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博士号の取得は理学療法士のキャリア収入にとって必要なのか必要でないのか

こんばんは。
今日は一つお金の話題。

お金の話題は皆さん敏感ですよね。
ただ、これはアメリカの現状なので、本邦とは少し異なる面もあるかもしれません。いや、金額的にはだいぶ異なります。


抄読論文

Garbin AJ, Stevens-Lapsley JE, et al.
Long-Term Career Earnings in Academia Might Offset the Opportunity Cost of Full-Time PhD and Postdoctoral Education for Physical Therapists Who Hold a Doctor of Physical Therapy Degree.
Phys Ther. 2023 Apr 4;103(4):pzad015.
PMID: 37128811; PubMed. DOI: 10.1093/ptj/pzad015.
学術界における長期的なキャリア収入は、理学療法学博士号を保持する理学療法士のフルタイムの博士号取得およびポスドク教育の機会費用を相殺するかもしれない
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【理学療法士の学位の取得による収入の階級】

先に述べておきますが、これはアメリカで行われている研究であり、学位や状況による収入の状況などはアメリカの現状を踏まえたものであることに注意してください。
本邦ではこんな給与水準にはないでしょう。
アメリカは地域によってはハンバーガー1つが4000円くらいするということなので、日本ではいいハンバーガーでも1000円弱くらいでしょうから、それだけ収入も違ってくるということは理解しておきましょう。

日本より学位システムや理学療法士の地位が高いと思われるアメリカでも博士号の取得に関しては思うように進んでいない点があるようです。

アメリカでは学位や専攻したプログラムによって、理学療法士の中でも差がつけられています。
その中でも理学療法士の博士であるDPTは重要で、大学の中でもDPTを取得している教員が50%以上になるように定められているものの、実際それを満たしていない大学も多くなっています。

DPTを取得するための障壁となる点は経済的な問題が大きくあります。DPTを取得して卒業したときには、142,000ドル(2,000万円以上)の教育費の債務を負ってスタートするとされています。
これは、博士課程と博士研究員の6年間の期間の収入がかなり減少するということが大きな影響です。

しかし、それにあまりある、後々の収入の増加があれば、十分メリットがあるかもしれません。

そこで、本研究では、その状況を調査することを目的としています。

【調査内容】

調査は研究チームのメンバーによって行われ、認定されたDPTプログラムの該当者242名に対して行われました。
現在の教員等の給与に関しては、1,738名からのデータをもとに集計されました。


キャリアグループは異なる4つに分類されました。
A.臨床理学療法士
B.学術的であるが、博士号を取得していない理学療法士
C.学術的かつ博士号も取得しているが、学術的な要素が50%未満の理学療法士
D.学術的で博士号も取得しており、学術的要素が50%以上の理学療法士

この4つに分けたときの給与の水準を見てみると、CやDでは最初のポスドク時は
どうしても低いものの、その後の上昇は大きく、最終的には大きな差が生じていました。


それを数字的な表にするとAとDを比べたときには、生涯収入で70万ドル(1億円くらい)の差が生じることになりました。


では、損益分岐点としてはどうなのかというのを見たときに、AとDを比べたときには21年経過したときにほぼ全てが逆転するという結果になりました。物価等の経済情勢を見て調整した数値においても、23年のところで逆転するという結果になりました。


経済状況を厳しめに見て、5%の変動が生じたと仮定した場合の差をみると、大きく差は減少するものの、それでもAとDを比べると約8万ドルの差が生じることになりました。

【これをどうとらえるか】

DPTは質を上げるためのプログラムです。
そのため、DPTを持っているスタッフを増やすというのは非常に重大な課題となります。

しかし、経済的問題がこの障壁となっています。
本研究からは、これらに対して費用と収入のビジョンを見たところ、博士号を取得して、学術面の活動に従事する、つまり教授職などに移っていくことが収入を大きく増加させる要因となっていることが示されました。

アメリカでもDPTに進むにあたって、さまざまな補助や奨学金を受けているケースが多いようです。
一方、これらの返却に関しては、条件を設けているものが多く、この条件を満たすことが大変だという問題もあります。

つまり、これらの支援を充実させることが、DPTの取得に向けて安心して取り組むための要因になるのではないでしょうか。

ただ、DPTを取得しても、学術貢献の職、つまり教員、そして教授職にならないとこれらの収入にはならないということは注意が必要です。

長期的に見たときには博士を取得した方が大きく収入を得られます。
これが分かったことはとても大きな要因です。
博士号を取得するためには、多くの資金と時間を要します。
それを将来の投資としてとらえることができるかということが重要です。

何より、この金額だけでなく、DPTを取得することの本当の意義をしっかりとらえることが重要です。
根本的には質を向上することが必要だし、DPTを取得する過程ということが必要ということです。
その本来の目的をしっかり考えつつ、どのようにするかということを考える必要があります。

とは言っても、日本ではまだここまでの状況にはないかもしれませんし、博士号を取得した方が可能性は広がるものの、教授職の枠は狭いし、時間もかなり要することを考えると同様にはいかないかもしれません。

ただ、この研究は将来の自分のビジョンを作る上では、考えうる一つの材料を示してくれるものではあるかもしれません。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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