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コロナ禍「不要不急」の経験を受け、「これからの文化芸術活動を創造する為の対話集会」@別所沼会館を開催しました。

去る2021/12/05「これからの文化芸術活動を創造する為の対話集会」が行われました。

このプログラムは、9/11より、別所沼公園のヒアシンスハウスを巡るアートプロジェクト『サイタマアートコロニイプロジェクト- ヒアシンスハウス編-』の最後の締めくくりのプログラムとして開催されました。

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『サイタマアートコロニイプロジェクト- ヒアシンスハウス編-』の概要は↓をご参照下さい。

別所沼公園にあるヒアシンスハウスは立原道造が自分の創作のために設計した小屋としてばかりではなく、ここで様々な芸術家が集まるコロニイの構想もその発想の根底にあったと推測される魅力的な場です。

その場所で、文化芸術の担い手だけでなく、市民の方とも連携し、ヒアシンスハウスと立原道造の「芸術家コロニイ構想」を共有するとともに、現在のウィズコロナ時代に合った文化芸術活動を共に楽しみ、様々な団体や支え育てる人たちと協働し、ネットワークをつくりたいと考えプロジェクトを進めてきました。

2021.10/30-11/7には「サイタマアートコロニイ-記憶のありか」展を開催し、たくさんの方と作品やワークショップを通して、多くの方と対話を重ねました。

そのプロジェクトの集大成として12/5 14:00-18:00(1時間延長)に「これからの文化芸術活動を創造する為の対話集会」を開催しました。

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登壇者と関係者が集まり記念撮影

●第1部
「人々にとってアートとは?そして建築は何故アートに入らないのか?-領域横断的なアートプラットフォームを考える-」

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と題した時間では、

今回の登壇者の紹介を三浦清史(SMF会長)より、行い、プロジェクト主旨説明・実践報告・アンケートの集計報告:浅見俊哉 (SMF委員)・各SMFメンバーからさせていただきました。

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今回の第1部のプログラムの趣旨は、文化芸術基本法で分類されているカテゴリ(建築は分類外)に対して、分類の課題がアートの現場に与える影響について、それぞれの立場から事例を共有しつつ、普段からアートに携わる人だけでなく様々な人たちと、どのような場を今後つくっていけばよいのか、考える機会を設けたいと思いました。

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もともと「ART」は、ラテン語の「ARS(アルス)」に由来し、「技術」や「資格」「才能」といった幅広い意味がある言葉でした。その中の「技術」の意味の中には、「人の手を施して装飾する」という意味があり、そこには医術や建築工学、学問も含まれていました。(この時点では、建築も「ART」の中に含まれていました。)「ART」にはこのように、様々な意味がありましたが、産業革命以降、科学力を駆使して実用的なものをつくる技術を「technology・テクノロジー」とし、「ART」は、装飾や美的なものを創造する技術に対して分けて使われるようになり、本来の意味を狭めていきます。そして、明治期の日本に「ART」が輸入された時、「リベラル・アーツ」は「芸術」と翻訳されました。(リベラルアーツは、「すべての人間が持つ必要がある技芸」とされ、ギリシャ・ローマ時代に理念的な源流を持ち、ヨーロッパの大学制度において中世以降、19世紀後半や20世紀まで、実践的な知識・学問の基本と見なされた自由七科を指します。具体的には文法学・修辞学・論理学の3学、および算術・幾何(幾何学、図形の学問)・天文学・音楽の4科で構成されています。)

日本に輸入された「芸術」は、狭義の意味で捉えられた「芸術観」として、今日に至ります。その中で、地域で行われる芸術祭やアートプロジェクトの現場では、様々な人々の生活の現場で展開されることが多く、狭義の意味での「芸術観」だけでは、その人たちと齟齬や誤解が生じてしまうことが多々あります。そのような現場での経験から、今日に合ったそれぞれの現場での「芸術観」をつくり、前述した「ART」のもつ本来の意味も共有していく必要があると感じています。特に、コロナ禍、文化芸術活動は「不要不急」とされ、人間が生きていく為の活動の「外」のものとして位置づけられてしまった経験を忘れるわけにはいきません。

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まずは、今回のヒアシンスハウスをめぐるプロジェクト(立原道造は建築家・詩人)を通して、現在のカテゴリ、美術館での「芸術観」、芸術祭やアートプロジェクトの「芸術観」、またアンケートに回答してくれた主に公園利用者さん等、それぞれの「芸術観」を共有することから始める必要があると感じました。


プロジェクトを進める上で、様々な人との活動の共有もあり、第1部では5名の方に、話題提供をお願いしました。

実践発表の時間には、
村田行庸氏(建築家 JIA埼玉 前会長)より、ヒアシンスハウス前でのこれまでの建築ワークショップの取り組みとその取り組みの補助金を巡る行政と活動主体との「芸術観」の齟齬について課題を提起していただきました。

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山中知彦氏(新潟県立大学教授 ヒアシンスハウスの会 事務局)からは、ヒアシンスハウスが生まれるまでの思いについて、現存したことのない詩人の頭の中にあったものを現実のものとする「詩人の夢の継承事業」の過程で感じたジレンマや、考えたことを共有していただきました。

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根本賢氏(武蔵野美術大学建築学科4年)は、さいたまトリエンナーレ2016に高校生の時に参加し、今の取り組みに繋がっていること、社会とアートの場の接点をどう設計するのか「アートには建築脳が必要だ!」というキーワードから近年携わった「野良の藝術2021さぎ山の現場Ⅱ「鎮魂と再起」」を主な活動事例として共有していただきました。

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鈴木知佐子氏(ソーシャルパーマカルチャーデザイナー)からは、さいたま国際芸術祭2020に関わった経験と課題をもとに、「アートは難しい、よくわからない」という垣根をとり、誰でも等身大で参加できる展覧会の事例「勝手に埼玉国際芸術祭」とそれを支えることでうまれたアートファンドの取り組みを発表していただきました。

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佐藤達哉氏(埼玉新聞社 編集委員)は、今回の展覧会の記事を書いた中で、これまで美術は美術館でみるものという感覚がどこかで出来ていた。特にコロナを受け、野外での今回のプロジェクトを取材して、様々な人や環境との関係の中での展開に改めて広がりを感じたと、プロジェクトの現場を共有していただきました。(佐藤さんに書いていただいた記事は文末に掲載しましたのでご一読ください。)

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休憩を挟み、

●第2部「これからの文化芸術活動の在り方や役割を再考する」

と題した時間には、

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建畠晢氏(詩人・美術評論家・埼玉県立近代美術館館長)から、ベルギーのゲント市立現代美術館長ヤン・フートのキュレーションで行なわれた展覧会「シャンブル・ダミ“Chambres d’Amis”(仏)」展の事例から、まちおこしとアートの関係について。また国内の芸術祭の事例、文化芸術活動の継続支援事業の経緯を紹介していただき、アートは触媒として機能し、社会の中で生じるアートの力についてその思いを共有していただきました。

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芹沢高志氏(アートディレクター、都市・地域計画家・翻訳家)から、これまで、都市計画をする中で、ながい月日を経て完成へ向かう「計画」に対して感じている何となく割り切れない気分を抱えていたこと(計画を実行するなかで生じる外からの乱れに対する対応や気持ちなど)、仕事をする中で出会ったアーティストとの出会い。問題解決型の収束を主とする「計画」と、問題を発見する・問題提起・問題を起こす、拡散していくアーティストの「計画」の違いから、「アートプロジェクト」という言葉の中にそれぞれの収束と拡散のジレンマとバランスの意識を見出す考えを共有していただきました。

その後、参加者や登壇者との意見交換は活発になり、16:50を終了としていた意見交換の時間は1時間延長されました。

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文化芸術活動は「不要不急」とされ、コロナ禍過ごした経験から、どのようにこれからの文化芸術活動を考えていけば良いのか、今回のプロジェクトを通して様々な人と意見を交換しました。その中で感じたことは、アートは、関わる人がそれぞれ関わり方、感じ方、機能、役割をつくりだすというシンプルな事でした。誰かの目線、立場だけで「不要不急」となるのではなく、その関わり方の幅の広さを改めて概念ではなく実感し、共有する時間からリスタートすることが必要なのではないかと考えていました。こうした文化芸術活動についての意見を交換する時間そのものが「不要不急」とならないように、様々な人たちとこれからも関わりながら豊かな文化芸術活動を創れればと改めて強く感じることができました。

今後取り組みのアーカイブを作成し、来年3月ごろを目処にウェブサイトで公開する予定です。

プロジェクトで実施したアンケート結果は以下でご覧になれます。

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最後になりましたが、ご参加、ご視聴くださいました皆様、登壇者の皆様、アンケートにご回答くださいました皆様に深く御礼申し上げます。


以下に当日配布した資料の一部を掲載します。

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SMF1205プレゼンテーション資料_ページ_14
SMF1205プレゼンテーション資料_ページ_15のコピー
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主催:SMF(サイタマミューズフォーラム)/助成:令和3 年度オール埼玉で彩るプログラム公募地域リーディングプログラム部門/協力:ヒアシンスハウスの会・新木場倶楽部

プロジェクトディレクター:浅見俊哉

プロジェクトコーディネーター:三浦清史

お問い合わせ:smfartnagaya@gmail.com


⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター