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1985 Vol.10〜サイズ PSY・S

さて、前回のタイツに続いて、今回はサイズ(PSY・S)です。ジャケつながりです。

「Different View」!デビュー・アルバムにして永遠の名盤です。

知るきっかけは「佐野元春さんがラジオでGONTITIを紹介〜そのアルバムを購入〜不思議なシンセサウンドに惹かれる〜それが松浦雅也さんと知る〜プロデュースがムーンライダーズの岡田徹さんで興味〜いざ購入」だったと思います。

で、当たり!

松浦雅也さんといえば、当時何と言ってもフェアライトCMIという現在のDAWの元祖ともいうべきコンピューターシステムの使い手だったのは有名な話。1000万円を余裕で超える超高価なキーボードです。であれば、その機材を持っているだけで映画音楽やCM音楽などに重宝されたであろうことは容易に想像できますね。

実際アニメ映画「うる星やつら オンリー・ユー」や「風の谷のナウシカ」、あるいは坂本龍一の「音楽図鑑」などでもフェアライトは使われていたようです。だから自然と子供ながらに耳にはしていたはずなんでしょうが、「これがフェアライト・サウンドかぁ!」という最初のインパクト間違いなくこのアルバムでした。

とはいえフェアライトというコンピューターについて当時は詳しい情報も何も知らず、ただただ曲の良さとアレンジの素晴らしさ、そして歌の上手さにひたすら感動して、レコードが擦り切れる(死語)ほど聴いていただけだったのです。とにかく音楽的な部分でのセンスの良さが当時から飛び抜けていたような印象がありました。

ボーカルのCHAKAさんは、もともとジャズ志向で英語もとても流暢に歌いますが、日本語になると、どこかユーミン的な非常に硬く無表情な感じの発音になります。が、それがむしろとても魅力的であり、サウンドの個性に決して負けないボーカリストとしての存在感があります。このあたり当時山ほどいたテクノ系のユニットの中でも頭一つ抜きん出た個性を感じましたね。

自分にとって1985年を象徴する日本のポップスを3枚選ぶとすれば、鈴木さえ子「緑の法則」、Shi-Shonen「Sining Circuit」、そしてこのPSY・Sの「Differrent View」なのです。リアルタイムで受けたこれら3枚の影響は計り知れません。

というわけで、語るに尽きませんが、今回も全曲レビューしてみます。

SIDE A

1. Teenage

とにかく最初のドラムの音から強烈!当時は本当に「こんなドラムの音、今まで聴いたことがない」というくらいのインパクトでした。擬音にすると「コーン!」という感じ。全体的に音数が少ないのに、非常にファンキーで飽きがこない緻密なサウンド。個人的にはPSY・Sの中で一番好きな曲といってもいいくらいの名曲。そういえば「AVガーデン」という僕が必ず観ていたサエキけんぞうさんと細野晴臣さんが出ていた当時のテレビ番組で観たこの曲のビデオクリップも強烈な印象でしたね。白黒のチャンバラ映像をコラージュしたもので変なPVでしたが。

2. From The Planet With Love

この曲は英語詞ですが、サウンドそのものも、ちょっと洋楽テイストが強い16ビートのマイナー調になります。個人的にはサビ終わりのティンバレスみたいな音のフィルインだけで鳥肌もの。それにしてもCHAKAさんは本当に歌が上手い。途中一瞬出てくるラップみたいなのも、めちゃくちゃファンキーで凄くカッコいいです。

3. I・E・S・P(アイ・エスパー)

エコーの効いたアイドルポップスみたいな可愛らしい曲調です。まるでテクノの森に迷いこんだフィル・スペクターのよう。CHAKAさんのボーカルも前曲とはうって変わってキュートな歌い方に。それと相反するような破壊的なドラムの強烈な音との対比がまた面白い。松浦氏は、ドラムにおけるフィルインのゴーストノートみたいな細かい連打をプログラミングで打ち込むという名手で、ゆえにバスドラムとスネアの音だけで曲を引っ張るという手法が、このアルバムでも多用されてます。ハイハット系の音がない、というこのアレンジ手法が驚きでもあり新鮮でした。

4. Big Kitchen

スウィングする軽めのテクノ・ポップという感じの小品。こういうのも好きです。

5. 景色

イントロなしのいきなり歌はじまりが新鮮です。ミディアム系のポップな曲ですが、英語詞と日本語詞が混在し、サウンドも曲調もAとBでコロコロ変わります。曲全体のインパクトは弱いかもですが、この決して歌謡曲的な流れには行かない照れの部分というか、方向性が揺れる感じも初期の彼らならではの魅力だったかも。

SIDE B

1. 星空のハートエイク

これもA-3のようなミディアム・テンポのアイドルポップス風サウンドですが、ドラムパターンがまたやたら面白く、いちいち細かくベロシティを変化させたりと、要所要所で出てくるフィルインがとにかく最高です。個人的には途中の間奏で転調して出てくる優雅なピアノソロが大好きです。後半のサビ終わりで4つのコードがループしサウンド全体が厚くなる感じとか、アレンジの松浦氏の才気を感じます。

2. Paper Love

あえて古臭い和製スウィング・ジャズっぽい曲をテクノの手法で打ち込みしています。CHAKAさんも歌も、やはりピッタリとハマっていますし、小品でありながらインパクトは充分。いきなり途中でデジタルのビットレートが落ちて、まるでテープスピードが落ちたか、レコードプレイヤーが止まったかのように音が中断する効果音も当時は驚きでした。レコード時代ならではの手法だったのかもしれません。

3. Desert

テーマが砂漠だけにエキゾチックなマイナー曲調。これも日本語詞と英語詞が混在してます。どこか久保田早紀さんの「異邦人」を思わせるメロディー。その歌謡曲っぽい雰囲気が、当時はちょっと苦手だったんですが、いまでは大好きな曲です。

4. 私は流行、あなたは世間

これも初期PSY・Sを代表する曲。バラードのようで全然バラードに聴こえないのは、やはり異様なドラムサウンドのせいでしょうか。CHAKAこと安則まみさんによる歌詞は、意味深で哲学的でもあります。実際の真意はわかりませんが、それはCHAKAさんによるPSY・Sという新しい門出に対する期待と不安が入り混じったような印象を受けます。このぼんやりしたサウンドでアルバムは幕を閉じます。

やはり最高です!

ちなみにセカンドの「ピクニック」も、更にポップスとしての完成度を高めたような素晴らしいアルバムで、ファーストと甲乙付け難い名盤になってます。僕にとって、やはりPSY・Sは最初の2枚なのです(もちろん、その後も好きですけどね)

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