく、その意味で今回の無償化は自力で寄付を集めることのできる私学がより優位になるという、維新の会らしい政策の一つと言えるかもしれません。

生徒側の立場からすれば、無償化については歓迎の声が大きいですし、教育機会の確保を考えれば九州でも広がってほしいところです。

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