夜明けのラーメンズ
前々回書いたnoteは長すぎた。
『中高時代は調子良かったのに大学では2ヶ月間友達が出来なくて、駅で泣いちゃった』ってだけの話なのに。
自分で読み返しても長すぎて引いているので、アレをちゃんと読んだ人が居るなら、とっても嬉しい。実家に呼んで、手料理でも振る舞って差し上げたいくらいだ。
さて、今回は『高井戸の夜』の後の話を書いてみたいと思う。
(大学1年生・キャンパスでの写真)
7年前の7月、私は友達のアヤカちゃんとスクールバスを待っていた。
そして、その時にこんな事を言われた。
「確かお笑い好きなんだよね?私ね、昔ラーメンズにハマってたんだ!」
ラーメンズ。
その名前はもちろん知っていた。なぜなら高校生の頃、DVDを借りたものの、全く理解が出来ず、見る事を放棄していたからだ。
だから正直に「1本コントみたんだけど、あんまり理解できなかったんだよね。」と返した。
するとアヤカちゃんは「そっかー。まぁ、その感じも分かるけどね。」と言って笑った。
このやり取りが妙に引っかかった。
そして、夏休み中にラーメンズのコントを全部見ようと思い立ったのである。
私はアヤカちゃんのこういったセンスを信頼していたのだ。
(あの時、「窪塚洋介っていいよね?」って発言にも同意できなかったけど、その後ちゃんとハマったよ!アヤカちゃん!)
そして私は、TSUTAYAで片っ端からDVDを借りる事にした。
どのパッケージも、むせ返るようなスタイリッシュさで、不安が募っていく。
『お笑いDVDなのに、なんで本人たちの写真ほとんど載ってないんだ…?てか、コレを好きな人達って“こういう世界観を理解できる自分クールだぜ!”とか思ってんじゃないの?そりゃ寒いぜ!兄ちゃんよォ!!』そんな事を考えながらニヤッとほくそ笑んだ。
イメージは杉本彩である。
DVDをレジへ突き出し、店員のおじさんに対しても、杉本風にニヤリと微笑んでみせた。
Tカードの有効期限が切れていたので、家に帰らされた。
一応、2回目も同じように、カッコいい笑みを浮かべてみせたが、おじさんは淡々とレジを打つだけだった。
家に帰ってすぐにDVDをつけたが、再生中に用事を思い出して席を離れ、戻ってきた時には2本のコントが終わっていた。
だから初めて見たコントは『不透明な会話』というコントであった、
極めて難解だった。
セットも無い!長尺なのに一度もイスから立ち上がらない!しかもなんか丸メガネかけてるし!
これはコントじゃなくて演劇でしょ…と思った。
だが、その次のコントを見たら、とっても面白い“コント”だった。
『不透明な会話』はフリで、その次の『条例』というコントに繋がっていたのである。
私は驚いて、ワオッと声をあげた。
純日本人の私から「ワオ」を引き出すなんて…!ラーメンズは、ただ者じゃない。
なぜそんなに驚いたかと言うと、『不透明な会話』単体でも、話が出来上がっていたので、それが次のコントに関連するなんて1ミリも気づかなかったからである。
その上、『条例』は私も知っている様な面白おかしいコントだったのだ。
それから私は夢中でラーメンズのコントを見た。
DVDが出てるものは全部見た。
気持ちよく伏線を回収するコント、ほのぼのするコント、不気味なコント…多種多様なのに、どれも一貫した世界観があってどんどん夢中になった。
私は、見た事のないものが好きだった。
文学でも音楽でも、実験的なものを好んだ。
ラーメンズは、見たことがなかった。
「私はこういうコントをつくれるのかな?」
私が大学へ進学したのは、両親に「芸人目指すなら、せめて大学を出てくれ。」と言われたからである。
通う大学の決め方も“勉強しないで入れて、NSCに徒歩で通えるから”という理由だった。
ただ、NSCに近いキャンパスは大学2年生からで、1年時は埼玉の山奥のキャンパスに通わなければならなかった。
だから、ただの大学生としての1年間があったのである。
大学1年の7月時点では、芸人よりOLになりたいなぁと考えていた。
芸人に憧れてはいたが、あまりにも不安定な道だし、両親を不安な気持ちにさせる事を分かっていたからだ。
だから、出来ることなら普通に就職したいと思った。
私は大学に入学してから、どうやって楽しく過ごせるかという事に命を懸けていた。
大学が充実すれば、芸人になりたい気持ちが失せると思ったのである。
外部のサークルに入ってみたり、合コン行ってみたり、バイトしてみたり、自分でサークルを作ってみたり、思いつく限りの事をしたと思う。
でも、無理だった。
やっぱり芸人が良かった。
夏休みが明けて、私はアヤカちゃんに真っ先に話しかけた。
アヤカちゃんは夏休み中に帰省していたので、会えなかったのである。
だがいち早くこの感動を直接伝えたい!
「分かった!私、ラーメンズが分かった!フヒッ…アヤカちゃん!!アッハハ!ヒッヒヒ!ずっと見ちゃった!ラーメンズ!」
鼻息を荒げて、思いつくままに感想を述べた。
興奮のあまり笑いがこみ上げて、止まらなかった。
そしてアヤカちゃんが口を開いた。
「え、何?どうしたの?あぁ…ラーメンズ?私、昔好きだったよ…?」と困った顔をしていた。
あの会話自体覚えていなかったのである。
そりゃそうだ。
別にアヤカちゃんはラーメンズを勧めていた訳じゃないし、特に盛り上がった会話でもなかった。
この事がきっかけかは分からないが『夢に祥子ちゃんが出てきて、講義中にカバンから鳩出してゲラゲラ笑っていた』だとか『祥子ちゃんがいきなり教室を飛び出してゲラゲラ笑ってる夢を見た』などと言われるようになった。
そういう様な事を経て、私は大学2年生からNSCに入った。
いや、入ってしまった…のかもしれない。
いかがだっただろうか?
とりあえず前回より短くまとまったので個人的には満足している。
次は、いつの事を書こうかな?
書いて欲しい事があればなんでも書きますー!
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