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山中俊治さん「言語としてのスケッチ」交流会 に参加したよ! #デザインエンジニア #スケッチ #がようしラボ

12月26日(水)、山中俊治さんによる「言語としてのスケッチ」交流会(がようしラボ 主催)に参加してきました。
◆イベントページ
http://gayoushi-lab.net/information/225

山中先生のプロフィール

山中 俊治さんデザインエンジニア東京大学生産技術研究所・東京大学大学院情報学環・教授1982年東京大学卒業。日産自動車デザインセンター勤務。1987年よりフリーのデザイナーとして独立。1994年リーディング・エッジ・デザイン設立。2013年より東京大学教授。腕時計から鉄道車両まで幅広く工業製品をデザインする。一方、技術者として、ロボテックスや通信技術に関わる。著書に、「デザインの骨格」「デザインの小骨話」などがある。twitter: https://twitter.com/Yam_eye

山中先生にお会いするのは初めてで、12月初旬に開催されていた「もしかする未来 工業×デザイン」で山中先生のスケッチを拝見し、一気にファンになりました。
"東京大学生産技術研究所70周年記念展示「もしかする未来 工学×デザイン」に行ったよ #もしかする未来"

また、山中先生の考える「デザインエンジニア」についても大変興味があったので一度お話をお伺いしたいと思っていました。
私自身は、"デザイナーとエンジニアのシームレスな中間地点に立てるプロダクトマネージャー"を目指していて、現在はフロントエンジニアとしてデザインもしつつ開発をしています。
山中先生が今まで作られたプロダクトについて、そしてスケッチやデザインに対する先生のお話を直接聞くことができる本日のイベントを、心から楽しみにしていました。
求められるのは、アートとサイエンスを両立できるつくり手 ──Prototyping & Design Lab・山中俊治さん(前編)

今回は、主にスケッチのお話です。

「言語としてのスケッチ」

「スケッチは、言葉に似ている」という山中俊治さん。デザイナーが描くスケッチは、芸術的な表現手段ではなく、日常言語であり、書式や文法があり、誰にでも習得可能らしい。画用紙を使ったワークショップを研究・実践する「がようしラボ」では、芸術的な絵を描くための画用紙ではない使い方を模索してきました。白い画用紙に、スケッチするには、モノを観察し、理解し、表現する必要があります。そして、スケッチは、人と共有して、次につなげる手段にもなります。

「今回は、お絵かきの嗜みを伝えるゼミのような感じで進めていきましょう。」
山中先生はそうお話されると、ディスプレイにご自身が書かれた過去のスケッチを映しながら丁寧に話し始めました。
「絵を描くのは芸術分野だが、絵画ようなハイレベルなアートである必要はない。」
「人に通じる絵を描けること、それが大事な役割を果たしている。」

機械工学と漫画の両方が活かせる仕事として「工業デザイン」の道を独学で進みはじめたお話

山中先生は、美大などでスケッチの教育は受けておらず、自分のやり方でスケッチを習得し、自分の思考と手の役割を考えてきたそうです。

「ビジュアルワークの基本は漫画にある」
そして、漫画家を志望されていた時期があったそうで、先生のビジュアルワークの基本は漫画にあるとのことでした。
私の中で漫画最強説がムクムクと大きくなりつつあります...。そんな先生の漫画に対する内容は以下の通り。

・学生の頃は漫画家になりたくて、2年だけ漫画を一生懸命描いていた。
・宇宙兄弟のムック本に宇宙機をデザインするという役割で、最終回に漫画を描いた。
・野球の漫画、水島新司さんの野球の漫画を真似て、そっくりに描き、そしてスポーツの漫画ばかり描いていた。
・スポーツ漫画ばかり描いていた。
・漫画はとにかく勉強になった。
・漫画の中では世界を作る、ありとあらゆる物を描かなくてはいけない。道路と歩道の段差など、あらゆるシーンの世界を観察した。
・観察し、解釈し、描いていく、その漫画のプロセスが勉強になった。
・特にスポーツ漫画では、人体の躍動感、リズム、流れを描く勉強になった。

「機械工学と漫画の両方を活かせる職を考える」
大学で勉強された機械工学と漫画の療法を活かせる職を探すべく、「デザイナーとして雇って欲しい」と漫画を持って色々なデザイン事務所を周ったそうです。そのうちの一つ、日産自動車でプロダクトデザイナーとして就職され、その後フリーとして働き始められたとのことでした。

デザイナー・プロダクトデザイナーとしての経験値はないに等しい状態でも、「やりたいことを実現するために動く」その情熱と行動力が、素晴らしいプロダクトデザインに繋がっているように感じます。
行動できる人は、その後の経験値も自らの行動によって得ることが出来るのですよね。

「やりたいことを実現する行動力」
もっとつけていきたいですね。

数々の工業デザインのスケッチを見ながら、一つずつ丁寧に解説していただきました。
1990年セイコーのためにデザインした時計、ロボットデザイン、猫背のロボット、モーターモジュールのスケッチ、弓引き人形の再現、ドイツ人の研究者と一緒に開発した外力に逆らうモーター、新しい未来の乗り物、Movie用の飛行機、ドローンがまだ出回っていない時にスケッチしたドローンのような物、小惑星探査機、家具、掃除機、義足のデザイン、義手のデザイン etc...

山中先生の数々のスケッチを見ながらこうして解説を聞けることは、本当に貴重な体験です。先生のスケッチが気になる方は、こちらのinstagramを是非ご覧になってください。(山中先生の公式instagramです)
今日拝見させていただいたスケッチも含め、数々のスケッチを見ることができますよ。

スケッチを描くことは、思考のプロセスでもある

即興で喋ったことを文章にしていくのは簡単だ。
しかし、それは言葉に使うことに相当に慣れていないとできない。
即興で何でも描けるのは難しい。
それは言葉における修練の時間の差。

山中先生は漫画に目覚めて40年なので、今では無理なく描けるそうです。
無理なく描けるようになるには、10,000時間描き続ける必要があるそうです....。
でも言語のように描けるようになると、さらに表現力が豊かになり、伝える力が強くなりますよね。
ちょっと絵が描ける状態から、即興でなんでも描ける状態まで持っていくには、相当の時間を要しますが、その状態になった時この上ない心地よさを感じるような気がします。

絵は観察結果の最も端的なものを定着させる行為である

山中先生が発する大事な言葉は、とにかくメモをしていました。
描くことは物をいつも以上に観察する行為です。その行為の先に、今まで気づけなかった何か大切なものがあるように感じています。

画用紙と遊ぶように描いていこう

ということで、スケッチの練習が始まりました!

紙がふんだんにあるのはとても重要で、頑張って描こうとせずに、無駄に使っていこう。画用紙と遊ぶように描いていこう。

そのように山中先生が言われ、A3の画用紙をたくさん用意してくださったマルマンさん。本当にありがとうございます。

線と丸を描く

まっすぐ線を描く練習
線と丸、それは工業製品を描くときの基本だ。
体はその大きさによって弧が引ける。
まっすぐな線を描くのに、円弧の一部を使うのが簡単。
体ごと向かうように、線を描こう。
線には始まりと終わりがあって、その始点と終点をはっきりさせる。
勢いはつけない。
むしろ体ごとそこに向かう。

私たちの体は多段リンク構造なので自然なストロークはサイクロイドになる

練習1.手を描く

目はいつも調整している
カメラは一瞬を切り取る私たちの目はいろいろな角度から見ようとする両目で見て、それを重ねている
・カメラは明るい所か暗い所どちらかしか撮れない私たちは両方見えるような気がする・カメラは一部にしかピントが合わない

上手くかけない理由は、目はいつも調整しているから。
色々な方向から見てしまうことで、絵を描く邪魔をしている。
色々な向きから見たものを絵にしようとしてしまう = 合成している。
ポイントは頭を動かさずに描くこと。

脳はいつも解釈し、シンプルに記憶する
・輪郭線は、私たちの脳が作り出している。「物にはりんかくせんなんかない」平野敬子(当時4歳)
・形の理解が形を見ることを妨げるわかったと思うと、もう見ない
・実はいつもちがうものを見ている脳は様々な角度で見た図像を合成している

思っている以上に、線を描く、丸を描くのは難しく、特にまっすぐの線を描くのは慣れやコツが必要だな、と感じました。
山中先生は、描く前には手慣らしで丸を描かれているそうです。
線や丸を描く練習から初めて見るのも良いですね!

練習2.余白を描く

余白を描くつもりで描いてみましょう
・手と頭の位置を動かさない指先の位置を机に記憶する
・片目で見る座り方(腰と背もたれの関係、ひじの位置など)を意識し、頭の位置を安定させる・左手によって切り取られた机の形を描く
・爪によって切り取られた残りの皮膚を描く

手によって切り取れた余白を確認しながら輪郭の外を描いていく練習です。
練習1では認識しながら描いたのですが、練習2は初めて見るものを描いている状態でした。
手によって切り取られた余白って何?????
はじめは頭の中にクエスチョンマークが並び、何度も頭の中で「切り取られた余白」を繰り返してしまいました。
「初めての体験、初めて見たもの」
まさにこの状態で、こういう物の見方があるんだな、と素晴らしい気づきの瞬間でした。
その物自体を見ずにその周りを観察すること、是非試して見てください。
違った物の見方による初めての体験を得ることができると思います。

余白を描くことの意味・余白は、余白であって「なにか」ではない。
・純粋に形だけを見ることができる
・知らないものなので良く観察する

爪によって切り取られた皮膚の形を描く。
爪の周りにどんな肉が付いているのかじっくり観察する。
練習1に比べて立体感のある絵に仕上がりました。

練習3.構造を描く

手に構造を与えてみましょう。
・手にも骨はある・骨の中心線を描く
・あらゆるものは円筒でできている

最後に、構造を考え理解しながら手を描いていく練習です。
子供が描く絵は認識を表している(右の絵)

仕組みに引きずられているが、手は本当にそうなのか。
手首には骨の塊が存在して、手首からいきなり骨が生えている。さらに骨が存在し、そしてさらに骨が存在する。

骨の仕組みを理解していないと、難しい。骨ってどうだったけ?そう考えながら手を描いていきます。
この部分がエンジニアリングの理解、仕組みや設計を知った上でデザインする。につながっています。

絵を描くのは認識そのもの自分自身の理解の定着知っていると思っているものは知らない知っているものではないと観察することが大事知っているものを理解してエレメントを定着させる

新しいものを描くときは無垢の気持ちで見ることが大事。
そして構造を理解することが大切。
両方の理解が絵を支えることとなる。

言語としてのスケッチ

デザインエンジニアとして、何を理解し、何を見る必要があるのか。
スケッチを通してたくさん学んだ2時間でした。

プロダクトをデザインする上で、
人が理解するためのデザイン
がとても大切。

そして、絵なんて描けなくてもいいや、と思っている人は、
プランニングするためにスケッチが重要
であり、抽象的な思考も絵が助けてくれるので、
描けないよりも描けた方が良い。
それは冒頭にも記載したように
「人に通じる絵を描けること、それが大事な役割を果たしている。」
ということです。

物を見る視点、構造理解の強化のためにも、これからスケッチをしていこう!と心に決めた1日でした。
プロダクトを作る上で、ユーザーの行動を理解し、ユーザーがどのように理解するのか、そしてどのような体験を得ることができるのかを一番に考える必要があります。そして、物に対してもっと深く向き合う行為が「スケッチ」です。
観察し、理解し、描いていく、そして思考のプロセスを手に入れる

山中先生、そして主催のがようし友の会 がようしラボ並びにマルハンのみなさま、本当にありがとうございました。

■会場:マルマン株式会社 本社5階東京都中野区中央2-36-12
http://www.e-maruman.co.jp/

▼がようし友の会について
http://gayoushi-lab.net/friends


Shoco Satoです。読んでいただきありがとうございます!サポートは様々な活動に役立てさせていただきます。 Twitter https://twitter.com/satoshoco