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【試作日記】コーカサス地方

荻野恭子さんの「ロシア、大地が育む家庭料理」から、コーカサス地方の3品を。

メインは、プロフ。地域によってはプラウとかピラフとか呼ばれる、炊き込みご飯みたいな料理だ。たくさんのバリエーションがあるようだが、今回作ったのは、羊とドライフルーツのプロフ「トゥルシュ・ゴヴルマ・プロフ」、アゼルバイジャンのものだそうで、大量のドライフルーツや甘栗を使う。羊の温かみのある旨味や、特に刺激的なスパイスは入らないところを考えると、エキゾチックながらも丸くまとまりのある、暖かな仕上がりになりそうだと想像が膨らむ。
実は、甘栗を買い忘れてしまったので、食感が近そうなカシューナッツで代用したのだが、それでも、全部で250㌘のドライフルーツというのは、すごい量だ。かなり甘いのかな。レーズン、アプリコットを使う。

具材として使う羊肉を予め茹でることで、ブイヨン用も兼ねるのが特徴的だと感じたが、これは、もしかしたら荻野さんの工夫かもしれない。羊のスープストックを用意するとなると、日本人にはハードルが上がりすぎる。
ちなみに、今回のプロフは、具材(ソース)とお米を別に仕上げる方式。とったブイヨンも、2つにわけてそれぞれに使う。調べてみると、全て一緒に炊き込む方法もあって、そちらのほうがポピュラーな様子。後者だと、わざわざブイヨンを取る必要がなくなるし、日常料理としては合理的なのだが、今回はレシピどおりにいく。
手順は総じてオーソドックスで、難しくはない。が、何しろ「すごく甘そう」で、一体どうまとまるのか、イメージが見えない。塩はもちろん入るものの、アクセントになりそうなスパイスもないので、味の輪郭が想像しにくい。が、玉ねぎを炒める段階で、おそらくここがポイントだとあたりをつける。レシピに細かい指示はないのだが、ここで炒め方が足りないと、玉ねぎが甘いままで、ますますしまりがなくなってしまう。しっかり色をつけたほうがいいぞ、と判断した。玉ねぎくん、君が頼りだ。キリッと縁が焦げ気味までいってくれ。
ご飯にかけることを考え、塩もしっかりめに効かせて完成させる。

スープは「スパス」、ヨーグルトスープだ。
これも、材料を見ただけでは着地点が見えず、興味がわく。何しろ、出汁的な要素が頼りない。ヨーグルト、卵、小麦粉、サワークリーム、玉ねぎ、押し麦。酸味が鍵なのは想像がつくが、食事用スープというところまでいけるのか。
さらに、玉ねぎの扱い方がユニークで、まるごと煮込んで、最後に取り出してみじん切りにするという順番。最初にみじん切りにするのと、どう違うのだろう?

他に、バクラジャーンという、茄子のくるみペースト添えと、胡瓜とトマトのミントサラダを作って献立を整える。

果たして、プロフは、やはりしっかり炒めた玉ねぎが正解だったようで、ドライフルーツの甘みや香りを、硬派に引き締める役割を果たしてくれた。
煮込まれたドライフルーツはふんわり膨らんで、甘みよりも独特のふっくらした香りが立つというのは発見だ。羊肉ともすごく合う。好みは分かれると思うが、結構みんな、わいわい夢中で食べちゃう系かもしれない。
ちなみに、思いつきで作った胡瓜とトマトのサラダが正解で、途中で一緒に混ぜながら食べると、また爽やかさが加わって、箸ならぬスプーンが進んだ。胡瓜とトマトがあったので思いついただけだったが、後で調べたら、プロフとセットでよく食べられる組み合わせのようだった。偶然だったけど嬉しい。

ヨーグルトスープは、やはり途中までは、やたらにまろやかで、一体どこに向かうのか、という感じだったのだが、慎重に塩を調整することで、とても優しいものに仕上がった。押し麦がおかゆぽくなって、朝ごはんにもよさそうだ。
玉ねぎは、案の定、煮込まれたのを取り出して刻むのが面倒だったが、先に刻むのと違って、火が入りすぎないので「溶けない」という利点があるのかもしれないと感じた。全体は柔らかく煮込まれながらも、エッジはしっかり立つ。食感の助けとなるのだ。モチモチの押し麦と、ややエッジのある玉ねぎ。この組み合わせが微妙な食感の変化をつけている。
これはまた作ろうと思う。やっぱり朝ごはんだ。

※※メモとして、バクラジャーン(茄子のくるみーペースト添え)には、個人的には玉ねぎは入れなくてもいいかもしれないということ。完全に好みの問題だが、玉ねぎが辛くて、全体のまとまりを邪魔する感じがしたので、注意したほうがいい。

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