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カルタ・マリナ、それは『世界をまどわせた地図』

行きたい場所があれば、Google Mapで検索する。まだ行ったことのない国の空港からホテルまでの道を、ストリートビューで確認する。

そんなことが当たり前にできてしまう2020年。しかし、今より何世紀も昔、地図にはさまざまな「実在しない島」や「生き物(あるいは怪物)」が描かれていたことをご存知だろうか。

ある冒険者たちは、あるはずのない島を探して、船に乗った。いるはずのない怪物との遭遇を避けながら。

オーストラリアに降り立ったある探検隊は、大陸の中央にあるという架空の「内海」を目指してひた歩いた。

それもこれもすべて、"誤った情報の記された地図"のせいだった。

かつて世界は、人間の創造が生んだ、確かではない「地図」にまどわされていた――


『世界をまどわせた地図』(日経ナショナルジオグラフィック社)

いやー、最高でした、この本。

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世界をまどわせた地図 伝説と誤解が生んだ冒険の物語 (日経ナショナルジオグラフィック社)

太平洋に長方形の島!? 朝鮮半島は島だった!? 海に棲む怪物!? 大ペテン師が売った夢の国!?「地図に描かれた幻の世界」

という帯にある通りに、さまざまな古地図に描かれていた、幻の島や海などの情報を集めて、1冊の本に仕上げたのが本作。

最高でした。

「Google Mapがない時代なんて考えられない」なんて言っちゃってる昨今ですが、まだまだ衛星もなければ測量技術も今ほど正確でない頃、世界には、さまざまな地図が溢れていたのです。

その地図の中には、作者がさまざまな場所で聞いた「噂」や「体験談」を元にした、さまざまなイラストが足されていました。

特に面白かったのが、「カルタ・マリナ」という海図。そこには、北欧諸国の詳細な地形と地名に加え、存在しないハズの海獣たちが描かれました。

カルタ・マリナ (出典 : ウィキペディア・コモンズ)

「カルタ・マリナ」とは? 

カルタ・マリナとは、スウェーデンの宗教家・歴史学者・地理学者のオラウス・マグヌス(1490年〜1558年)が、1539年に発行した北欧の海図。

発行から約500年が経った今、この地図は、確認されている限りではたった2枚しか残っていません。1枚は、1886年にドイツミュンヘンの王宮国立図書館で発見されたもの。もう1枚は、1961年にスイスで発見されたもの。

この地図は、北欧諸国の詳細な地形と地名が書かれた最初期の地図でありました。しかし、何よりも特徴的なのが、地図に描かれた奇怪な生物たちです。

カルタ・マリナに描かれた奇妙な生き物たち

カルタ・マリナに描かれた奇怪な生物たちは、どれも、地図作成者のオラウスが船乗りから聞いた話や、寓話、民間伝承などから引っ張ってきた、架空の生物たちでした。

例えば、水泳中の人間が海の怪物に襲われないように守ってくれる怪物「ロッカス」。ロッカスは、泳いでいる人間を海岸まで運んでくれるものの、イルカの肉を食べた疑いのある人間に対しては厳しく、その人間を食べてしまうのだとか。

ほかにも、長さ9m~12mで海の中をひものように進む「ウミヘビ」や、アヒルを産むという不思議な木、ブタの顔を持った怪物「ウミブタ」、クジラの一種で、体長は約90mの「プリスター」などなど……。

カルタ・マリナ (出典 : ウィキペディア・コモンズ)

カルタ・マリナの奇怪な生物たちは、その地図を見た当時の船乗りたちには、真実として受け止められていました。

実際、地図に描かれる世界を信じた16世紀の船乗りたちは、これらの生物と相まみえないよう、海を渡る際には、わざわざ遠回りの航路を選定することもあったのだそうです。

地図は今もなお、世界をまどわせている?

さて、今回紹介した本(『世界をまどわせた地図』)には「カルタ・マリナ」のような、世界各地の古地図が載っております。そこには、本来は存在しない島や、勘違いで描かれた内海、奇妙な生物など、さまざまな誤った内容が描かれています。

噂に推測、勘違い、自然消滅、制作者・編集者のエゴ――。どのような理由であれ、かつて「地図にはあるが存在しない島」が存在し、それに翻弄された人々がいました。世界は、人間が作り出した地図にまどわされていたのです。

そうして、それは今もなお。

世界中の印刷地図の中には、実在しない島が多く存在している可能性があります。地図に描かれた島は、数世紀前に誰かが言った、たった一言によって生まれたものに過ぎないかもしれません。

最後に、この本の冒頭で投げかけられた疑問でこの記事を締めくくります。

“もっともらしく壁に掛けられた、ありふれた印刷地図の中に、いったい、どれほどの幻が潜んでいるのだろうか。どんな架空の島、幻の山、想像上の国が事実としての仮面をかぶり、発見されないまま時が過ぎ去るのを待っているのだろう? ”

『世界をまどわせた地図』

いやー、古地図、ロマンの塊ですね。

【おしまい】

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