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他の人の著作物を無断で使用できる方法とは?

「編集者が身につけておきたい15のスキル」の記事にて、実用書の編集者に求められるスキルとして、調査力、文章力、語彙力、プロモーション力などを、それぞれ大まかにご紹介しました。

前回、その中で「法律力」を紹介しました。
具体的には著作権について解説しました。

今回は、前回の記事で説明しきれなかった著作権の「引用」について、ご紹介します(著作権、著作物、著作権者などの専門用語については、前回の記事にて紹介しています)。


基本的に許諾が必要

著作権は、著作物をコントロールする権利ですから、著作権を持っている側(著作権者)は、他人の使用について決めることができます
使用されるときに、有償(著作権使用料)にするのか、無償にするのか、または利用させないかは、著作権者が決められるのです。

そのため、他人の著作物を利用するときは、著作権者に許諾を得ることが必要です。

そのときに、無償ならよいのですが、有償ならば、その金額に折り合いがつなかければ、利用をあきらめることになるでしょう。

もちろん、利用許諾の条件は、お金だけではありません。
クレジットを表示するなども、コントロールすることができます(著作人格権)。

よく見るのは「©○○○○」といった表記でしょう。

このように他の人の著作物を使用するときは、許諾が必要となるのです。

ところが、許諾が必要とないケースがあります。

代表的なものが、「私的使用」と「引用」です。

例外規定 その1 「私的使用」とは?

著作権者が持つ著作物のコントロールから外れる最初の規定として、まず「私的使用」を紹介します。

簡単に言うと、「自分だけで使う」のであれば、許諾なしで本をコピーしたり、音楽CDをパソコンやスマホに複製したりしてもいいというものです。

ただし、ネットに上げるのはNGです。
他の人が見ることができるため、「自分だけで使う」から外れます。

本をコピーして、友人に配るのも私的使用の範疇を超えると判断されます。

例外規定 その2 「引用」とは?

引用とは、他人の著作物を自分の著作物の中で使用することです。

そして、引用の条件をクリアしていれば、許諾や著作権使用料を必要としないで、他人の著作物を使用できます。
許諾をとらずに、無料で、他の人が創作した著作物を利用できる。つまり、無断で勝手に使用できるのが、「著作権法上の引用」ということです。

「法律上の引用」は、「一般的に使われている“引用”」とは異なります。
一般的に使われている“引用”は、他人の著作物を、自分の著作物に掲載したときに使われるケースが多いでしょう。
これには、「法律上の引用」だけでなく、無断掲載も含まれています。

「法律上の引用」に該当するためには、著作権法上の引用の条件をクリアしていなければなりません。クリアしていれば、無断で無料で使用できる、というのが「法律上の引用」なのです。

「法律上の引用」に合致する条件とは?

「著作権法上の引用」に該当する重要な条件は、まず

 ①明確に区別されているか
 ②主従関係が明らかか

 
の2つでしょう。

①明確に区別されているか

これは、自分の書いた文章が、他人の書いた文章と明らかに異なっていることです。
「ここからここまでが引用した文章です」を明確にすることです。

よく行われているのが、本文よりも字下げを多くし、本文とフォントを変えることでしょう。

このときに注意が必要です。

引用する他人の文章は、原文をそのまま掲載しなければならないことです。

5行分、引用するならば、その5行を一字一句違わずに掲載しなければなりません。「、」や「。」の位置もです。

要約しての引用は、「法律上の引用」の条件から外れてしまいます。

②主従関係が明らかか

これは、自分の文章が主(メイン)で、他人の文章が従(サブ)であるということです。

他人の文章がメインで、それに少しだけ自分の文章がある場合は、問題になりやすいでしょう。

この2つは、引用の条件の中でも最も大切なことです。

ただし、引用にはこれ以外にも条件があります。

それは

 ③出所が明示されているか
 ④引用が必要不可欠か

です。

③出所が明示されているか

これは、出典元を示すということです。

本のタイトル、著者名、出版社名など、引用している他人の著作物をハッキリと表記することが必要です。
明記する場所は、掲載されている近く。同じページ内に記載するのが理想でしょう。

④引用が必要不可欠か

これは、引用する著作物が、自分の著作物の中に必要不可欠かどうかです。

たとえば、本の紹介ならば、この条件はクリアできるでしょう。
ただし、多くの文章を引用した場合、そこまでの量が必要不可欠かどうかは判断がむずかしいところです。
ちなみに、必要不可欠であれば、量の多寡は問われません。

じつは、私はこの条件でいつも頭を悩ませています。
この引用は必要か? これを入れなくても(=別のものでも)成立するのではないか? といった感じです。


以上の4点が引用に対する大まかな条件です。
(もちろん、4つ以外にも細かな規定がありますが、大枠としてこの条件を知っておけばいいでしょう)

4つのすべての条件をクリアしていなければ、「法律上の引用」には当てはまりません。
外れてしまった場合は、無断で掲載できないため、著作権者の許諾が必要になります。

許諾を得ていなければ、無断掲載や無断転載といわれてしまう可能性が高くなります。

最後にもうひとつ。

それは、著作権者の考え方により、大きく異なるということです。

無断掲載された場合、それを訴えるのは著作権者です(出版社も関わります)。

個人がSNSなどで、「法律上の引用」の条件をクリアできず、無断掲載されたことを知ったとしても、何もしない(「著作権法違反ですよ」と注意するなど)著者・出版社は少なくないでしょう。

一方で、人によっては、SNSの投稿を削除することを依頼する人もいますし、場合によっては訴えるケースもあるでしょう。

つまり、個人個人の考え方次第ということです。

これは個人的な考えですが、ポジティブな意見は無断掲載でも問題になりにくいため、あまり気にしなくてもいいのでは? と思っています。
ネガティブな意見の場合は、著作権者が問題にする可能性が大きくなりますので、「法律上の引用」をきちんと守りながらSNSの配信をしたほうがいいと思います。

※この記事は、たぶん正しいと思いますが、私は法律の専門家ではないため、もしかすると間違っているかもしれません。その場合は、ご容赦ください。

※シュッパン前夜の次回の記事は5月10日(ピクトさん)です。


文/ネバギブ編集ゴファン
実用書の編集者。ビジネス実用書を中心に、健康書、スポーツ実用書、語学書、料理本なども担当。編集方針は「初心者に徹底的にわかりやすく」。ペンネームは、本の質を上げるため、最後まであきらめないでベストを尽くす「ネバーギブアップ編集」と、大好きなテニス選手である「ゴファン選手」を合わせたもの。

本づくりの舞台裏、コチラでも発信しています!

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