「バイラル・ライバル #03」 タピ子 Queen of the Sweets
【目次】【前回】
あばら屋の入り口に静かに立つ。タピ子はそこから長年暮らした我が家を──誰もいない我が家の中を、ただ独り黙って眺めていた。そのあばら屋は切り立った崖の麓にある。だからそこは日中でも薄暗い。入り口から僅かに入り込む日の光はちょうどタピ子が遮る形となり、質素な調度の上に、人の形をした影を落としている。
「ふふっ」タピ子は静かに笑った。特に思い入れなどないはずだった。しかし、離れるとなると少し寂しい。
「よし、行くか……」
タピ子は風来坊然とした粗末なボ