見出し画像

【メンバーシップ】第二回狂犬ブックセミナー動画配信/久松達央さん「農家はもっと減っていい」

昨晩は久松農園の久松さんと久々にクロストークをさせて頂きました。久松さんの新刊「農家はもっと減っていい」を題材に議論させて頂きました。

数年ぶりでしたが、話せば話すほど非常に刺激を受ける話でした。特に久松さんがかつて新規参入した時代よりも、開業支援は充実しているものの参入障壁はより高くなっており、そう簡単に新規で勝てる業界ではないというのはよくわかります。さらに農地の流動性の低さ、農業においても出口の多くが加工品向け需要の時代になってきているため一定の量と品質が必要など、私達の日々の消費行動からも「たしかにー」ということが多々ありました。

○ 新規参入の困難さは拡大

この数年において農業では売上3000万円以上の農家セグメントだけが増加し、その他は減少。

実際に私達の日々の生活をみていてもわかりますよね。20年前よりも確実にチェーン店比率は高まり、コンビニでもパウチ、レトルト惣菜が充実するようになっています。結果として、農作物はチェーンストアの一括仕入れなどでの大規模供給が必要になり、コンビニと取引している加工業者もまた大規模供給を要求しています。

結果として、農業としては一定の量がないと独自販路を開拓するというのは非常に困難になっていて、さらに大手取引における品質管理も厳しくなっているのでそれに対応できる農業者が勝ち残っていく。

そのためには一定の売上が必要であり、適切な資金調達と投資を行い続けないと取引を維持できないというわけです。まぁ農業だって産業ですからこのあたりは当然と言えば当然ですが、牧歌的な農業を期待して就農しても挫折する人が多発する背景でもあるでしょう。

私も大学院の頃から生協の産直取引などをみているのでよくわかるのですが、生協の取引農業法人などは生協の成長と共に設備投資を行い、生産拡大できたところが中心です。

つまり戦後生協は最初は小さかったので需要も小さいから小さな農家とかでも対応できたものの、成長してくるととんでもない量が必要になっていったわけです。そうすると、適切に設備投資しないと野菜も足りない、卵も足りない、という具合になってしまうわけです。当然その途中で「これ以上は投資できない」と脱落していった農家の方々も多かったのは、ヒアリングにいくとよくわかるのです。今残ってるのは、その成長スピードに対応できた経営力ある農家、酪農家、畜産農家だけ。100万世帯とかに産直を行う生協と取引できているところはそれなりの事業家の方ということになります。

○ 農業のOSが変わる

テクノロジーによるオートメーション化も、各種管理におけるDXもまた、事業規模単位の拡大の要因になっていきそうです。

一定の耕作面積を効率的に農業ができるオートメーション化には設備投資が伴います。それをカバーするためには当然一定の規模が必要になるので、小規模なところで非効率な農業では太刀打ちがますます難しくなっていくというわけです。

DXなどにおいてもトライアンドエラーが必要な時間を担保し、設備投資を回収するためにはやはりこれまた規模が大切。トライアンドエラー必要なDX導入で30万円使うとすれば、大抵の企業はその手の設備投資が売上の1%と言われているというとで、3000万円程度は農業収入がないと無理というわけです。

○ 小さくて強い農業はファンベースエコノミー

となると、小さくて強い農業を行う上では通常取引とは全く別枠で市場をみつけて高付加価値での農業が必要になります。これは久松さんが参入した時代よりもより難しくなっていると言えます。オンラインPFは増加しましたが、それだけ熾烈な競争を小規模農家がPF上で行うことになるので、まぁ楽になったようななっていないような…という。だから実はネットでフラットに比較されるようなベースよりは、場末のスナック商法が大切という話で盛り上がったのです。場末のスナックに食べログやgoogleマップの評価をたよりに行く人はまずいない。知り合いからの紹介とかで連れて行かれるという独自経済のなのです。

だからこそ、ファンベースエコノミーを作り出そうという話になっていくわけです。ここのこの人がいいといっているからという中心軸に生産者がなることは大切だし、それを広げてくれる人も胸張って「これってね」とうんちくをいえることが大切。ワインとかでも伝統的生産地のものってそうですよね、ワインの畑、ドメーヌの歴史などをうんちく言えるからブルゴーニュはブルゴーニュなのです。ワインのレベル品質だけでいえば、ニューワールドの計画的かつ戦略的に作られているものは十分に美味しくやすい。中国であれば砂漠の上にブドウ畑を作り、降水量を細かく管理し、ボルドーから醸造長をヘッドハントして「毎年当たり年」になるように作るなんて挑戦もしていて、世界ソムリエでもボルドーの名門シャトーと比較してもわからないなんてことも出てくるといいます。

となると、単に品質とか安さとかではなく、別の価値が大切になるというのがよくわかると思います。だからファンベースエコノミーが大切です。この人のやり方、この人のいうもの、この人の作るもの、に価値を見出してもらえる蓄積に投資していくことが大切なのです。

○ 農業と商業の衰退プロセス、課題とその解決の共通項

さらにクロストークしてて農業も商業も衰退プロセス、課題とその解決には共通項がたくさんあるということです。これはありすぎて今度改めて別途イベントでもやろうということになりました。

以下で配信する動画でそのあたりも踏み込んでいますが、耕作放棄地は空きビル/空き店舗と近く、そこへの新規参入障壁も同じ。さらにそういう場所が再生する条件も、新規参入によって成功するために必要な逆算営業などについても基本的に同じ。

メタ思考では共通点、具体策では相違があるというあたりくらいです。流派は似ているが、使う武器、相手が違うに近いですね。

ということで、ぜひ農業分野の方も、商業や地方創生分野の方もこちらの動画をご覧頂いて、考えを深めていただければ幸いです。

○ 1時間40分ほどのクロストーク、質場応答

予定よりオーバーして1時間40分ほどの動画になっています。実際に農業分野においてなぜ「減って良い」なのかは、見てもらえれば分かると思います。

ここから先は

188字
この記事のみ ¥ 2,200

サポートいただければ、さらに地域での取り組みを加速させ、各地の情報をアップできるようになります! よろしくお願いいたします。