五十肩の動きの制限や痛みに対して後ろ側のストレッチをすることが効果的である
こんばんは。
今日は五十肩をはじめ、肩の機能障害に対して、後方組織のストレッチを行なって検証した論文を紹介します。
ぜひ、参考にしていただければ幸いです。
抄読論文
【後方ストレッチの重要性】
肩峰下インピンメント症候群(Subacromial impingement syndrome:SIS)は、肩の痛みや機能不全の最も一般的な原因になります。
近年、肩の痛みやSISの症状に対して、肩後方の硬さ(posterior shoulder tightness:PST)の影響に焦点が当たっています。
PSTは関節窩上で上腕骨頭の前上方移動を引き起こし、SISを引き起こす可能性があり、上肢挙上の際に肩峰下のスペースが減少します。PSTは肩内旋可動域の減少と関連しており、それらを解消するために、肩の後方ストレッチ(Posterior shoulder stretching exercises:PSSE)が提案されています。
これまではPSSEは伝統的な治療に位置付けされていました。しかし、Wilkらは肩甲骨と肩甲上腕関節の両方の回転制御が不十分であり、肩峰下インピンメントの増加につながる可能性があるため、修正する必要があると述べています。
よって、本研究の目的は、SIS患者の肩の可動性、痛み、及び機能不全に対する2つのPSSEにより、効果を検証するこです。
【方法】
SISの合計67名を、修正クロスボディストレッチ(Modified Cross-body Stretch:MCS)群、修正スリーパーストレッチ(Modified Sleeper Stretch:MSS)群、通常の治療プログラムを行う対照群に無作為に割り付けました。
MCS群は治療プログラムに加えMCS運動を受け、MSS群は治療プログラムに加えMSS運動を受けました。
アウトカムは痛みをVASで測定しました。肩の機能はコンスタント・マーリースコア(CMS)で評価しました。障害レベルはQuickDASHで評価されました。肩の可動域は傾斜計を用いて測定しました。
通常の治療プログラムは20分間の温熱療法、経皮的電気刺激を高周波数、低強度、低パルス幅で20分実施しました。また、1MHz、1.5W/cm2の超音波を5分照射しました。運動はコッドマン、僧帽筋上部ストレッチ、姿勢運動、セラバンドを使用して肩甲骨周囲筋、回旋筋、三角筋のトレーニングを実施しました。
MCSは側臥位で反対側の上腕を持つようにして、肩を水平内転するように動かします。
MSSは即買いで、体幹を20°程度後方に傾斜させ、反対側の腕を使用して肩を内旋位に移行させます。
MCSもMSSも30秒のストレッチを5回1セットとして実施しました。
【結果】
痛みは全ての群で減少しました。
活動的な痛み(Pain during activity)ではMCSと対照群、MSSと対照群の間に痛みの軽減度合いに有意差があり、MCS・MSSが有意に痛みが軽減していました。
肩の可動域も全ての群において実施前・後で改善が見られました。
内旋に関しては、MCSと対照群、MSSと対照群で改善度合いに有意差が認められました。
MCS・MSSは改善度合いが強い結果となりました。
PSTも全ての群で増大、つまり改善が得られました。
群間の差は認められませんでした。
CMSスコアは全ての群で改善し、MCSと対照群、MSSと対照群では有意に差があり、MCS・MSSで改善度合いが大きい結果となりました。
QuickDASHも同様の結果となりました。
【考察】
MCSもMSSもこれらのストレッチを追加して行うことで、活動時の肩の痛みの改善度合いは高まりました。
肩関節後方の伸長は他にも効果的であるという報告は多く、本研究でも同様の結果となりました。
しかし、投球障害ではこの効果が明確ではなく、ストレッチ回数等も不明なため、今後の課題となっています。
肩内旋可動域はストレッチ群でより改善が得られました。
後方の伸長は硬さによって引き起こされる、上腕骨頭の前上方への移動や肩甲骨の突出、前傾が抑制されます。
これらが内旋可動域の改善に寄与していると思われます。
結果としては、PSSEを行わない、対照群も改善は多く見られ、通常プログラムも疼痛の軽減や可動域改善に関して一定の効果は示されています。
【どのように活用するか】
本研究では、通常プログラムでも約50分程度の物理療法、30分程度の運動療法と多くの治療要素を含んでいます。
まずこれだけでもしっかり改善が得られると思いますし、実際その効果は認められたため、これらの項目は必要になってくるものと思われます。
それに加えて、PSSEを行なっていくことは、効果の上塗りになり、さらに改善を増大するものとなっているでしょう。
つまり、後方ストレッチは通常肩の機能障害に対して行う場面は多いかもしれませんが、本研究ではそれを除いた場合、行なった場合と比べて改善に差があるということを導き出したことに価値があると思います。
このような研究は多くあり、通常我々が当たり前のように行なっていることを除いた時に、いつもの効果が得られなかった場合、それはやっていることが正しいということを証明するということになります。
いわゆる足し算の考え方ではなく、引き算の考え方をすることも研究アイデアの一つかと思います。
本研究は、その考えたの大切さを教えてくれる、良い研究であると思います。
ぜひ、後方のストレッチ意識をしっかり持って、取り組んでいきましょう!
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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