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【全文】不振事業の症状~V字回復の経営('23決定版)


■ 出典:V字回復 2年で会社を変えられますか?(2023/4/26)

V字回復の経営(決定版)

7年連続の負け犬事業を救え! 2年で黒字化できなければ閉鎖
1兆円企業のトップが下した宣告に事業再生専門家と社内ミドルがタスクフォースを結成し、改革セオリーと熱き心で驚異の復活を成し遂げた、その全貌。シリーズ累計約100万部の名著が書き下ろしノンフィクションで刷新!

Amazon書籍紹介文

2006年の原著を2023年にリニューアルし、「不振事業の症状」という項目が新たに加筆修正。

舞台は、コマツ(小松製作所)
コマツは建設機械で日本No.1、世界でもキャタピラーに次いでNo.2と、グループ3.5兆円(23年3月期過去最高)を記録する日本を代表する企業の一つ。

コマツのある事業でみられた”不振事業の症状”は、大企業のみならず多くの企業で抱える社内の閉塞感、事業の停滞感が表現されているはず。

※以下、番号は書籍順。()は最新刊(23年)の記載ページ番号。


■ 不振事業の症状(全41症状)

  1. 【ハンズオンの危機打開】(P.21)
    ”事業責任者を任命して、その人に完全に任せっぱなしにして改革が進まないと、簡単 に二、三年が過ぎてしまう。「不振事業の再生」においては、トップによるハンズオフ は絶対禁忌である。不振が深刻なら、トップは初めから改革リーダーと同体になって ハンズオンの姿勢をとり、不振事業に必ず染みついている制約条件を排除してやり、 恥も外聞もなく、蛮勇を振るうことが必要である。”

  2. 【組織のガタガタ】(P.24)
    成功している高成長企業では組織変更が頻繁に行われ、社員の異動は日常茶飯事で、 いつも社内はガタガタしている。誰もそれが異常だとは思わない。あまり長い年数、異動のない人は、逆に能力的にかえっておかしいのだろうと見なされかねない。一方、 事業内容がいつまで経っても変わらない低成長企業では、人事異動は一大イベントだ。 誰が昔、どこの部署にいたか、皆が他人の異動歴まで実によく覚えている。

  3. 【議論を避ける組織】(P.25)
    激しい議論は、成長企業の社内ではよく見られるが、沈滞企業では大人げないと思われている。情熱を持って突き進む者がしばしば「青い」と疎まれる。

  4. 【人気のあるトップ】(P.26)
    トップが社内の人望を集め、対照的に、その下の役員やスタッフが悪者にされている構図は、それ自体が病気の現象である。トップが自らハンズオンのスタイルをとらない限り、組織の危機感を保つことはできない。しかしそうなれば、トップが温かな人気者であり続けることはできない。

  5. 【語り部】(P.27)
    成長の止まった会社では語り部が多くなる。変化が少ないから、去年のことを言っているのかと思うと、実は10年前のことだったりする。つまり1年前と10年前をまぜこぜに話しても、違和感がないのだ。

  6. 【全体と個人の関係が見えない】(P.28)
    事業全体が危機(たとえば大赤字)でも、社員個人には危機感がない。あまりにも多 くの日本企業に見られる深刻な組織現象である。私(著者)の事業再生の経験では、 これが日本の経営全体の元気のなさを生んでいる最大要因だ。経営者が言葉で社員の 鈍感や怠慢を責めても問題は解消できない。なぜなら、「全体現象(大赤字)」と「個 人の仕事」をつなぐ責任関係(因果関係)が、ほとんどの社員に見えていないからで ある。自分の責任と思えないから、他人や経営者のせいにするのである。あなたもそうではないのか。

  7. 【改革に不適な人材】(P.30)
    追い込まれた事業を打開する戦略は、これまでの流れを断ち切らなければならないのだから、必然的に高リスクの内容になる。リスク戦略の立案と実行にはそれなりの「経営経験」「智的能力」およびリーダーとしての「熱さ」が必要である。従来の人事常識に囚われ、その能力に欠ける人材をリーダーに立てれば、改革が骨抜きになるのは当然である。

  8. 【時間経過と共に複雑化】(P.56)
    不振事業の解決を先延ばしすると、一つの原因から始まった問題がさらに次の問題を起こし、やがて原因と結果の因果関係が絡まり合ってくる。 そうなると、問題の本質、つまり「解決の押しボタン」がどこにあるのか分からなくなる。ダラダラした経営リーダーが問題を先延ばしする行為は、その問題をさらに深刻化させることを許しているのである。

  9. 【戦略性 対 政治性】(P.59)
    組織の「政治性」は「戦略性」を殺す力を持っている。政治性は、個人の利得(利権利害の混入)、過去の栄光への執着、個人的好き嫌いなどによって生まれ、社内では「正しいか正しくないか」の議論よりも「妥協」優先の行動が支配的になる。

  10. 【出席者の多い大会議】(P.66)
    やたらと出席者の多い大会議。ダメ会社症候群の典型。出席者を減らすと「自分は聞いていない」「俺は関係ない」と拗ねる者がでてくる。リーダーシップの弱い組織の特徴だ。

  11. 【組織のたこつぼ化】(P.72)
    部長たちが機能別組織のたこつぼに潜り込んでいる。事業全体の責任を分かち合う意識は消えている。そして間接部門スタッフが社内政治の「掃き溜め」にされている。上位者でなければ解決できない戦略的課題が若手に押しつけられている。

  12. 【機能別組織の弊害】(P.73) 
    機能別組織のすべての部署がすべての商品群に関与し、よってたかって仕事を複雑にしている。その分、個々の商品への責任感が薄まっている。
    ※関連【肥大化した機能別組織[10の欠陥]】(P.161)

  13. 【機能別組織の競争力】(P.73)
    妥協的態度=決定の先延ばし=時間軸の延長=競争力の低下。外の勝ち負けよりも、内部をよろしくやることのほうが大事だと思っている。

  14. 【負け戦】(P.75)
    「負け戦」をしているという自覚がない。個人として「赤字の痛み」を感じていない。責任を皆で薄め合っている。

  15. 【全社視点の商品戦略】(P.78)
    商品別の全体戦略や、新商品販売計画が「開発→生産→営業→顧客」の一気通貫の判断で行われていない。

  16. 【商品別損益の曖昧さ】(P.79)
    商品別損益がボトムラインで語られていない。担当者レベルの「赤字に鈍感」の集合体が、組織全体の危機感不足を構成している。

  17. 【商品別損益の把握単位】(P.80)
    原価計算がたくさんの商品を丸めた形で行われている。赤字、黒字が相殺され、商品別の実態が見えない情報になっている。

  18. 【使えない原価情報】(P.80)
    赤字の原因を個々の「要因」「現場」に遡及できない。その状態なら、どの商品の何が問題なのか分からないから、社員の行動不足が起きるのは当たり前だ。誰の責任かも分からない。

  19. 【現場の実態】(P.81)
    組織末端では旧来の売上志向管理から抜けきれていない。管理システムが途中で切れているからである。不振企業に共通した症状は、トップも社員も合計や小計の数字ばかりを追いかけて、その中身の細分化された現場の実態に迫っていないことである。

  20. 【現場の実態】(P.83)
    開発者がマーケティングや市場での勝ち負けに鈍感になっている。何が「良い商品」なのかの定義が社内の部署によってずれていることに気づいていない。どの答えが正しいかは顧客が知っている。

  21. 【開発テーマの絞り】(P.85)
    ダメ会社ほど開発テーマが多すぎる。全部やり切れるはずもないのに上層部があれもこれもとテーマを増やすので、どれもはかばかしく進まない状態になる。

  22. 【顧客の購買ロジック】(P.87)
    開発陣が「顧客メリットの構造」「顧客の購買ロジック」を完全に把握していない。それでよく開発できるものだ。

  23. 【不満の垂れ流し】(P.89)
    社員が社外の取引先に会社内部の不満を垂れ流している。会社の看板を背負うことを投げ出している。

  24. 【チャネル戦略】(P.91)
    過去のチャネル戦略に、愚かなふらつき。戦略不在。取引先の人たちが不信感を抱いている。

  25. 【被害者意識】(P.93)
    組織末端に一種の被害者意識が広がっている。

  26. 【何を売ってもいい】(P.94)
    本社→支店→営業担当は実質的に「何を売ってもいい」の関係。本社の商品戦略は顧客接点まで届いていない。

  27. 【営業の戦略不足】(P.95)
    営業活動のエネルギー配分が管理されていない。営業担当の行きやすいところが、会社の戦略として攻めるべきところとは限らないのに。大きな市場を少人数の営業担当で効率よく攻略するには「絞り」「セグメンテーション」が必要だが、それが行われている様子がない。そのやり方も知らないのではないか。

  28. 【営業活動の放任】(P.96)
    営業が「やってもやらなくても同じ」に堕するのは、①「戦略」が個人レベルまで下りていない、②毎日の「活動管理」のシステムが甘い、の2つで起きる。

  29. 【代理店症候群】(P.98)
    会社の中に「代理店症候群」と呼ぶべき症状が蔓延している。ラインの推進力が弱いと、その分、スタッフが強くなる。

  30. 【スタッフの自己主張】(P.100)
    代理症候群が広まると組織の各レベルで、スタッフが「ミニ番頭さん」の役割を果たし始める。彼らは「自分の立場」が大切だから、組織の政治性に流されて妥協的行動が増える。事業の戦いが各レベルのミニ番頭さんの器の大きさで規制されるようになる。

  31. 【戦略と現場の整合性】(P.102)
    沈滞企業は経営フレームワークと総合分析に欠けている。戦略だけいじくっても事態はよくならないし、現場問題だけいじくってもダメ。両方をバラバラに扱うのではなく、一緒に俎上に載せないと打開できない。

  32. 【事業全体のストーリー】(P.103)
    事業全体を貫くストーリーの欠如。組織の各レベルで戦略が骨抜きにされていく図式。目先の対処療法的な組織変更や人事異動が大した効果を出さないまま、すでに社員は改革疲れを起こしている。

  33. 【経営リテラシーの不足】(P.104)
    会社全体で戦略に関する知識技量が低い。幹部の経営リテラシー(読み書き能力)が不足している。社内の政治力学に流されやすいのはこのためである。戦略の創造性が勝負を分ける時代だというのに。

  34. 【狭い世間】(P.105)
    新卒で来たときには広い世界だった会社というものが、いまや「狭い世間」になってしまい、同じ考え方が伝播し、皆が似たようなことしか言わない。社外で何が起きているかに鈍感。

  35. 【組織の政治性】(P.107)
    戦略志向が明確な会社なら、社員は正面玄関から出入りして「正しい、正しくない」の議論を昼間に行い、合意した対応を実行していく。沈滞会社では陰の政治性が強くなり、社員はいわば組織の裏口から出入りして、誰と誰が通じているのかはっきりせず、陰で根回しが進む。アフターファイブには、仲間で集まって、社内の誰かをやり玉に挙げてグチと陰口で一杯やる。

  36. 【間接話法のドミノ効果】(P.110)
    一橋大学名誉教授伊丹敬之氏は、トップが発信するタテのコミュニケーションを直接話法と呼び、組織内でヨコに広がるインフォーマルなコミュニケーションを、上の立場から見て間接話法と呼ぶ。とりわけ大企業では、社内の多くの組織現象が間接話法の連鎖的広がり(ドミノ効果)で起きるとしている(共著『「日本の経営」を創る』)。ヨコのドミノは、トップの直接話法を補強する内容を伝えるものなら前向きの役割を果たすことになるが、しばしば、ネガティブな反応を陰で広げる役割も演じる。

  37. 【停滞組織に共通の現象】(P.111)
    組織の政治性とは組織の裏で行われる個人行為である。一旦それが広がって組織が慣れてしまうと、オープンコミュニケーションの組織に戻すのは容易でなくなる。 かつて世界に名声を轟かせた「日本の経営」における組織の一体化という強みは、 バブル破綻のあと、経費は使うな、投資をするなという縮み志向の中で、すっかり 膠着組織になってしまった。外への攻めの行動を忘れ、組織エネルギーが内向すると、そういうことが起きる。

  38. 【日本人は働き者か】(P.124)
    今や日本人が勤勉だというのはウソである。ILO(国際労働機関)の労働統計に表れている。働き者の米国人はたくさんいる。とりわけ役員やエリート層は日本人のほうが働かない。

  39. 【改革を部下の努力の話にすり替える】(P.124)
    経営レベルで抜本的に事業構造を変えることに取り組まない限り直しようがないものを、個人や狭い職場の改善に話をすり替える人が多い。

  40. 【感動がない】(P.125)
    組織に感動がない。表情がない。真実を語ることがタブーになっている。ただシラーッとやっている。

  41. 【攻めの戦略はどこに】(P.125)
    社員が共有して心を束ねる「攻めの戦略」が提示されていない。それを実行する攻めの組織文化が見失われている。


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