見出し画像

デザインがしんどくなったあの日のデザイナーへ

「5年後、どんなデザイナーになりたいですか?」

10年以上前、新卒未経験だった私が、最初に入った会社で聞かれた質問です。

面接では誰もが通るこの質問。
当時の私は「1年先のことすら分からないので、壁にぶつかったら都度考えて軌道修正します」と答えました。平凡でよくある返しですが、その考えは10年以上経った今でもさほど変わってない気がします。

一方で、腹のなかでは「俺は俺の考える最強のデザイナーになる!」みたいな思いも抱えていたことを白状しておきます。私はデザイナーとして、得体の知れない何かに向かって、とにかく勝ちたい!と思うタイプのデザイナーでした。

私が働き始めた当時、デジタル界隈では中村勇吾さんをはじめとするFlasherが私のヒーローでした。何かに勝ちたい私は、中村勇吾さんが一時在籍していたbAという会社に中途で滑り込みます。

それからの5年間、とっくにFlashは使わなくなっていましたが、デザイナーからアートディレクター、最後はクリエイティブディレクターという肩書きになり、順調に何かに勝ち、何者かになったと錯覚するに至りました。

一方で、何かに勝った気になったデザイナーは、力試しがしたくなり、次の何かを求めて転職します。ここで事件が起きました。

転職先の環境と仕事が全くと言っていいほどマッチしなかったのです。デザインがこんなに楽しくないのは初めてでした。

自分の力を過信し、デザイナーとしてどこで何をしても活躍できると安易に転職を決めた結果でした。

その会社を4ヶ月で退職し、開始3秒でワンパンKOされた敗北感を引きずりながら、2ヶ月ほどは無職として暮らしました(ちなみにこの時期にちょうど第2子が生まれ、妻には本当に迷惑をかけました。本当に)。

薄っぺらで元から根拠のない自信を失った私は、デザインすること自体がしんどくなっていました。

メディアでデザイナーの活躍を見るたびに、それは日夜繰り返される不毛なマウンティングに見えました。あれ?デザイナーってダサくない?とまで思いました。逆恨みですね。

一方で、この時期私のメンタルを支えたのは妻や子どもであり、(家族と並べるにはあまりにもささやかですが)趣味の盆栽でもありました。皮肉にも、デザイナーという肩書きを捨てることで、視野が広がり、人生が豊かになったように感じました。

休業期間を経て、私はBuzzFeed Japanというメディアで、広告クリエイティブを担当していました。特にデザイナーらしいことはせず、記事を書いたり動画を作ったり、企画をすることに集中しました。知り合いに「最近何やってるの?」と聞かれても、うまく説明できないので適当に答えました。

BuzzFeedは、顔の見えない誰かのために、面白おかしく、時にはシリアスにコンテンツを届けてリアクションが得られるという点で、とても楽しい環境でした。デザインとは少し離れた仕事をし、週末は家族と過ごして盆栽を愛でる一年は、とても充実していたと思います(ちなみに、職場の仲間も最高だったことを付け加えておきます)。

そうして、順調に自分の中のデザイン成分が薄れていくのを感じながら、あれほどまでに固執した「デザイナーとして何者かになりたい」という気持ちは、とても狭い世界の小さな話だったんだなと気付きました。いわゆる業界とされる世界で話されていることは、飲み屋の戯れ程度に捉えていいんだなと。

挫折して以降私が敬遠していたデザインは、他でもない自らが期待し、設定した、「デザイナーとはこうでなくてはならない」というただの偶像でした。

その偶像を崇拝していたのは、他でもない自分自身でした。

私は「私が考える強いデザイナー」であること自体を、人生の目的にしてしまっていたのだと思います。

最近、若くしてとても優秀なデザイナーの方々にお会いしています。本当に驚くくらい優秀です。でも少しだけ、それに不安を覚える瞬間があります。

それって、大人がビジネス的に必要とする「優秀なデザイナー」を押し付けてきた結果ではないか?という不安です。デザインが持つ純粋な魅力やそれに対する思いを、ビジネスが搾取してはいないだろうかと。

もちろん、デザインとビジネスは切り離し難い部分がありますし、クライアントやユーザーの声はシビアです。Twitterやカンファレンスを覗くと、強いデザイナー達の言葉に影響されることもあると思います。焦りもあるでしょう。でも、落ち着いて。

デザインについて深く学び、経験値を高めることはもちろんデザイナーとして必要な努力だと思います。ですが、その思いが強くなりすぎた結果、人生において「デザインがすべて」「仕事がすべて」と思い込まないように自分に注意してやって欲しい。自分の価値を、存在意義を、会社やデザイナーという職業に依存しないで欲しいのです。

遠回りに思える私のキャリアも、子供と贅沢に向き合い、盆栽から時間の流れを感じ、全く違う職能の人々と働くという刺激に溢れていました。そこで経験した楽しさは、デザインを通して他の誰かを楽しませたい、という私の原動力になりました。

私はいま、”Just for Fun.”を掲げるheyという会社でデザイナーとして働いています。
デザインをはじめて13年。これまでで一番デザインを楽しんでいます。

一方で、私は私の人生のために、たまたま今デザインを選んでいるに過ぎません。壁にぶつかったら、またデザイナーを辞めてもいい。

1年先のことなんて誰にも分からないのだから。


[以下PR]---

で、結局のところなぜデザイナーに戻ったの!? と思ってしまったそこのアナタ。hey社では毎週木曜日にオープンオフィスを開催しています!私もよくいるので直接遊びに来てね☆ 盆栽の話するよ
https://hey.jp/events/hello-hey/

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

もしよろしければ、サポートの代わりにそのお金で盆栽をはじめる&コメント頂けると本望です。

237

アラキシュート

デザインよりも盆栽を愛してしまったデザイナー。hey/STORES.jp←BuzzFeed Japan←Business Architects←野良。長崎県出身。二児の父。盆栽専用instagtam→https://www.instagram.com/shuarak/

#デザイン 記事まとめ

デザイン系の記事を収集してまとめるマガジン。ハッシュタグ #デザイン のついた記事などをチェックしています。広告プロモーションがメインのものは、基本的にはNGの方向で運用します。
4つ のマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。