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読書感想文:一千一秒物語

初めて稲垣足穂を読んだときの記憶は、それ自体が宝物のような懐かしさとピンボケした輝かしさと共にしまわれています。

と書けば、サマになるのですが、実際には社会人1年目に一人旅した際のお供に親の本棚から持ち出して、夜行バスを放りだされた早朝の倉敷駅前で読んだけだし、なんならレトロ喫茶でもなくスタバで。

その後も数年おきに何度も読み返していましたが、足穂の出身地である神戸に足を運んだタイミングで改めて読んでみたらなんとも血の気が多いこと。

初めて読んだとき、あれだけ心を掴まれたのに、なぜ今読むと戸惑うのだろう・・としばらく悩んだのですが、多分知人に足穂をおすすめするためにレコメン文を考えながら読んだから。

月と取っ組み合いをしたり、ほうき星を屋根から撃ち落としたり、矢継ぎ早に繰り出される荒唐無稽な光景は、小説というよりも稲垣足穂という短気な小説家から繰り出される鉄砲玉のようです。

まともに読んでも理解できないし、【理解したい】という読者の気持ちを置き去りにしている節も。

ひどく乱暴でいて、小説の枠という壁に当たったとき眩く飛び散る光に目が奪われる。読むというより、弾け散る小説の破片の音と光を楽しむという方がしっくりきます。

それこそ、鉄砲で頭を撃ち抜かれたような衝撃はクセになること間違いなしで、考えるより刺激がほしいとき(主にお酒飲んでほろ酔いモードのとき)に手が伸びる一冊です。

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