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“夜のバイト”教員の逮捕を「想定外」と考える不見識さ

ホストクラブでアルバイトをしていた教員が客引きの違法行為で逮捕されたことがニュースになっていました。

教員の雇用形態や実情に詳しくない方は、このニュースにショックを受けたのではないでしょうか。

教員の雇用形態は「常勤」と「非常勤」に分かれる

学校の教員という職業においても正規雇用と非正規雇用が存在します。

公立学校の場合、正規雇用教員を「教諭」、非正規雇用教員は「講師」と呼ばれています。

「講師」にも大まかに二種類が存在し、基本的には「教諭」とほとんど同じ業務をこなす「常勤講師」と授業の時間だけを担当し、他の業務を行わない「非常勤講師」に分かれます。

「常勤講師」は職務専念義務が課され副業や兼業が禁止されているのに対し、「非常勤講師」はそうした制限が無いのが特徴です。

「非常勤講師」のホスト兼業を想定外とする教委の不見識さ

今回の事件で逮捕された教員は「非常勤講師」です。そのため、副業や兼業を行うことはむしろ想定内であると言えます。

ところが、教育委員会は以下のような反応のようです。

市の正規職員ではないため勤務時間外の副業を認められていたが、市教育委員会は「ホストは想定外だった」と困惑している。

記事内にもありますが、「非常勤講師」の時給は2829円、週20コマの場合は月額で226320円となります。

名古屋市の場合、20時間以上の非常勤に関しては社会保険が共済で加入できるようですので、実質的な手取りは15万円といったところでしょうか。

正直、これだけで生活をできると考えるのはかなり無理筋であり、割の良いアルバイトをするのは前提となるでしょう。

特に日中の週20時間拘束の場合、空いているのは夜の時間しかなく、当然ながら夜の仕事をしている人間が存在するのは想定すべきです。

教員は聖職ではない

「非常勤講師」は単年度契約の会計年度任用職員であり、次年度も契約をする保障のない、非常に不安定な立場です。

さらに、時給が発生するのは20時間の授業に対してのみで、準備や予習、添削や提出物の管理などは時給が支払われていません。

熱心な教員であれば、20時間の授業数はほぼフルタイムに近い時間での勤務となるでしょう。

これまで、教員に聖職であることを期待し、強要してきたのが現代社会であり、教育委員会です。

しかも非常勤講師というこれほどの不安定な雇用、低廉な賃金な人たちにまで名古屋市教育委員会はそうしたことを期待していた、ということになります。

これはあまりにも常識外れな話ではないでしょうか。

非正規職員を利用する弊害を現場に押し付ける無策

非正規の職員を利用する以上、こうした種々の弊害を受け入れる覚悟が必要です。

ところが教員の職業としての負担やコスパの悪さが知られるようになり、「常勤講師」でさえも志望者が減少し雇用の調整弁としての機能が成立しない状況が来ています。

その結果、代理教員が見つからず担任や教科担当が定足数を満たしていない状況を現場に無理やり押し付けて、あたかも人員不足が解決をしたかのように装うことが教育業界では常態化しています。

仮に、非正規職員、「非常勤講師」に対して倫理規定的な縛りを与えるのならば、さらに教員不足が悪化するのは間違いありません。

そして、そんな条件の悪い教職に応募するような人材が果たして教職に相応しい人物なのかどうか。

少なくとも、現状の「非常勤講師」の取り扱いで夜の仕事を兼業する人が出ることは必然であり、それを聖職という虚像で排除することは不可能でしょう。

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