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タピ子 Queen of the Sweets

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スイーツ妖精たちが闘う覇道のストーリー!!
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2019年7月の記事一覧

「バトル・オブ・ジユー・ガ・オーカ #01」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  薄暗い部屋。煤けた壁。埃の積もった床と調度。仄かな光が明滅し、流れ続けるザァという砂嵐のような音。じゃらじゃらと擦れる鎖の音。そして、少女の呻き声── 「んんー、んー、んんー!」  部屋の中央。暗がりの中には少女が一人。猿轡をされ、椅子に縛りつけられ、声にもならぬ声をあげ、そして、もがき続けている。 「んんん……!」  その少女は何かを訴えるかのように激しく身をよじる。その全身には幾重にも鎖が巻きつけられ、露出した二の腕には赤く痛々しい内出血の跡

「バイラル・ライバル #05」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  それはまるで火炎の旋風だった。一回転、二回転、三回転! 熱風渦巻く回転蹴りがタピ子を襲い続けていた! 「こいつ……!」  一歩、二歩、三歩──タピ子は半身にかわしながら後退をし続ける。「ははっ!」吠えるように笑うホユン。その蹴りは回転するごとに速度を増していき、その熱量も加速度的に増していく!  辺りにたちこめる甘く香ばしいホットクの匂い。凄まじい大技だ。しかも(スキがない!)タピ子は驚嘆していた。ここまでの大技を放ち続けながら、その視線、その体軸

「バイラル・ライバル #04」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  タピ子は歩む。スイーティアの大地を踏みしめ、一歩、そしてまた一歩。タピ子は見据える。真っ直ぐに前を。地平の彼方へと続く長い長い街道のその先を。  街道の遥か向こう、そこに彼の地はある。スイーツ妖精たちの聖地──ジユー・ガ・オーカ。  歩みの中、タピ子は一人の少女を思い浮かべていた。 (ショコラダ・マイ……)  可憐にして高貴なる少女。偉大なるスイーツ大帝。彼女の統治のもと、かつてのスイーティアは幸せであった。 (ショコラダ・マイ。あんたはなぜ……)

「バイラル・ライバル #03」 タピ子 Queen of the Sweets

【目次】【前回】  あばら屋の入り口に静かに立つ。タピ子はそこから長年暮らした我が家を──誰もいない我が家の中を、ただ独り黙って眺めていた。そのあばら屋は切り立った崖の麓にある。だからそこは日中でも薄暗い。入り口から僅かに入り込む日の光はちょうどタピ子が遮る形となり、質素な調度の上に、人の形をした影を落としている。 「ふふっ」タピ子は静かに笑った。特に思い入れなどないはずだった。しかし、離れるとなると少し寂しい。 「よし、行くか……」  タピ子は風来坊然とした粗末なボ