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キボリノコンノさん1万字インタビュー(1)

 SNSに投稿した身近な食べ物の木彫り作品が注目されて、大活躍の木彫りアーティスト・キボリノコンノさん。

キボリノコンノさん

 コロナ禍で、たまたま木彫りで『コーヒー豆』を制作したことをきっかけに、食べ物の木彫り作品を制作してSNSで発表し、たくさんの人を驚かせ、楽しませています。

 2023年には、作品集『キボリアル』(玄光社)をはじめ、写真絵本『なにができる?』(PHP研究所)、そして、木彫りクイズ絵本『どっち?』(講談社)を発表。作品を楽しく展示した「キボリノコンノ展」を東京と大阪で開催するなど大活躍。

みんなで挑戦してみましょう!

 今年も、1月26日から、木彫りクイズ絵本『どっち?』の出版を記念して、渋谷PARCO(東京都)にてクイズ形式の体験型展覧会「どっち?展」を開催中です(3月10日まで/入場は有料。小学生以下は無料)。

渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」(東京都渋谷区)にて3月10日まで開催

 さらには過去最大規模(!!)のキボリノコンノさんの展覧会、春の特別展「キボリノコンノ展」が3月23日(土)より、新潟県の新潟県立自然館1階特別展示室で開催されます(5月12日(日)まで)。

 今年も大活躍間違いなしのキボリノコンノさんに「少年写真ニュース」(2024年2月8日号)の取材でお話を伺いました。
 約1万字のインタビューを4回に分けてお届けいたします。

少年写真ニュース2024年2月8日号

【木彫りに出会うまでの人生】

──小さい時は何が好きでしたか?

「小学生の時は、昆虫採集が大好きな昆虫博士でした。図鑑も大好きで、よく図鑑を見て、それを模写するということをやっていました。昆虫の毛1本1本を観察して、目で見て、鉛筆でそっくりに描く、みたいな。そっくりに描くことが好きで、それは今にも多分つながっていると思います。つかまえたり、育てたりもしていました。生き物はなんでも好きで、魚をとったりもしていました」

──現在静岡県にお住まいですが、小さなころから静岡県で暮らしていらっしゃったのですか?

「今は静岡県ですが、子どものころは東京です。多摩川の河川敷の近くに住んでいて、平日も休日も、夏は朝から毎日昆虫採集にあけくれていました。朝からセミが鳴いたらつかまえにいく、みたいな生活です」

──そしてつかまえた昆虫の絵を描くということが好きだったんですね。

「メインは昆虫をとることで、たまにつかまえた昆虫を描く、みたいな感じですね。絵を描くことは、その時の満足でしかなくて、描いたら捨てていました」

──そのころは、将来の夢みたいなものはあったんですか?

「オオクワガタのブリーダーになることが夢でした。将来、オオクワガタを育てて増やして生活しようと思っていました。その時はそれがいちばん楽しかったんでしょうね」

──昆虫はどんなところが好きですか?

「昆虫は、何を考えているかわからないところにひかれたのかな。犬とか猫とかのような感情を表現する動物よりは、本当に野生的な、『食べたくて食べる敵がいるから倒す』みたいな生物のほうにひかれていました。カマキリとかバッタとか、弱肉強食が明らかな世界がおもしろくて、捕食とかも好きでよく観察していましたね」

──ものを作る、ということについても小さなころから好きだったのですか?

「工作とは別なのですが、幼稚園くらいのころから、紙を使って工作をするのがすごく楽しくて。そのころはチラシとかの紙を使って、お菓子、駄菓子のパッケージを作っていたんです。あと、ベビースターみたいなラーメンのお菓子を1本1本切って袋に入れて、開けてざーって出すとか。おままごとじゃないですけれど、手作りでやっていましたね」

──小学生になると変わったのですか?

「小学校低学年くらいのときに、父親が木の端材を買ってきてくれたんです。色紙とか画用紙を買ってきてくれることはよくあったんですけれど、たまたま木の端材を買ってきてくれたんですよね。それで最初のころはつみきにして遊んでいて、そのうち、ボンドとか釘とかでくっつけたり、そりを作ったりとか、工作をするようになって。そのころから木をさわるのが楽しくなっていったんですよね」

──そりなどを作るとおっしゃいましたが、設計図などもご自身で考えるのですか?

「工作については、やりながら組み立てていましたね。最初から答えが見えているわけではなくて、試行錯誤しながら完成させていく感じで、それは今の木彫りの方法とも似ています。さっきのお菓子の袋とか、マクドナルドのポテトの容器とか、自分で展開図を想像して描いて作ったりしていたので、どんなふうにできているのかを考えるのが得意だったのかもしれません。設計図を書いて作るというよりは、自分の中にイメージがあって、そのイメージに合わせてパーツを切って、組み立てながら、『こっちのバランスが良くないから、こっちをもうちょっと切ろうか』とかっていう調整をしていく感じですね。そこにさっきの動物とか虫とかの話がつながっていくんですけれど。動物とか虫の脚の関節がどうやってできているかとか、こういうふうにつながっているからこう動くとか、すごく観察していたので、そこで観察力がすごく養われたのかなって気がしています」

──確かにキボリノコンノさんの作品は観察力が重要ですよね。

「忘れもしないんですけれども、小学1年生の時に本物のチューリップを見ながら絵を描く授業があったんですね。僕は花びら1枚1枚をちゃんと縦長にパーツで描いて、葉っぱも長くして、1枚1枚つながっているっていうところを描いていたんですけれども、僕の隣にいた男子は、アップリケにあるような、簡単な、略したチューリップを描いていたんですよ。なのに、彼のところに『それ上手!上手』って、みんなが集まってきて、僕のチューリップには一切目もくれないんですよ。本物を見ると全然違う形なのにって、すごくくやしくて。でも、それが正解だと思っていないから、自分には彼みたいな絵は描けない。そこから、『よりリアルにしたい』って気持ちが強くなったと思います」

──そして、それが今につながっていると。

「自分の目で見えているものが、多分僕の中で正解だから、抽象的な絵とか一切描けないんですよ。だから写真みたいにそっくりに描くことはできるけれど、かわいい感じのイラストっぽい絵は、全然描けない。僕にとっては、『目の前のものを忠実に描くこと=絵を描くこと』だったんですよね。子どものころ、アニメや漫画をあんまり見ずに、自然の中で育ってきたんですよ。自然の中には抽象的なものってないじゃないですか。略した世界を見ていないので、逆に略された絵を見て、『なんでそうなってしまっているの?』って思ってしまう。だから、特別練習したという気持ちもないし、かといってその才能がもとからあったかといえば、そういうわけでもなく、ずっと自然の中で育ってきて、『自分が好きな対象がリアルなものだったから、それを表現していた』という感じがしますね」

──そして、中学校、高校、大学へと進みます。

「中学や高校時代に絵を描いたりとかはなくて、普通の学生で、そのまま大学へ進んだって感じです。大学ではプロダクトデザインを学びました。家具や家電のデザインや、立体の商品のデザインを学んで、パソコンでデザインをして、それで模型を簡単に作ったりとか、それくらいで。模型を作るにあたって、紙やプラスチック樹脂を流してっていうのはあったんですけれども、今やっているような彫刻作品を作るようなことはやっていなかったんです。絵の具を使うとかもなかったですね」

──大学卒業後はどのような道へ進んだのですか?

「大学を出て、家具メーカーに就職しましたが、家具はパソコンでデザインをするだけで、立体にはさわっていないんです。そのときに『自分の手で何かを作りたいな』って思って。工作が好きだったので、パソコンでデザインしてっていうのではなくて、『だれかのために手で何かを作りたい』という気持ちがあったんですよね。その会社では4年間働いたんですけれど、ずっとモヤモヤしていて、転職を決意しました」

──どのようなお仕事に転職したんですか?

「公務員になりました。家具メーカー時代は、忙しくて、自分の時間もあまりとれなかったし、今の妻と結婚するために生活を安定させたいというのがあって。まずは自分の生活を安定させた上で、自分がやりたいことを、まずは趣味でいいからやってみようっていう気持ちがありました。なので、仕事というより、『好きなことを見つけて何かやれたらいいな』って思いで公務員を選んだんですよね。だから、仕事は仕事って割り切っていました」

(2)に続く
(取材日:2023年11月12日/取材・編集「少年写真ニュース」編集部吉岡)


 木彫りクイズ絵本『どっち?』の出版を記念して、渋谷PARCO(東京都)にてクイズ形式の体験型展覧会「どっち?展」を開催中です(3月10日まで/入場は有料。小学生以下は無料)。

 『どっち?展』を記念して、木彫りファンの糸井重里さんによるクイズ体験やキボリノコンノさんとの対談「「どっち?展で遊ぼう」本物に寄せるだけで、木物ができている。」も「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載中! こちらもぜひご覧ください。

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 ほぼ日のYouTubeチャンネル「ほぼベリTUBE」のメンバーが「どっち?展」の体験レポートしています。こちらもぜひご覧ください!


キボリノコンノさん プロフィール
木彫りアーティスト。1988年生まれ。2021年に趣味で木彫りをはじめ、「あっと驚くもの」をテーマに作品を制作、SNSで発表し続けている。数多くの作品がテレビやインターネットで話題となり、2023年からプロの木彫りアーティストとして本格的に活動を開始。全国各地で展覧会やワークショップなどのイベントを開催。
ホームページ  https://kibori-no-konno.jimdofree.com
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