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編集者に必要な法律の知識とは?

「編集者が身につけておきたい15のスキル」の記事にて、実用書の編集者に求められるスキルとして、調査力、文章力、語彙力、プロモーション力などを、それぞれ大まかにご紹介しました。

今回は、その中で「法律力」についてご紹介します。

では、詳しく見ていきましょう。

そもそも著作権とは?

書籍の編集者は、本という著作物を扱う仕事ですから、著作権関連の法律について知っていなければなりません。それが編集者に求められる「法律力」です。

著作権は、知的財産権のひとつで、他には特許権や意匠権、商標権などがあります。

書籍の出版は、著作物を本という形で提供しますので、編集者には著作権が一番大切です。

著作権とは「著作物に対する権利」のことです。
この権利を持っている人は、利用をコントロールすることができます。

自分の書いた原稿で本を出版し、出版社から著作権料を受け取るのはその代表でしょう。

では、「著作物」とは何でしょうか?

著作権法には、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と、著作物を定義してあります。

小説を代表とする文章をはじめ、絵画、写真、音楽、映像などが対象になります。

法律に書かれている「創作的に」という部分が、著作物になるか否か分かれ道です。
ようするに、オリジナリティがあるかないかです。

ですから、小説のようなわかりやすい著作物ではなく、実用書の原稿でも、オリジナリティがある文章であれば著作物になります(「オリジナリティ」の境界線が難しいところでもありますが)。

一方で、単語のような短いモノは著作物にはなりません。

たとえば、「卒業」という本や歌のタイトルは、著作物になりません。そのため、「卒業」という題名がついた本や歌がたくさんあるのです。

ちなみに、アイデアも著作物に該当しません。
たとえば、本や映画の構想自体は、著作物に当たらないということです。

著作者と著作権者の違い

冒頭で触れましたが、著作権は「著作物に対する権利」です。

これには、複製権や上映権、譲渡権、貸与権などがあります。

出版に一番関係が深いのは「複製権」と「譲渡権」で、これは印刷して販売する権利です。本を印刷(複製)して出版するのは、この複製権と譲渡権となります。

わかりやすい別の例としては、音楽のCD。これも複製権と譲渡権に該当します。

このように本を印刷して販売したり、CDをプレスして販売したりするときに、著作権使用料を受けられる人(小説家や作曲家)を「著作権者」といいます。

著作者と著作権者には、次のような違いがあります。

 著作者 = 著作物を創作した人
 著作権者 = 使用料などを受け取ることができる人

通常は「著者 = 著作権者」ですが、じつは著作権は財産のひとつです。
ですから、他の人に売ることもできます

たとえば、自分が書いたオリジナリティがある文章を、出版社に売ることができます。
これが出版業界で「買い切り」といわれるモノです。

この場合、著作者は、著作権という財産を出版社に売ったということですから、出版社が著作権者になります。
そうすると、法律上は何度も自由に使用することができます。
イラストを譲渡したら、別の本に使用することも、著作権者の自由です。

もちろん、著作権を売らずに、使用させて著作権料を受け取ることもできます
通常、その場合は、別の本に使用することはできません。

じつは、このあたりは契約で決まります。
たとえば、著作権を自分に残したとしても、独占契約のような形であれば、著作権者(自分)も、別のところで自由に使用することはできません。

名前をどう表示するかを決められる著作人格権

著作権には「著作人格権」というモノもあります。
著作人格権の代表は、自分の名前をどのように表示するかを決めることができる権利です。

本名で載せるか、ペンネームで載せるか、名前を載せないか、ということを決められます

そして、著作権は売却できても、著作人格権を売ることはできません。著作権を売った後でも、著作人格権は著作者に残るということです。
つまり、売った後でも、自分の著作物であることを表示できるのです。

少し前に、マイケル・ジャクソンがソニーミュージックに著作権を売却したというニュースがありましたが、これがその典型的な例でしょう。

ソニーミュージックは、マイケル・ジャクソンの曲を自由に使えます。
自社でCDを発売してもいいですし、たとえば映画の主題歌として、有償で曲を提供しても問題ありません。
このようなとき、使用料はソニーミュージックに入りますが、その曲にはマイケル・ジャクソンの名前がついています。これが著作人格権ということです。

ただし、著作人格権も「表示しない」といった契約を結ぶことがあります。
その場合、自分の文章であること、自分が作曲した曲であることなどが、本やCDには掲載されないということです。

このときも重要なのは、契約です。

契約は、契約書がなくても成立します。口約束でも成立するのです。
これは民法での規定ですので、ここでも「法律力」が求められていますね。

しかし、口約束は「言った・言わない」と、後々もめる原因となりますので、きちんと契約書という形で契約を結ぶことが大切になります。

著作権には、まだまだたくさんの規定があります。
とくに重要なのが「引用」です。

著作権者には、著作物の利用をコントロールする権利があります。
つまり、通常は、著作権者に許諾が必要となります。

しかし、著作権法の「引用」の規定に沿っていれば、許諾はいりません
つまり、無断で使用してもいいのです。

この「引用」につきましては、次回、詳しくお伝えします。

※この記事は、たぶん正しいと思いますが、私は法律の専門家ではないため、もしかすると間違っているかもしれません。
監修者に入っていただいていませんので、その場合は、ご容赦ください。




文/ネバギブ編集ゴファン
実用書の編集者。ビジネス実用書を中心に、健康書、スポーツ実用書、語学書、料理本なども担当。編集方針は「初心者に徹底的にわかりやすく」。ペンネームは、本の質を上げるため、最後まであきらめないでベストを尽くす「ネバーギブアップ編集」と、大好きなテニス選手である「ゴファン選手」を合わせたもの。

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