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「ヨゾラの森」

これは、以前Twitterのフォロワーさん経由で参加したキャスの企画である作家人狼用に書いた台本です。

テーマは「夏、手紙」として、参加者が期限までにそれぞれ台本を書きます。

後日、キャス配信にてリアルタイムで台本の作者は誰なのかを会話などを通じて推理する、という面白い企画でした。

私は普段あまり長い文章は書きませんが、周囲に声劇(nanaアプリやキャスで声だけの劇をやる人々)をやる人が身近にいた影響で、物語や台本を書くことに少し興味を持っていました。

そこにフォロワーさんの企画案が立ったのを見て、これは是非参加せねば!と思い立ち飛び込みました。

当日はそれぞれの台本を、お互いランダムに割り振って実際に読んでみたりと、演者としても楽しめる企画になっていたと思います。

また、折角なのでその時に書いた台本をnoteに公開しようと思いました。

実は、企画終了からかなり時間が経っているのは確かなのですが、2020年の思い出のひとつとして、ここに記したいと考えたのです。

※もし、本作の使用に関してご興味がある場合は、使用前に一度ご連絡頂けると嬉しいです。また、ご利用の際には作品の内容上、性別変更などの改変は固く禁じさせて頂きます。

どうぞよろしくお願い致します。

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「ヨゾラの森」

【登場人物】
ヨゾラ…森に棲む主。性別は男。おそらく、キツネのようなもの。アカネと一緒にいる時は人の姿をとっている。
アカネ…森の近くの集落へ療養にきた女の子。あまり警戒心がない。


ヨゾラ「夏の蒸し暑い夜、俺はいつも一人の女の子のことを思い出す。」
「その子に会ったのは、もう何年も前の話だ。」


アカネ「…誰?」
ヨゾラ「…。」
アカネ「まぁいいわ。私、病気なの。この近くに有名なお医者さんがいるから、そこで診て貰うためにこの近くに引っ越して来たの。」
ヨゾラ「どこか悪いのか。」
アカネ「ん~。パパとママはいつもお医者さんと話した後は難しい顔してる。でも、私にはよくわかんない。」
ヨゾラ「そうか。」

ヨゾラ「それから俺は、その子を森で見かけると話を聞きに行くようになった。」
「別に人間が珍しかったわけではないが、その子からは…死のにおいがしていて、それは会う度に少しずつ、でも確実に濃くなっていた。」

アカネ「ヨゾラは『みたま流し』って、知ってる?」
ヨゾラ「いや、知らんな。」
アカネ「そうなの?なんかこの辺で昔から続いてる風習、らしいよ?」
ヨゾラ「そうなのか。」
アカネ「うん。8月の終わりに、川に灯篭を流すんだって。」
ヨゾラ「ふむ。確かに沢の方が明るいと感じた時はたまにあるな。」
アカネ「でしょ?で、その灯篭にお手紙を入れておくと、伝えたい人に伝わるんだって!」
ヨゾラ「そんなにまわりくどいことせんでも伝えればよかろう?」
アカネ「もぅ!ヨゾラってばロマンがないなぁ~。これはね、あの世…もう死んじゃった人とか、会えなくなっちゃった人にも届くってことなんだよ?」
ヨゾラ「…よくわからん。」
アカネ「私は素敵だと思うけどなぁ~。」

ヨゾラ「俺にはアカネが言っていることが理解できなかったが、アカネが楽しそうなので別にいいかと思い、その後も色々しゃべり続けるアカネの話を黙って聞いていた。」

ヨゾラ「だが、その時を境にアカネを森で見ることはなくなった。」
「子供のことだ。きっとこの森にも飽きてしまったんだろう。」
「そう思って、またひとりで月日を過ごしていた。」

ヨゾラ「ある夜、俺は小さな灯篭がひとつ川岸に乗り上げているのを見つけた。」
   「何気なく拾い上げたその灯篭の中には、小さな…紙切れが入っていた。」

アカネ「ヨゾラへ。もっとたくさんお話したかったけど、ダメみたい。ごめんね、今までありがとう。」

ヨゾラ「あれからどれぐらい月日が経ったのか思い出せないが、俺は、もうボロボロになってしまった灯篭にそっと手紙を入れて川に流した。」
   「あんな話を信じたわけではない。それでも、アカネに届けばいいと思った。」


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