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AI/LLMが切り拓く”個別最適”な”やさしい”世界

あけましておめでとうございます、HQの坂本です。

2024年1月1日元旦、本年への意気込み/未来構想として、世の中の言説とは少し違った角度で「AI/LLMがつくる新しい世界」について書いていきたいと思います。

AI/LLMが最も得意とする「人間らしい仕事」

言うまでもなく、2023年は、生成AI/LLMの年でした。
Chat-GPTの登場とともに、全世界で生成AI/LLMが一気に注目を浴び、無数のサービスや議論が生まれました。

多くの人が予想している通り、ありとあらゆる産業・サービスが、AI/LLMを前提としたものへと再構築されていくでしょう。
かつてインターネットやスマホが世界を再定義していったように、AI/LLMなき世界とは全く異なる風景が広がっていくと思います。

一方、これまでの技術革新と大きなちがいは、AI/LLMの得意とする仕事が「一見すると、非常に人間らしい分野」である点です。

マッキンゼーの試算によれば、「生成 AIによる生産性へのインパクトは、世界経済に 数百兆円のコスト改善価値をもたらす可能性がある」とのことですが、
特に注目すべきは、その圧倒的なインパクト量だけではなく、AI/LLMによる創出価値がどの分野から生まれているか、です。

「顧客対応」「マーケティング&セールス」 「ソフトウェアエンジニアリング」「研究開発 (R&D)」 の4つの領域でAI のユースケースにより創出される価値の約 75% が期待されています。

下の図のとおり、製造や財務、法務、調達、サプライチェーンなど、一見して機会が得意そうな分野ではなく、「むしろ人間が得意」と思われていた領域で大きな価値が生まれることが予想されています。

出所:McKinsey&Company「生成 AI がもたらす潜在的な経済効果 : 生産性の次なるフロンティア」


(※もちろん、人間の必要性はゼロにはなりません。AI/LLMによって、人間に求められる役割はより限定的に、ただしより高度なものになるでしょう)


LLM/AIは、これまでの機械・技術とは明らかに性質が異なり、正確性が武器ではありません。計算式を一発で正確に解くなら、必ずしもLLMは最適な技術ではありません。

LLMが最も活きるのは、
「データ量が少ない」
「推論が求められる」
「正解がわかりにくい」
「小さな間違いは許される」
ような分野です。

言い換えれば、「人間らしい臨機応変な個別対応が必要な領域」こそがAI/LLMの活躍の舞台なのです。


”個別最適”の最大課題:経済性が成り立たない

AI/LLMなきこれまでの世界においては、
”人間らしい個別対応”の一番の問題は、とにかく「コスト・工数がかかる」≒「経済性が成り立たない」という点でした。

私自身がそう強く実感するに至ったのは、前職(LITALICOという障害者支援の企業)での経験が大きいです。

生きづらさを抱えた障害のある方とのかかわりでは、ひとつの正解の枠に相手を押し込めるようなやり方では絶対に良い支援は提供できません。
一律的・機械的な対応が最も不適切なシーンといってもいいかもしれません。
困難を抱えたそのひとりを、何とかしてより良い方向へと導いていくには、まさに”人間らしい個別最適なサポート”が必要不可欠でした。

相手の特性、置かれている状況、求めていること、自分との信頼関係、相手の発する一言一言に耳を傾ける、・・・それら全てを総合的に加味した非常に高度かつ丁寧なコミュニケーションが求められます。

そして、この個別最適の追求には、当然ながら、非常に大きな工数・コストがかかります。

一人ひとりに高品質なサービスを提供するうえで、国のお金を使う福祉/社会保障の枠組みを活用することも多かったですし、そうでない場合、どうしても個別最適度合いへの投資が犠牲になってしまうと感じていました。
(社会福祉の存在意義を否定したいわけでも、効率至上主義を訴求したいわけでもありません。ただ、個別最適なサポートを届けるのには、コストがかかるという事実と向き合うことはとても重要だと思っています。)

よほどのお金持ちでない限り、人間らしい個別最適なサポートに対して、その工数に見合う対価を払うことができないのが現実です。
(ホテルやレストランなどのホスピタリティ業界を見れば、人間らしいサービスがどんどん一部の超高単価サービスに集約され、マス向けサービスは効率化/省人化の一途をたどっていることに気付きます。)

本当に個別最適な人間らしいサポートが必要な人ほど、そこに十分な対価を払えない。

この残酷なジレンマ/現実に対して、どう向き合えば良いか? という問いは私にとって非常に重要な問いであり続けました。


AI/LLMによって成立し始める”個別最適”サポート


最も丁寧で個別最適なサポートは、AI/LLMによって提供される世界になる

私は、AI/LLMは、”個別最適”な”やさしいサービスを次々と生むゲームチェンジャーになると考えています。

なぜなら、AI/LLMは、従来もっとも手間のかかっていた個別最適でサービスに必要なコストを劇的に下げるからです。

皆さんもChat-GPTを触って、このように感じたことがあるのではないでしょうか?

「こんな質問にさえ付き合ってくれるのか」
「こんな雑な言葉にも寄り添ってくれるのか」
「なんてやさしいんだろうか」

AI/LLMは、人力でやっていては、どう考えても元が取れないような丁寧な対応を何の文句も言わずに平然とこなしてくれます。

たとえば、アイデアベースにすぎませんが、以下のように、非常に人間らしい丁寧なサポートをしてくれるサービスが現実的につくれるようになるはずです。

  • とにかく寄り添ってくれる人材エージェント:転職意思が固まっていない人(≒すぐお金にはならないので、エージェントとしては基本的に優先順位が下がりがち)にも丁寧に寄り添い、もやもやと付き合い続けてくれる

  • 細かな仕様の選択の悩みにずっと付き合ってくれる注文住宅サポート:高い買い物だからこそ、ああでもないこうでもないと考えてしまう無数の悩みに丁寧に寄り添いながら、豊富な知識を教えてくれる

  • 個別事情にあわせて案内してくれるAI子育てサポート窓口:地域ごとに違ったり、個別事情が大きい子育て事情に関して、丁寧に知識を教えてくれたり、これまでの情報をしっかり引き継いだうえで都度発生した悩み事に答えてくれたりする

  • 生活スタイルからしっかり紐解いてくれる家具コンシェルジュ:どんな家具を買うべきか、何が自分の生活をより良くするのか、から相談しながら、具体的なお勧めの家具や生活スタイルを提案してくれる。1時間たっても、無理矢理セールスしてくることはない。

これらは、新しいニーズではなく、昔から要望はあったものでしょう。
ただし、経済性が成り立たなかった(個別対応コスト > 得られる利益)
ために、本格提供できなかったニーズです。

しかし、AI/LLMによって、この個別対応コストを劇的に下げることが期待できるため、
「サービス提供側が得られる利益 > 丁寧な個別対応コスト」という凄まじいゲームチェンジを起こせると思うのです。

過去、インターネットの普及によって、情報流通コストが劇的に下がったことで、月数百円のような低価格サービスが世の中に成り立つようになりました。スマホによって、単価数百円で高機能のアプリが流通するようになりました。

それと同じように、AI/LLMによって、個別最適対応コストが劇的に下がることで、丁寧でやさしいサービスが経済的に成立するようになるのではないかと思っています。

あらゆる産業において、個別最適化コストが劇的に下がり、
人間らしい寄り添いがあるサービスを誰もが受けられる”やさしい”世界へと進化していくのではないか、と考えています。

福利厚生-個別最適性が最も求められる領域

人生で抱える困難は多様かつ繊細。最も個別最適なサポートが求められる領域。


やさしいサービスへの進化において、私がAI/LLMによる変革を最も期待をしている領域が、「福利厚生領域」です。

(宣伝となりますが)私が代表を務めるHQ社は「福利厚生をコストから投資へ」をビジョンに掲げるスタートアップです。現在のプロダクトは↓のリモートHQというリモートワーク特化の攻めの福利厚生ですが、春に、AI/LLMをフル活用した総合福利厚生の新プロダクトをローンチする予定です。

福利厚生とは、WorkとLifeが重なる領域。子育て支援、介護支援、メンタルヘルス、健康経営、学習促進、リモートワーク支援など、社員一人ひとりの働きにくさの”不”と向き合う仕事です。

一見してやりがいのある領域ですが、以下の通り、とにかく非常に個別対応が面倒な分野とも捉えることができます。

  • 多様すぎるニーズへの対応コスト。社員一人ひとりに個別最適なサポートが必要だが、人力でやっていては、費用対効果が成り立たない

  • センシティブな人間らしい領域。プライベートな繊細な領域であり、非常に人間らしい対応が求められるが、人事総務の人手がひっ迫してしまう

  • 求められる知識の幅が広すぎる。人の人生は多様であり、求められる知識は幅広い。介護、子育て、不妊、更年期、健康、・・・それら全てに対応できるスーパーマンはどこにもいない。

このような一見して非常に面倒で手間がかかりそうな丁寧なサポートが必要なときこそ、AI/LLMの出番です。

  • 個別最適:一人ひとりちがう多様なニーズに対して、個別最適に向き合う

  • 安心:プライベートのセンシティブな課題に対して、情報をセキュアに取り扱いつつ、丁寧に寄り添う

  • 圧倒的知識量:驚くほど豊富な知識で、具体的なアドバイス、情報提供をおこなう

こんなサービスを通じて、やさしく、そして費用対効果が圧倒的に高い福利厚生サービスをつくれると思っています。

※HQのエンジニアチームは、GAFAMなどの大手IT出身者も多くいるのですが、データ/AIの力を人類のために使うことに対して深い情熱をもつエンジニアが集まっています。全員が、AI/LLMの持つ可能性を信じている熱いチームです。


蛇足ですが、これまでの福利厚生のメインプロダクトは、いわゆるパッケージソフト(割引クーポンサイト)でしたが、それは、社員への個別対応コストを避けるための手段として非常に有効でした。
ひとつサービスを用意しておけば、「私たちは幅ひろい福利厚生を用意している」というスタンスが取れました。

しかし、個別最適なサポートなしでは、福利厚生で意味のある成果は得られません。
実際、福利厚生の用途のほとんどは食、旅行、財形、エンタメが大半。本来導入時に目的とされていた子育てや介護、健康、学習などにはほとんど使われていません。
また、無数のサービスから社員側が探索的に探さなければいけないサービスのため、ほとんどの社員は福利厚生を利用さえしておらず、一部の社員のみがヘビーユースしています。

福利厚生産業のように、
「本当は人間らしい個別最適で手間のかかるサポートが求められているのに、画一的なサービスで満足するしかない状態」
に陥っている産業こそAI/LLMの力をフル活用できる。

様々な産業において、人間らしいやさしいサービスをつくれるはずだと思っています。


世界は「より便利に」そして「よりやさしく」


日本でも、ここ10年で、SaaSやDXがどんどん広がり、業務の効率化、自動化が進んできたと思います。特に、”業務的・機械的”な分野では凄まじいペースで世界は変わっています。
次々と素晴らしいサービスが出てきて、たとえば会計や労務、経理の世界は、驚くほど効率化されつつあります。

しかし、”非業務的・人間的”な分野では、まだ本格的な変革は始まっていません。
個別最適性が求められる領域では、DX/SaaS化する難易度は非常に高く、むしろ状況は悪化し続けているといってもいいかもしれません。

メンタルヘルスに関する悩みはどんどん増えている。
多様化の一途をたどるキャリアプラン・人生プランに対して、丁寧な個別最適なサポートは全くありません。

そんななか、AI/LLMによって、一気に変曲点を迎え、
テクノロジーの力で、サービスに”やさしさ”(≒個別最適で人間らしい寄り添い)を込められる時代がきました。


2024年はスターウォーズR2D2のような優しいアルゴリズムが世に広がる元年。※フリー画像です

しかし、ただ待っているだけのつもりは一切ありません。
本記事の未来構想は、いわゆる批評家としての予測ではなく、私たちHQが主体者として自ら創るものです。
(春には、いよいよ本丸となるAI/LLMフル活用の新プロダクトローンチが控えており、今は開発の佳境です。心から自信をもてるプロダクトができそうです。)


AI/LLMによって、”個別最適”なサービスがどんどん生まれ、一人ひとりに”やさしい”世界になっていく。

2024年は、自社の実例をもって世に証明していけるような1年にしてみせたいと思います。

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