短歌をモチーフに生み出された4つの世界(映画:ひかりの歌)

アップリンク渋谷で、「見逃した映画2019」というキャンペーンをやっていて、前から気になっていた作品なので見に行った。
ラッキーなことに監督とキャストの方々の舞台挨拶もついていて、作品の世界をより広く満喫できた。

コンセプトからして面白くて、「”ひかり”を題材にした短歌を公募し、1200首から選ばれた4種を短編映画に仕立てた」というオムニバス映画。もともと多くを語らず、たっぷりとした余白を味わす作品が売りの監督らしく、4本の短編もこれ見よがしな説明やドラマチックな展開はほぼ無し。
それぞれ異なる境遇の女性が主人公となり、淡い恋心や、叶わぬ恋のもどかしさ、亡き父への郷愁など、様々な感情がぼんやりと照らし出される作品集。

最近、良くも悪くも「分かりやすくて派手な映画」を見過ぎていたのか、ゆったりとした間と、劇的な動きの少ない演出で、ちょいちょい睡魔に持って行かれてしまった。これは悔いが残る。目を凝らしていないと見逃すような感情の機微を、細やかに察知して楽しむタイプの映画が、今の自分にはまだ早いのかもしれない。
それでも、たった31文字という制約条件の中で、それこそ余白たっぷりに描き出された情景や心境が本当に丁寧に再現されていて素晴らしかった。監督に「短歌があってよかったことはなんですか」と質問した時に、「普段は内向的に内省的に、自分を掘り下げて作品を生み出す。今回は、短歌という答えが既にあって、そこと向き合い続ければよかったので、ずっと作りやすかった」という返答で、それも印象的だった。

万全のコンディションでもう一回見たい。
察知しきれなかった喜怒哀楽を、もう一度丁寧になぞりたい。

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