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デフサッカーで活躍する瀧澤諒斗選手にインタビュー(後編) 

  9月23日は「手話言語の国際デー」です。

 「少年写真ニュース」9月8日号では、「手話で会話してみよう」をテーマに、現在、大学サッカー、そしてデフサッカーの両方で活躍、2年後のデフリンピック出場を目指す、亜細亜大学瀧澤諒斗選手に取材させていただき、簡単な手話を教えていただきました。

少年写真ニュース9月8日号はこんな感じです

 手話は非常にわかりやすく掲載されているので、発行日に限らず、学校現場でご活用いただけますとありがたいです。

 「手話言語の国際デー」である9月23日から、クアラルンプール(マレーシア)で、10月7日まで「第4回デフサッカーワールドカップ」が開催されます。

 瀧澤選手も男子日本代表選手に選ばれ、現地での大活躍が期待されます。

 何より、代表選手の中では最年少。

 しかし、その若さからは考えられない、礼儀正しさ、優しさ、真面目さ、賢さ、強さ、そしてサッカーへの深い愛情をもった瀧澤選手。

 初めてのことも多いと思いますが、若いからこそチャレンジして、そして、誰よりも思い切り楽しんで、良い結果を残してもらえればと願ってやみません。

 「少年写真ニュース」9月8日号の二次元バーコード読み込み付録に、瀧澤選手のロングインタビューを掲載しています。

 今回は9月11日にアップしました【前編】に引き続き、【後編】をお届けいたします。

 大学生活から、デフリンピック、そして今週末から始まるデフサッカーワールドカップまで、お話いただいています。

──現在、亜細亜大学法学部法律学科の2年生。大学生活はいかがですか?

「亜細亜大学は指定校推薦で入りました。入る前まで亜細亜大学のことを全く知らなかったのですが、デフサッカーの先輩が亜細亜大学にいて、その先輩の繋がりで、特別支援教育が専門の橋本一郎先生と出会いました。大学に入る前に先生とやりとりをしていて、入学前に大学に行ってお話しする機会をいただいて。そこで亜細亜大学は聴覚障がいの人へのサポートがすごくしっかりしている大学であるというお話を伺って。その話をきいていたから、学校に入ってからも安心で、すごく楽しくて。僕以外にも、自分と同じ聴覚障がいの人が大学にはいるんですけれど、その人たち以外にも手話ができる人もいて」

──授業で困ることはないですか?

「学生ボランティアで、ピアサポーター(障がいがある人がその経験をいかして同じ立場や境遇の人をサポートする活動)というんですけれど、そういう活動も亜細亜大学は充実していて。そういう人たちにも僕がサポートしてもらっています。『先生がこういうことを言っているよ』、『ここが大事なところだよ』ということは、ノートテイク(文字通訳)の人に書いてもらったり。あとは「UDトーク」という会話を文字に起こしてくれるアプリがあるんですけれど、そのアプリを使うために、授業前に先生にマイクを渡してつけてもらうんですね。そうすると、先生がおっしゃっていることが字幕になって出てくるんですね。先生によって話し方も違うので、うまく文字で出る先生もいれば、そうではない先生もいて。ただ文字化できても、誤字も出てくるので、その誤字を直す作業はピアサポーターがしてくれます」

──亜細亜大学は、安心して学校生活が楽しめる環境が整っていますね。

「いろいろな面ですごく環境に恵まれているなということを、大学に入ってから感じるようになりました。授業だけじゃなくて、サッカー部もそうです。大学は、僕が入学した時にジムもグランドも新しくなったのですが、タイミングがいいなあって。『俺の流れが来ているな!』と勝手に思っているんですけれど(笑)、本当にいいタイミングで亜細亜大学に入ったなって思っています。本当に今は充実していて、すごく楽しいです。手話の授業では、橋本一郎先生となかよくさせていただいているので、授業のない時間には、橋本先生の横で、手話を学習している学生さんに、僕も教えたりしています。授業を受けるだけじゃなくて、人に教えることもできて、本当にいろいろな面で勉強できるから、亜細亜大学に入ってよかったなあって思っています」

──そして9月にはマレーシアでデフサッカーワールドカップが開催されます。

「デフサッカーワールドカップに向けて、今がんばっている感じです。自分も日本代表として日の丸を背負う重みは感じています。今までデフサッカーは、日本代表のユニフォームはJDFA(日本ろう者サッカー協会)が決めたものだったのですが、この大会からサッカー日本代表(JFA)と同じユニフォームになりました。トレーニングウェアもですね。大好きな三苫薫選手と同じユニフォームを着ることができるようになったんです」

──それは嬉しいことですね!

「僕も嬉しかったですが、それが決まった時に泣いている先輩もいて。僕はまだ若いんですけれど、昔のデフサッカーの選手の皆さんは本当に大変で、ユニフォームもみんなバラバラ。選手たちが自分で動いて試合を組んだり。食事やホテルの手配も全部自分たちでやっていて。だからそういった苦労をたくさんした時代を知っているベテランの先輩たちだからこそ、あの時に流した涙があるんじゃないかと思っています。引退した先輩たちだって、絶対に着たかったはずなんですよ、JFAのユニフォーム。着たくても着れなかった先輩たちの思い、今まで、そして今もいろいろ支えてくれている人の思いとか、そういったものを背負ってワールドカップや2年後のデフリンピックで優勝を目指してがんばりたいと思っています。そのためには、僕自身が日の丸を背負うということに見合った人間にならないといけないと思うのですが、今はまだ全然足りないので、部活とか大学でもっと大人になれるように頑張りたいと思います」

ワールドカップでの目標を書いていただきました

──瀧澤選手はご自身のプレーのどこを見てほしいですか?

「僕はFWなので、ゴールまでのドリブルや貪欲なプレーを見てもらえたら嬉しいかなと思っています」

──デフリンピックの話題が出てきました。2年後の2025年、日本では初開催となり、東京で行われます。デフサッカーをはじめとしたデフスポーツの見どころを教えてください。

「デフリンピックはきこえないからこそ、いろいろな視覚情報があります。サッカーであれば、一般的には審判は笛を使いますけれども、デフサッカーの場合は、審判はみんな旗を持っているんです。旗と笛の両方で合図を知らせるんですね。サッカー以外だと、例えば陸上は、スタートの時に一般的にはピストルを使うと思うんですけれども、デフの選手にはピストルの音がまったくきこえない人もいます。そういう場合にどうするかというと、スタートランプが選手の目線に合わせた場所に設置されているんですが、赤が「On your mark(位置について)」、黄色で「Set(よ〜い)」、「Go(スタート)」で白に変化。指示を視覚情報で出して。見に来ていただける場合、そういったところも見て欲しいです。あとはやはり手話ですね! 手話を使って話したり、身振りでコミュニケーションをとったり、そういった部分を見てもらえたらなあと」

手話で「デフリンピック」は親指と人差し指で話を作り、上下に

──2年後のデフリンピックは、たくさんの方に見に来ていただきたいですよね。

「デフリンピックってほとんどの人が知らないんですけれども、オリンピックの次にできたんですよね。パラリンピックよりも前なんです。古い順番でいうと、オリンピック、デフリンピック、パラリンピックなんです。みんな知らないですよね。みんなが知らないことがまだまだたくさんあると思うので、デフリンピックを実際に見に来ていただいて、デフのことを知ってもらえたらうれしいですし、手話とかも勉強してもらえたらすごく嬉しいなあと思っています。デフリンピックの知名度も日本では大体約12%って言われているんです。それに対して、パラリンピックは90%以上なんです。やはり、そこの差があるんですね。だから、日本代表の選手たちがSNSを使って宣伝したり、メディアの取材を受けたり、いろいろな活動を通して積極的に動いて、デフリンピックへの思い、デフサッカーの魅力を伝えていくことができたらというのが僕の思いです」

拍手は手を叩くのではなく、両手をあげてひらひらさせます

──これからの目標や夢を教えてください。

「これからデフサッカー日本代表選手として世界で活躍していける人になりたいというのが夢です。僕みたいに、今までいろいろなコミュニケーションや聴覚の面で苦労している人とか、デフに限らず、世の中でいろいろな面で大変な思いをしている人がいると思うんですね。例えば、障がいがあるとか、気持ちがほかの人と違うとか、いろいろな悩みを持っている人がいると思うんですけれども、そういった人たちに少しでも勇気を与えられる選手になれたら、というのが僕の思いです。障がいがあるとか、マイノリティーの立場の人が、もっと生きやすい社会になったらいいなというのが、僕の夢で。今の世の中って、マイノリティーの立場の人がちょっと生きづらい環境だと思うんです。いろいろなマイノリティーの立場の人がいると思うのですが、そういった人たちが生きやすくなるように、楽しく人生が過ごせるように、希望を持ってもらえるようになればいいなって思っています。あとは、今まで支えてくれた家族や先生、いろいろ支えてくれた人たちの思いをしっかり背負って、今年はマレーシアのワールドカップで、そして2年後のデフリンピックで、1つ1つのプレーにしっかりと思いを込めて、責任を持ってプレーして、優勝を目指したいと思っています」■

第4回デフサッカーワールドカップinマレーシア(クアラルンプール)
 2016年の前回大会(イタリア)から7年ぶりの開催で、デフサッカー男女日本代表が参加します。
 デフサッカー男子日本代表は予選グループEで、カメルーン(9月23日21時半〜)、イラン(9月25日17時半〜)、フランス(9月27日17時半〜)と対戦、デフサッカー女子日本代表は、予選グループAで、アメリカ(9月23日17時半〜)、イングランド(9月25日17時半〜)、ポーランド(9月29日17時半〜)と対戦します。

 9月の最後の1週間(今年は9月18日から24日)は、国際ろう者週間」で、毎年テーマが決められており、今年のテーマは「世界中のろう者が、どこでも手話言語でコミュニケーションできる社会へ!」です。

 また、2年後の2025年11月15日から26日、4年ごとに開催されるデフアスリートを対象とした国際総合スポーツ競技大会「東京2025デフリンピック」が、東京で開催されます。何より、2025年大会は、デフリンピック100周年の記念すべき大会です。

 2025年は、東京で世界陸上とデフリンピック、大阪では大阪・関西万博が開催されます。みんなで盛り上げていきましょう!

 そして何より、瀧澤諒斗! がんばれ!



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