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【特急湘南26号 Vol.06】一番強い職業は"遊び人”であり、ビートたけしである

この日もいつものように、午前8時11分藤沢駅発の特急湘南26号に乗って、渋谷へと向かう。僕の居場所は相変わらず3号車8番のA席。車内のいつメンたちとともに過ごしているのだが、知らないヒトたちなので今のところ交流は一切ない。


一番強い職業とはなにか

最近列車内で見る動画に引っ張られて、ついついゾンビだったり無人島だったりと物騒なものを想像してしまっていた。結局のところこの車両の結束を強めたいという気持ちを抱いただけであったのだが、あらゆる事故を想定したところで結局のところは自分自身が強くなければダメだと思う。だが自分は所詮、都内に通うビジネスマンであり、3号車のいつメンもほぼ同じだろう。この車両に何が起きても安心できるような職業、すなわち一番強い職業ってなんだろうかと考えてみた。

ドラクエに例えるなら、勇者や戦士、もしくは魔法使い。もちろんこの車両にはいない。僧侶ならギリいるかもしれない。袈裟を身に着けた人は見たことがないが、最近の僧侶は坊主頭じゃないこともあるし、普段着だって着るだろう。きっとSupremeのTシャツだって着るだろう。だが僧侶がいたとて、最強ではない。そこでふと思い浮かんだのは『遊び人』である。ドラクエ3では遊び人はレベル20になると、『悟りの書』を使わずとも賢者に転職できた。僕はそれを「よく遊べ」という堀井雄二さんからのメッセージと受け止めて今に至る。少年時代、そんなメッセージを受け取らなければ今頃は……と後悔したこともあったのだが、日々の忙しさに忙殺されてそんな想いも忘れてしまっていた。僕は賢者に転職できなかった。だが少なくとも『遊び人』はこの車両にいるはずだ。例えばいつも見かける50代のおじさん。誰に向けてかわからないがちいかわスタンプをLINEで送っている。愛人に向けてだろうか。おそらく彼は遊び人である。50代で賢者に転職してそうにないということはレベル19の遊び人だ。

遊び人はタップダンスをする

もっと探してみよう。
そういえば、遊び人は敵との戦闘中に突如タップダンスをすることがあった。タップダンスしてそうな人……そうだ。ビートたけしだ。ビートたけしはタップダンスができる。タップダンス=ビートたけしと言っても過言ではないだろう。もしこの車両にビートたけしがいたら「あんちゃんもタップのひとつくらいできなきゃダメだよ」って諭されるに違いない。

ビートたけしは明治大学をドロップアウトして芸人になった。当時芸人になることは社会から逸脱するに等しかった。生粋の遊び人である。しばらくしてビートたけしは北野武として映画を撮影し、文化人としての側面も大きくなっていく。そして賞を取る。過去にはフランス芸術文化勲章シュバリエ、さらに同勲章最高位のコマンドールを受賞したり、日本でも旭日小綬章を受賞している。それは遊び人が賢者になった瞬間であった。ドラクエ3の遊び人はビートたけしだったのか。だから遊び人は攻撃中にタップダンスをしていたんだ。勇者や戦士が必死で戦っている最中も、遊び人は芸事を磨くためにタップダンスを踊っていた。賢者になると回復魔法も攻撃魔法も使える。この車両の誰かが傷ついたら、ホイミでその傷を癒やす。攻撃されたらフバーハでみんなを守り、メラゾーマで敵を攻撃する。最強だ。一番強い職業、それは遊び人というかビートたけしだったのか。

なんてことを考えていたら渋谷駅に着いてしまった。レベル19遊び人の50代のおじさんはパズドラをやっていた。こうして僕は明日も知らないヒトたちと一緒に渋谷を目指し、夜になると藤沢に帰るのだ。

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