下田翔大 | ゲームプロデュース,デザイン,シナリオ

仕事のコツや、生きていくコツを書きためています。 ゲーム制作スタジオ「Wright F…

下田翔大 | ゲームプロデュース,デザイン,シナリオ

仕事のコツや、生きていくコツを書きためています。 ゲーム制作スタジオ「Wright Flyer Studios」のプロデュース室長 / 代表作は「消滅都市」 / 過去にはPSPのディシディアFF作ったりもしてました。

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宇多田ヒカル「traveling」の歌詞ってすごいよねという話

宇多田ヒカルの「traveling」が綾鷹のCMで流れていたのを聞いて、唐突に語りたくなったので書いてみます。 ベストアルバム「SCIENCE FICTION」にRe-Recordingが収録されていますが、オリジナルは2001年に発売ということです(時が経つのがはやい) 前提:世界観について 紀里谷和明監督によるPVが印象的すぎて、その世界観で歌詞を読んでしまいがちになるのですが、この歌詞はPVとは別の世界観を持っていると思います。 シンプルに 金曜に仕事して、終わっ

    • 消滅都市の話

      2024年2月27日、消滅都市のサービスが終了します。 2014年5月のサービス開始からほぼ10年。ライトフライヤースタジオの処女作であり、自分がディレクターを務めながらゲームデザイン、メインシナリオを手掛けた、とても大切なタイトルです。 なんだかさみしいような、切ないような、不思議な気持ち。 TVCMを経験させていただいたり、アニメ化を経験させていただいたり、キティちゃんのリボンを外させていただいたり、川谷絵音さんに曲を書いていただいたり、歌詞を書いたりちょっとメロディ

      • 2022年にたくさん聴いた曲(と、2022年に考えていたこと)のご紹介

        毎年年末になると、この一年考えていたことをまとめておきたくなります。 でも、今年はほぼ仕事しかしていなかったので、書けることが何もないなと考えていました。 そんな折にApple Musicが、「Replay’22」という今年たくさん聴いた曲のリストをレコメンドしてくれました。 どんなに忙しくても、音楽は聴くものなんだなあと思いました。 積極的に発掘したりはしなかったですが、その分、自分の思考と直結しているリストのような気がしています。 今年は、この曲をとっかかりに、一年

        • 製品を作り、届けるために考えるべきこと(2021版)

          昨年から引き続き、何かを発信することはほとんどないまま、製品に潜る1年でした。 とはいえ、いろんなことを考えました。 滝に打たれる修行僧のように自分の思考の奥へと潜りながら(打たれたことないから適切な例えなのかは分からないけどイメージとして!)、製品作りの方法論をアップデートしています。 組織について考えることが多い時期は「組織論」をアップデートし、マーケティングについて考えることが多い時期は「マーケティング論」アップデートし……と、雑多な知識を取り入れながら組み立ててい

        宇多田ヒカル「traveling」の歌詞ってすごいよねという話

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        • 思考したことをまとめたエッセイ
          12本
        • 海外の地で学んだこと
          2本
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        • どんな仕事にも役立つTIPS集
          5本

        記事

          「全てのゲームは、ここに集まる。」という嘘。

          昔、プレイステーションという怪しいゲーム機があった。 ゲームタイトルは麻雀とか将棋とかがほとんどで、ときどきラインナップされるリッチなタイトルも格ゲーやレースゲームしかなくて、RPGが大好きな僕にとってそれは、世の中の隅っこで誰かが触れているのかもしれない、それだけに過ぎないニッチなハードだった。 ネオジオCDとか、3DOとかの仲間でしょ、と思っていた。 あの頃は僕だけじゃなく、誰もがそう思っていただろう。 でも、風向きは変わる。 プレイステーションはCMで高らかに宣

          「全てのゲームは、ここに集まる。」という嘘。

          今すぐ役に立つ! 課題発見して成長するための10のヒント

          ありがたいことに、若い子が作ったゲームを見てレビューさせていただく機会があります。 過去には採用だったり、インターンだったり、最近はイベントだったりするのですが、そんな中でアドバイスをしていく中で「毎回同じことを言っているな」と最近気づきました。 それは、僕がこれまで蓄積してきた「考え方のコツ」なのですが、総合的にまとめると「多様な視点で物事を捉える方法」ということになります。 物事を考える上で、視点を多く持っていることは武器です。 なぜかというと、この視点によって「

          今すぐ役に立つ! 課題発見して成長するための10のヒント

          生きる(あらゆる刺激は、麻薬である)

          あらゆる刺激は、麻薬である。 刺激に慣れると、それを求めつづける。 ひとは、その原理原則から逃れることができない。 つまり、 生きているということは、 いま生きているということは、麻薬なのだ。 ーー のどがかわくということは、麻薬である。 木漏れ日がまぶしいということは、麻薬である。 ふっと或るメロディを思い出すということは、麻薬である。 くしゃみすることすら、麻薬である。 生まれたての頃は、すべての刺激が新鮮だった。 しかし、ひとの感受性のゴムは 経験とともに、

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          RPGにおける「段取り」について(ドラクエ4の事例より)

          RPGにおいてメインの目的は、すぐに達成されるわけではありません。 段取りをこなさないと先に進めない、ということが往々にして起こります。 この「段取り」は寄り道であるが故に、いろんなことを気にかけて導入していかないと、プレイヤーの興味が続かなくなってしまいます。 (結果、おつかいゲームと呼ばれてしまいます) 優れた「段取り」を作っていくためにはどうすればよいのでしょうか。 ひとつ、よい事例を思い出したのでまとめてみます。 ドラクエ4冒頭の事例まず、メインの目的がセット

          RPGにおける「段取り」について(ドラクエ4の事例より)

          最高のバトル体験のために(消滅都市の事例より)

          以下、バトルエネミーの設計についてチームメンバーに伝えるべく、2015年に書いた社内資料になります。 ゲーム性によらず、汎用的な考え方かと思うので、よかったら参考にしてみてください。 そもそも我々は何のためにバトルを作っているのかバトルが何のためにあるか、というと ・ピンチの状況を作り ・それを乗り越えるという「物語体験」をさせ ・成長欲求につなげていくため です。 なので「最も良いバトルバランス」を言語化すると ・この戦力でこのバトルに勝てるのって、自分くらいじ

          最高のバトル体験のために(消滅都市の事例より)

          シナリオの書き方まとめ(消滅都市の事例より)

          以下、シナリオの書き方についてチームメンバーに伝えるべく、2015年に書いた社内資料になります。 この資料では「守れなかった約束」というサイドストーリーの前半を例にとって、どういう順番で物事を考えるべきかをまとめています。 ※ストーリーは検索すれば出てくるので、興味がある方はぜひ。 汎用的に使えるテクニックかと思うので、よかったら参考にしてみてください。 準備実際に手を動かす前に考えるべきこと。 ① 感情を最も強く動かす瞬間を明確にする主人公は子供たちとの約束を守れな

          シナリオの書き方まとめ(消滅都市の事例より)

          仕事の任せ方について

          優秀なプレイヤーが優秀な上司になるとは限らない、というのはよく聞く話だ。 特に日系企業では、プレイングマネージャーが多いと言われている。 が、自分は優秀なプレイヤーが上司として仕事を任せ、その上で最後のクオリティに妥協しない姿勢を示すことこそが日本企業の強さなのではないかと思っている。 優秀なプレイヤーこそ、優秀な上司になれる。 そのために必要なことはただひとつ、「仕事の任せ方」をテクニックとして覚えることだけだ。 まずはタスクを何回に分割するかを考える仕事を任せること

          書類の書き方がわかれば、考えが整理できる

          一生懸命つくった資料を意気揚々と上司や同僚に見せたのに、思ったような好反応を得られなかったという経験は誰にでもあるだろう。 どうしてこのワクワク感が伝わらないのだろうと悩んだり、あるいは感性についてこれない上司や同僚が悪いのだと人のせいにしてしまったりするものだが、 大体の場合、原因はたったひとつだ。 その資料はロジックが通っていない。 書類を書く力は、わかりやすい競争力になるロジックの通っていない資料は、思いつきの羅列に見える。 思いつきの羅列を見て、心を動かされる人

          書類の書き方がわかれば、考えが整理できる

          タマシイの或る場所(居場所のつくりかた)

          何を大事にしてチームを作っていますか? と、面談などで訊かれることが増えてきて考えたこと。 ずっと考え続けていたことがあって、ようやく答えが出た気がするのでここに記しておきたいと思います。 それは、タマシイはどこにあるのかという話です。 --- タマシイは、いったいどこにあるのでしょう。 あなたのタマシイは、いったいどこにあると思いますか? もちろん「自分の中」というのが普通の答えでしょう。 眠れない夜にいろんなことを考えて、ああ、悩んではいるけれど悩んでる私は今

          タマシイの或る場所(居場所のつくりかた)

          シン・エヴァンゲリオン劇場版を見て

          エヴァンゲリオンというアニメがあって、その最後の劇場版が公開されました。 1995年に放映されたアニメで、はじめに完結したのが1997年の劇場版でのこと。 そのとき僕は14歳で、主人公たちと同じ年齢でした。 君はまだ生まれていなかったよね。 だから世の中がどうしてこんなに熱狂しているのか、よくわからないと思います。 きっと僕が、この作品の大切さを語っても、長く生きてればそういう作品もあるよねくらいに思うんだろうな。 確かにこういう「特別っぽいテンション」で語りたくなる作品

          シン・エヴァンゲリオン劇場版を見て

          YMCKについて(宇宙のどこにいてもきっと届けられるよ)

          YMCKというアーティストの紹介をしたい。 ジャンルはチップチューン、いわゆるファミコンみたいなピコピコ音が特徴的で、アーティストとしての姿も可愛らしいドット絵になっている。 パッと見てイロモノかなと思うのだけれど、彼らの作家性は非常に高い。 そしてこの「作家性の高さ」には、作品を作る人が向き合うべき本質的課題が隠れているような気がしている。 初期3部作YMCKの歴史は以下の3部作からはじまっている。 FAMILY MUSIC FAMILY RACING FAMI

          YMCKについて(宇宙のどこにいてもきっと届けられるよ)

          情けない自分を赦すこと

          つづくリモートワークで心の風邪にかかる人が多い。 もちろん向いている人、向いていない人はいて、それは背が高いとか、足が遅いとか、目が大きいとかと同じように個人差のあるものだと思う。 ただ、対面で話すことを制限されたこの世界線の環境は、どんな人にもきっと少しずつ影響を与えている。 比較的鈍感な、僕個人としても思う。 いまの自分は環境から影響を受けていると考えた方がいいのかもしれない。 他人との接触を断った時期として思い出すのは、たとえば18とか19の頃のこと。 たぶん失恋