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イチロー選手は記者会見もおもしろい

昨夜耳に入ってきた「イチロー引退」のニュース。衝撃だった。そしてショックだった。「50歳まで現役」という突拍子もない目標も、イチロー選手ならできそうな予感が少しはあった。だから余計に残念だった。

普通ではそんなことありえないだろうと思うことでも、現実にしてくれそうな予感を与えてしまうところもまた、イチロー選手のすごいところだ。

3月21日東京ドームの試合終了後に行われた記者会見。ぼくはその模様を収めた動画をフルバージョンで、じっくりと視聴した。

この記者会見を観て改めて思ったことは、イチロー選手というのは記者との一問一答でも、試合と同じくらいの緊張感で臨む完璧主義者、だということ。

どんな質問に対しても、考えに考え、これしかないという言葉が見つかるまで真剣に考え、そうしてようやく見つけ出した言葉を口にする。たとえ簡単そうな質問であっても、軽率に言葉を発しない。その姿勢はとても真摯でジェントルマンだ。

イチロー選手は、とにかく「考える人」なのだと思う。どうすればヒットが打てるか、どうすれば最高のコンディションでバッターボックスに立てるのか、常に考えている人だから、一つひとつの言葉とも丁寧に向き合う。深く考えずに言葉を発することがどれだけ間違っていて、また怖いものでもあるか。このあたりにも「人間・イチロー」の奥深さが隠れていると思う。

そんなイチロー選手を相手に取材・インタビューするのはとても大変だ。質問する人も、相当真剣に言葉と格闘しないとダメだろうし、浅い考えで発せられた質問ではイチロー選手の真剣さとかみ合うこともない。これはただの記者会見ではなく、イチロー選手とインタビュアーの、1対1の言葉の勝負と思ってもいい。それくらいの緊張感と準備を持って臨まなければならない場が、あの記者会見だったと思う。

言葉と真剣に向き合うイチロー選手の記者会見は、スポーツの試合を見ているような感覚で楽しめた。だから、さみしさとか哀しさとかは、不思議と少なかった。それよりも、これからどんなことをして私たちを楽しませてくれるのか、そっちのワクワク感とドキドキ感が強い記者会見だった。。

イチロー選手には、自分勝手だとか個人主義者だとかの形容詞がつきまとう。しかし、本当のところはもっと人間味があってファン思い。そして他者の立場を敬うこともできる立派な人なんだと思う。それは試合終了後に会場を一周して観客に挨拶した姿や、「引退を決断して、後悔はないですか?」という質問に対する次の答えからも、よく分かる。

「今日のあの、球場での出来事(ファンが残って拍手を送ってくれたこと)を見たら、後悔などあろうはずがありません」



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