フランス語でいう「Bon appétit(ボナペティ)」は日本語で何？

これは旅中によく問われる質問の一つ

私は「『いただきます』だよ(We said "ITADAKI-MASU" in Japan)」というのだが、毎回自分の発言に不満を抱きつつ答えている。なぜなら、「いただきます」の意味をちゃんと説明したいから！

畜産系の大学に入ってから私は「いただきます」という言葉をすごく大事にしている。
食前に「いただきます」というのもそうだが、「いただきます」の本来の意味を汲み取ろうと努力している。

「いただきます」の意味

「いただきます」の語源は、「頂く」という言葉で上位の方、神聖なものから恩恵をもらったときに使っていたらしい。そこから食べ物においてもありがたさと謙虚の気持ちを表す言葉になったそうだ。

「いただきます」の意味には2つあると私は考えている

• 一つ目は料理を作ってくれた人、食材に関わっているへの感謝。

飲食店へ行けば、お金と引き換えに調理する時間の省略とおいしい料理が提供してくれるお店の人。
仕事で忙しくて時間が全く取れない中で毎日食事を作って、弁当も用意してくれた母。
消費者のために生き物を殺して(あまりよくない表現かも)肉の塊を口に運びやすいように加工してくれる職人。
形が悪いからという理由だけで出荷できないものも生まれてしまうにも関わらず、気候変動で天気の中休み無しで食材の収穫をする農家。

他にも一つの食事に関わっている人は数えきれないほどたくさんいるし、その人たちがいなければ、私の身体は縦にも横にも大きくならなかった。

• 二つ目は食材への感謝。

一つ目の食材に関わっている人達も偉大ではあるけれど、そもそも食材自体が無ければ私たちは生存できない。動物、魚の命だけでなく、野菜も呼吸をしているし、命があるのではないかと考えていて、それらの命をいただいて調理して自分の身体に納めているのが人間である。
ここまで来ると少し宗教チックになってしまうからここで止めておくけど、弱肉強食な地球のトップである人間は、残酷なことをしているからには感謝の気持ちは持つことが重要ではないだろうか。

"Bon appétit"=「いただきます」ではない

"Bon appétit"はフランス語で「食事を召し上がれ」「食事を楽しみましょう」という意味だそうだ。
みんなもフランス料理を食べるときにふざけて「ボナペティ―！」と言ったことはあるのではないだろうか。

私は 2023年11月2日～2023年11月20日 にフランスのSénaillac-Latronquière という町の農家さんにお世話になったのだが、そこでも食事の時は毎回"Bon appétit"と言って食事を楽しんでいた。そのくらいフランスの生活の中で当たり前に使われている言葉である。
その時も感じていたが、"Bon appétit"には食事の時間をエンジョイする意味合いが強いように感じる。日本では孤食の割合が増加している中で、フランスでは家族で食事するという文化が強いため、遅い時間から家族揃っておしゃべりを楽しみながら食事をすることから、この言葉が誕生したのではないだろうか。

スウェーデンとフィンランドにいたときも食前にお祈りのようなことをした。ホストがキリスト教だったからというのもあるが、ご飯がテーブルに並べられている状態で手を組んでお祈りをする。お祈りの言葉は、

感謝という面では日本語の「いただきます」と似ている意味合いになるが、やはりイコールであるか言われると首をかしげたくなる。

文化や宗教によって食事に対する思いが違うのは非常に興味深い
これだから国際交流は楽しい

広まれ"ITADAKI-MASU"

「いただきます」は日本語でしか表現できない唯一無二な言葉だと感じているし、たったの6文字にはたくさんの思いが込められていることを本当は質問してくれたみんなにこれらを説明したいのだが、確実にウザがれるので我慢している。

でも、この旅で出会った人達が日本人に出会ったり、日本に訪れてまた「いただきます」を聞く機会があった際、少しでも本来の意味を感じ取っれるようになって、"ITADAKI-MASU"を使う日が来るといいな。もちろん"GOCHISOU-SAMA"もね。

※上の写真はドイツの友人の家にお邪魔した時に作った巻き寿司、カツカレー、きゅうりのサラダ