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書籍づくりを豊かにする「はじめての体験」

こんにちは、高橋ピクトです。
池田書店という出版社で実用書を編集しています。

実用書には料理や健康、スポーツだったり、ペットや園芸、さまざまなジャンルがあります。

これらの本をつくると様々な体験をすることになります。
ジャンルが広いだけに、それぞれ浅い関わり方ではありますが、その体験は生活を豊かにしてくれます。

私は、そこから得た「できた!」「わかった!」という感動を踏まえて書籍をつくるのが、編集者の役割だと思っています。

今日は、私の生活を変えるほどの体験をした1冊を紹介します。
私は数年前、「週1回のランニングでフルマラソンは完走できる!」という本の編集を担当しました。

著者はランニングアドバイザーの真鍋未央さん。
別の取材時に、真鍋さんに「フルマラソンに出るなら週何回走ればいいですか!?」と尋ねたところ、「1回でOKですよ!高橋さん走りましょう!」と言ってくれたのが企画のきっかけでした。

企画当初、私のランニング経験は、学生のときのマラソン大会程度。30代も半ばで運動不足でしたから、運動のきっかけがほしいと思っていました。でも、本当に走れるのだろうか……? うーん、それでも、これくらいのきっかけがないと変われないだろう、と覚悟をして企画を通しました。

その結果、私を含む6名がフルマラソンを走ることになり、一緒に練習をしながら本を作っていくことになりました。

週1ランは、こんな練習だった!


実際の練習は以下のような感じでした。

本当に走るのは週1回。余裕があればもう1回走ってもOK。
・距離は5~10kmがメイン。長くても20km。
・走らない日は、ストレッチと補強トレーニング(週2、3回)
・練習期間は約3カ月(3月練習スタート、6月が本番)
・練習日誌をつけ、真鍋さんからフィードバックをもらう。
・大会に慣れるために、駅伝大会に出場(20kmを4人でリレー)。

運動不足の身体には堪えるトレーニングでしたが、自分が10km以上走れることにびっくりしたり、自然と食事に気を付けるようになったり、その結果7Kgも減量できたり、自分の心と体に変化を感じることができました。

「はじめての体験」は書籍づくりに活きる


6人のランナーが「はじめての体験」をして、成長や失敗を繰り返しながら、真鍋さんにアドバイスを受けて確実にステップアップしていく。こうして作り始めた書籍は、忙しい市民ランナーのニーズに応える構成になりました。この本では無理をしない練習の組み立て方、意外とゆるいランナーの食事法、ケガを防ぐ体のケアの方法、本番前の準備から、本番でのトラブル対応などを初心者ランナーの目線で解説しています。

で、本番はどうだった? 完走できた?


結論からいうと、参加した6人全員がフルマラソンに完走できました。

でも、、、私は15kmを過ぎたあたりから膝が痛くなり、20km地点では歩いているのとほぼ同じ状態に……。

20~30kmはどのように進むと楽なのかを考えながら、早歩きしたり、軽く走ったりしていました。走り方だけでなく、モチベーションなど、考えを整理する時間だったと思います。記録は制限時間ギリギリの5時間50分。

身も心もボロボロの中で、真鍋さんや仲間たちの「高橋さーん!」「がんばれー!!!!」という応援がどれだけ有難かったことか……。応援されるのは、学生の頃の体育祭以来だったからかもしれません。普段、LINEで「がんばれ!のスタンプ」はもらっても、「がんばれ!の大声援」を受けることなんてないですから、この経験は何ものにも代えがたいものになりました。

私の身体がボロボロになった原因は、オーバーペースでした。
真鍋さんはゆっくり走って、余裕があったらペースを上げようというアドバイスをくれましたが、私は身の丈に合わない目標タイムを設定して最初から速いペースで走り始めてしまったのです。

練習日誌で反省する私に真鍋さんは、
「後半での痛み・・・精神的にも辛かったと思います。そんな中でも気持ちを前向きに進む姿、素晴らしいことだと思います。ここまでの経過や、やってきたこと自信にしてくださいね!」と書き残してくれました。

「これまでやってきたことを自信に」
この言葉があったからこそ、今もランニングを続けていられるんだと思います。

この本が出版されたのは、2013年。
10年たった今でも、週1回、走っています。

今年の10月には、久しぶりのランニング大会に出場しました。
山形まるごとマラソン。種目はハーフマラソンですから、フルマラソンの半分の距離。

今まで、リアルイベントが自粛されてきた中で、ランニング大会もなかなか行われませんでした。私としても、大会に出るのは4年ぶり。しかも、東京から山形への遠征。

どうなるか、正直不安だったのですが、記録は2時間9分。
自分の狙ったどおりのペースで気持ちよく完走することができました。

ランニングに限らず、
書籍づくりで味わう体験を大切にしています。

私は「はじめての体験」を大切にしています。
発見し、失敗をして、成長し、仲間と悲喜こもごもを一緒に分かち合いながら、本を作ります。そうして作られた実用書はわかりやすいものになるし、「わかった!」という新しい発見や、「できた!」という感動が得られると思っています。

編集者としての、私のやりがいのひとつです。

今回の記事は、山形マラソンを一緒に走った仲間が「高橋さんが編集した緑の本、読んだよ!」と言ってくれたことをきっかけに書きました。その仲間と、走るという素晴らしいきっかけをくれた真鍋さんに心から感謝したいと思います。

#ウェルビーイングのために

文 高橋ピクト
生活実用書の編集者。スポーツ書を担当するときは、運動ができなかった学生時代を思い出しながら、できない人に寄り添った本づくりを心がけています。
山形まるごとマラソン、とてもよかったです。山形駅前の賑わい、歴史的な建造物、川沿いの涼やかな景色をめぐるコースで、町の皆さんで応援してくだり、補給食では山形名物のそばや、のし梅も出ました。さらには走り終わったら、芋煮が一杯いただける!その名の通り、山形の魅力をまるごと味わえるランニングイベントでした。


Twitter @rytk84

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