虫垂炎と私〜第1話〜
これは虫垂炎を“便秘”と誤診された女が、入院するまでの物語である。
(もしかしたら汚ない描写もあるかも。)
ある日の夜、テイクアウトしたインドカレーを食べながら“ハリーポッターとアズカバンの囚人”を見ていたら、お腹がモヤモヤするのを感じた。
映画を見終わった後にも、妙に不快感があったのだが、大して気にも留めなかった。
そして『最近ダイエットをしてるから、胃腸が変なのかなぁ』などと考えながら、マヌケづらをぶら下げて、寝室へ向かった。
事件が起きたのは午前0時。
下腹部がとにかく痛い。
そして、地の底からマグマが込み上げるように、吐き気が私を襲った。
ここから先の描写は、私の筆力では、どうあがいても汚くなってしまうので“いらすとや”さんにお任せしよう。
私は、嘔吐しても、排便をしても、尚ズキズキと痛む腹をさすりながらベッドに腰掛けた。
『便秘のせい?いや…でも最近の便通はそこまで悪くはない。んー。寝れば治るか!』
こうして私は眠り、朝を迎えたのだが、腹痛はまだ治っていなかった。
それどころか、さらに痛みが増していた。
すぐにネットで自らの症状を調べると、1番最初に出てきた病名、それは…
虫垂炎だった。
『え?虫垂炎って?へー中居くんも虫垂炎なったんだぁ…。盲腸って書くより虫垂炎の方がカッコいいなぁ。』
こんな感じで、悠長にニュースサイトを見ている間に、腹痛はどんどん増していった。
この日はYouTubeの動画を撮る予定があったので、その場に相方の悠ちゃん(やや鼻が大きい)がいた。
悠ちゃんはそんな私の挙動を見て、目を丸くしていた。
まぁ、相方がダンゴムシのような格好で、うめいていたら、そりゃあビックリするとは思う。
私の頭には、この時点で救急車の文字が浮かんでいた。
でも虫垂炎かは定かじゃないので“#7119”というサービスを利用する事にした。
このサービスは、自らの病状を相談員にヒヤリングしていただき、救急車が必要か否か判断してもらえる…という代物だ
私は震える手で“#7119”を押した。
そして相談員に、こう伝えたのである。
『あのぉ〜。ちょっと相談なんですけど。歩くとズキズキお腹が痛むんですよぉ。あ、でも絶対に歩けないってワケでもないんですよ!頑張れば!頑張れば歩けます!ははっ。』
これを聞いて、誰が緊急性があると思うだろうか。
(アニメ版の“ちびまる子ちゃん”の、中野さん風の喋り方をしていたと思う。)
私がこのように喋ってしまったのは、大した病気じゃなかったら申し訳ない…というだけの理由である。
あと、以前『くだらない理由で救急車を呼ぶのはやめよう!』というCMを見たことも関係しているかもしれない。
病状を謙遜し始めたらおしまいだよなぁ、と今になってみれば思うけど、この時の私は、そこまで考えが至らなかった。
相談員の答えはもちろん、『緊急性はないので、近くの内科に行ってください。』とのことだった。
そして『今から行ける内科の電話番号をお伝えします。』と続けた。
悠ちゃんは、次々と読み上げられていく電話番号を素早くメモしていき、電話までしてくれたのだが、その日は土曜日だったので、どの病院も空きがなかった。
幸い、近所の内科が土曜日も診療していたので、そこへ向かった。
ここで第2の事件が起きた。
虫垂炎は炎症が酷くなるまて診断が難しいと言われているし、Googleマップで病院の悪口書く人とは関わりたくないと思ってるけど…
思ってるけど!!!
この病院に行った事で、3日間の激痛地獄を味わうのよ!
私は以前もこの病院に行ったことがあった。
そして、別に嫌な印象も抱いていなかった。
陽気なクリニックの名前、カラッとしたキャラの看護師さん、古舘伊知郎さん似の愉快な男性医師。
まぁ、前からちょっと『ん?』って思う部分もあったのだが、土曜日に診察していただけるだけで、ありがたいと思った。
腹痛がある旨を伝え、血液検査とレントゲンを撮ったあと、医師からこう告げられた。
『これは…便秘だねぇ!だってほら、レントゲンにちょっとガスが写ってるもん!』
私は唖然とした。
『いや、でも右下を押すと痛いんです。(虫垂炎の特徴)』
そんな私の言葉を制して、医師は言う。
『そんなはずないんだけどなぁ。』
“古舘”は、なぜか半笑いだった。
その半笑いからは『ちょっと!勘弁してよ!最近の娘っ子は、なんでも大事(おおごと)にしたがるねぇ!』というような意味合いを感じた。
私は負けじと『いや、でも吐いちゃってるんですよ。これも便秘の症状ですか?』と聞いた。
すると…
『そういう事もあるよねぇ。腸が詰まってたら、食べたものが行き場を失っちゃうじゃない?』
そこで私は思った。
『あー!便秘かぁ!』
と。
無知な私と、何年も医師を務めている男。
どちらの考えを信じるべきであろうか?
そのあと“古舘”や看護師に、1袋7,000円の乳酸菌サプリの購入を勧められたが、丁重にお断りをして、帰路についた。
処方してもらったばかり便秘薬を握りしめ、私の顔は希望に満ちていた。
これでもう腹痛から解放される、と思ったから。
虫垂炎だと判明するまで、あと2日!
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