障害者ドットコム~障害のある方の「働く」「暮らす」「育む」を応援する障害福祉メディア

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障害者による、障害者のためのWebメディア『障害者ドットコム』の運営するnoteです。 就労継続支援B型作業所『障害者ドットコム編集室』のライターが日々記事を執筆しております。 記事は障害者ドットコムのものと重複しております。ご了承ください。

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ネット右翼だけの専売特許ではない!意外と身近に潜む「歴史修正主義」

ミクロ規模の歴史修正主義「歴史修正主義」とは、ある歴史上の出来事について特定の界隈にとって都合のいい言説を流布し、あわよくば歴史そのものを改竄してしまおうとする動きです。代表的なのが上述した「関東大震災に伴う虐殺の否定」で、発生から100年を過ぎた今では、生き証人の絶滅を待っていたかのようにデマゴギーが噴出しています。 扱われている出来事からして、いわゆるネット右翼のイメージがありますが、別にネット右翼に限ったことでもありません。それに、歴史上の出来事という大きなターゲッ

    • 工賃未払いで夜逃げした埼玉のB型事業所とは一体何なのか

      雇用契約を結ばない就労継続支援B型事業所は、事業の報酬から少ない工賃を捻出して利用者に与えねばなりません。確かに工賃は少ないですが、それでも毎月支払うのが事業所に課せられた義務であることに変わりはないのです。実際に工賃未払いをしていた兵庫県福崎町の事業所では、半年の指定停止という処分が下りました。 さて、埼玉県内で3つのB型事業所を運営していた「ベル・エンプロイメント・サポート(以下、ベル)」が、利用者への工賃や職員への給料を払わないまま音信不通になったと話題になっています

      • ひきこもり、うつ病の30代男性が就労移行支援を受けてみたら?②~状況が変わればやることも変わる

        前回のコラム では就労移行支援を利用することになった経緯から、実際にプログラミングを学べる事業所を利用するまで書きました。 その中で「本当にこれで私は就労を目指したいのだろうか」という問いが生まれ、そして「NO」という結論を出しました。 今回はその続きをお話しします。   「NO」という結論を出した理由なぜ「NO」という結論を出したかというと、プログラミングの仕事を自分が「一生懸命やっている姿」が浮かばなかったことです。 仮に、この分野で就労に結び付いても、たいした「情熱

        • ヤマジュン漫画「絆」の認知症描写を考察する

          数あるヤマジュン漫画の一つで、1988年に発表された作品「絆」について気になる描写があったので、今回はそれについてのお話をしましょう。題材こそ山川純一先生のゲイポルノ漫画ではありますが、誰でも嫌悪感なく読めるように作品の説明は最小限に留めておきます。 作品のあらすじは「佐野という高齢男性が娘の夫と浮気をしていたが、実態は佐野が世間に迷惑をかけないよう娘夫婦が抑えていた」というもので、その理由は「認知症の影響で自分がゲイだと思い込んでいるから」と劇中で語られています。ちなみに

        ネット右翼だけの専売特許ではない!意外と身近に潜む「歴史修正主義」

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          能登半島地震の被災地、輪島へ応援派遣で行ってきました〜発達障害のASDとADHDを併発しています!<vol.11>

          全国社会福祉協議会が介護職員等に募った応援派遣で、能登半島の輪島に派遣されて行ってきました。仮設住宅の見回りや困り事などを聞いて対応する相談支援が仕事だと思っていましたが、いろんな体験をさせていただきました。私は、ASDとADHDがあり、阪神大震災で被災してパニック障害になったので、体調などが心配でしたが、なんとか無事に終わりました。いちばん被害の大きな場所が拠点だったので、ニュースなどで見た倒壊したビルの前を何度も通ったり、朝市の火災現場を見た時にはとても胸が痛みました。私

          能登半島地震の被災地、輪島へ応援派遣で行ってきました〜発達障害のASDとADHDを併発しています!<vol.11>

          就労継続支援B型を利用しての変化、わかったこと。

          障害者ドットコム編集室の利用者として1年と少しが経ちました。そんな中で生活や精神面にどのような変化があったか、就労継続支援B型ってどうなの?というところをまとめていきます。 一般就労からリタイアしてわたしは障害者ドットコム編集室の利用者になるまで、就労継続支援B型の経験がありませんでした。それまでは精神障害をオープンにしつつ、コンビニや工場で勤めていました。 それでもやはり、精神病院への通院日にお休みをいただくことや、時おり体調を崩して仕事ができなくなって迷惑をかけてしま

          ひきこもり、うつ病の30代男性が就労移行支援を受けてみたら?

          私は今現在「就労移行支援」という福祉サービスを利用しており、30代男性、気分障害(うつ病)と診断され、精神障害者福祉手帳3級の交付を受けています。 今回はその私が福祉サービスの力を借り、心身の状態に不安を感じることなく、今こうやってコラムを書いているまでの流れをひとつのケースとしてお話しできたらと思います。 就労移行支援を利用しようと思った理由理由は私の中では明確にあって、自分独りで一般就労に結び付ける自信が無かったからです。 就労移行支援を利用する前の私は「ひきこもり

          障害者女性の透明化された「生きづらさ」

          「障害者について論じられるときは、たいてい障害者男性に、女性について論じられるときは、たいてい健常者女性にスポットライトが当てられる」 これは、家族社会学および障害学の専門家である土屋葉氏が、編著「障害があり女性であること 生活史からみる生きづらさ」の序章として書いた文章の一部です。 黒人女性フェミニストのベル・フックスの言葉を一部改変した文章なのですが、発達障害者であり女性である私には、非常にしっくりくるものでした。 障害者について論じられるときは、性差別のせいで障害

          障害とゲーム

          先日、オンラインゲームを遊んでいるときにこんなことがありました。 共に戦うメンバーを募集するところで目に入ったのは「わたしは視覚障害のため画面が見えづらく失敗が多いですが協力お願いします」といった募集文。(文章は正確ではありませんが、このようなものでした) わたしはすぐさま合流し、一緒に戦うことにしました。ジャンルは違えど、自分と同じく障害を抱えながら戦っている人がいることが少し嬉しくもあり、絶対にクリアしてやるぞ!と気合十分です。 あっという間に7人のメンバーが合流し

          ベビーカーを押して気づいた、街の罠

          先日、高齢の母をともに愛犬を動物病院に連れていくときに、犬用のベビーカーのようなものを押して行ったのですが、その中で「バリアフリーってなんだろう?」と思ったことがありました。 普段は気づかなかった視点から見た点字ブロック点字ブロックは、視覚障害者の方にとっては道しるべであり、命を守る大切なものでもあります。最近では音声によるガイダンスがされる場所も増えてきているので、トイレの場所などもわかりやすくなりましたね。 この大事な点字ブロックですが、わたしの母にとっては危険な存在

          「HDMI」に代わるものを考えてあげよう

          ADHDの隠語として「HDMI」が使われており、本気で間違える人さえ現れたという話を以前しました。もしHDMI以外に選ばれるものがあるとしたら、それは何なのでしょうか。他の候補も挙げながら、ひとつひとつ説明していきましょう。 ADHD 「Attention-Deficit Hyperactivity Disorder」の略で、注意欠陥多動性障害とも呼ばれます。注意力が欠けたりあちこちに興味が分散したりして、特に学童期は落ち着きのなさを指摘されやすいです。ある当事者は「“やる

          芥川賞受賞作「ハンチバック」を読んだ話

          今回は、芥川賞にも選ばれた作品「ハンチバック」を読んだ書評のようなものです。本自体は数日前に真・三國無双の攻略本を眺めていたのですが、小説に限ると高3の時に吉川英治の三国志を読んでいたのが最後なので、そのブランクから着眼点にズレが生じているかもしれませんがご了承ください。それと、ネタバレには全く配慮していません。 例えばNHKの取材記事では、読書に関してのバリアフリーが全く進んでいないことが作品のメインとして扱われていました。1975年、図書館の視覚障害者向け録音サービスに

          産後うつとはまた違う、産褥期精神病とは何なのか

          産後すぐの精神疾患といえば「産後うつ」です。その名の通り産後3か月以内に発症するうつ病で、出産した10人に1人が罹患するといわれています。しかし、産後の精神疾患は産後うつだけとは限りません。 「産褥期精神病」と呼ばれる精神疾患があり、こちらはうつ状態だけでなく躁状態、幻覚や妄想などが症状として表れます。また、必要以上の恐怖感を感じたり疑い深くなったりと、別人のようになるケースもあります。産後うつとは全く別で、且つ緊急性の高く深刻な病気です。 実際に罹った経験のある人によれ

          映画の中の障害者(第13回)「フジヤマコットントン」

          「ポリコレ疲れ」はポリコレそのものへの疲れではない、都合よく扱う人間への疲れだ

          「ポリコレ疲れ」とは文字通り、ポリコレに疲れてしまうことです。これには2つの意味があります。ひとつは、ポリコレを都合よく扱う界隈や言説に対していい加減嫌気が差した側の意見。もうひとつは、情けない惰弱が弱音を吐いているだけだと嘲る側の意見です。後者は自身がポリコレを遵守している存在だと決して疑わないのも特徴ですね。 これが最初に言われだしたのは2016年、アメリカでトランプ政権が樹立されたことがきっかけとされています。差別表現を避けて政治的に正しい表現を奨励する風潮に閉塞感を

          「ポリコレ疲れ」はポリコレそのものへの疲れではない、都合よく扱う人間への疲れだ

          電話が苦手

          私は電話が苦手です。高校時代までは、友人と長電話を楽しんでいましたが、ここ何年かは友人以外にも、お店に予約の電話をするのも億劫になってしまいました。 コミュニケーションが苦手ではなぜ電話に苦手意識を持つようになったのでしょうか…… 改めて考えてみると、大人になって人とコミュニケーションを取ることに苦手意識を感じるようになったのが、大きな原因だと感じます。 電話口で「最近どう?」と聞かれても、どうもこうも人に話せるような濃い話はないし、堂々と話せるような「普通」の生活を送