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映像的な、語り

M専用SMクラブの潜入報告をする宮川大輔、そんな彼の親父からドSパーティーに誘われた宮迫博之の話。

僕あの大阪の方にまだ住んでるときなんですけども。僕寝てましたら、ピンポーンと、大輔が僕のマンションに来まして。宮迫さん。宮迫さんと僕はSだSだと言ってますけど、兄さん本当のSを知るためには、Mを知らなあかんらしいですよと。あー確かに俺もそれ聞いたことあるなぁ、ほんまのSになろう思たら、ある程度Mも経験値に入れとかんとほんまのSにはなられへんというのは俺も、まぁあの風の噂で聞いたことがあると。僕ちょっと調べてきます。実は、この家の近所の、ちょっと行ったところに、SMクラブ、しかも、M専用のとこ、ができたらしいですよと。僕ね、行ったろ思てますねん!て言われて。あホンマか。せやな。お前じゃあ様子見て来てくれ、俺も知りたいわ経験がないから一切。分かりました行ってきます。2日後です。兄さん、行ってきました。僕はやっぱSです!考えられへん!意味が分かんないです!まずね、部屋入って15,000円かなんか払て、その後に正座せぇと言われるんすよ。あ正座せぇ。今から、アタシが女王様のアタシが、お前にオシッコをかけると。ね、膝からずーっとオシッコをかけると。ね、我慢せぇ、言われるんすよ。ふざけんなと!こうね、こう座らされて括られてね、こう正座させられてオシッコをジャー、ジャー、ジャー(膝から徐々にオシッコを掛けられ口元まできたところで)ええ加減にせぇ言うたりました!てほぼゴールやん。十分素養あるよ。十分Mの素養もうあと1センチでゴールゴールゴール。俺やったらもう掛ける言うた時点でふざけんな!で終わってまうけど、お前全然Sちゃうよ言うて。その話をしてたんですよ。ほんならね、大輔くんお父さんと凄く仲がいいんです。ね、でお父さんにね、僕がSやっていう話をいつもしてると。である日ね、あの仕事終わって夜中3時ぐらいですよ、自分のマンションの前にねタクシー停まってるんですよ。あれ?と思て。こんな時間に誰か出勤する人おんのかなと、夜中の3時ですから。んでその運転手さんが、みやさっくーん!みやさっくーん!て呼びかけるんですよ。え?何やろ知り合いにこんな知り合いおらんで。近寄って行って何すか?言うたら、宮川大輔の親父。おお、いつもお世話なってますー。宮迫くん、Sらしいな。ちょっとちょっと待って言うて降りて、後ろのトランク開けて、トランクの下に黒い、何て言うんでしょうそれをバリンッと剥がしたら、ちょっと写真のアルバム的なもんがいっぱい出てくるんですよ。ほんで宮迫くんちょっと待ってや、これや、ピッってね。宮迫くんこれ参加せえへんかって見せられた写真の、クルーザーの先端に裸の女の人が括られて波バッシャー浴びてる後ろで全裸のお父さんがワイングラス持ってたんですこうやって。(顔の横でグラスを回して)宮迫くんこれ参加せえへんかって。お父さん僕はまだこのレベルには達していません。

 

映像的な語り

個人的に大好きな彼の独特な話術。センスの正体は映像でした。


潤沢な台詞の間

多くの語り手は「言うて(言うたら)」「思って」「ほいで(ほんで)」「まぁ」「えー」など、繋ぎのアクション描写や話の休符としてこれらをよく用います。しかし彼はこれを徹底的に排除します。癖なんですね。よって話はとことんシャープになっていく訳で。無駄を省略すると間が生まれるんですが下手な間ではなく役者の間なんです。興味を惹く絶妙な間、まるで落語のような。そして宮川大輔の喋りに対して少し引いた距離とトーンで合いの手を入れていく。ト書きがほとんど無いのも特徴的な要素です。

 時間の飛ばし方

映像編集手法の一種にジャンプカットというものがあります。同様のショットを時間の経過を飛ばして繋ぎ合わせる手法です。例えば「店に入って、出てくる」この2つのカットを繋いで時間経過を省略するもの。なんとなくこれを感じませんか?大きくポンっと飛んではないんですけど、体言止めとか「〜と」の使い方、ワンセンテンスの短さがそれを感じさせるんです。物語を演出しようという姿勢が伝わるんです。

 

物語性 

僕寝てましたら、ピンポーンと、大輔が僕のマンションに来まして。宮迫さん。宮迫さんと僕はSだSだと言ってますけど、

寝てる宮迫→チャイム音→大輔の訪問→大輔の台詞

こういう展開の仕方はすごく映像が浮かびやすい。端的が故にストーリー性が際立つ感じ。宮川大輔の台詞で盛り上がりを演出しながら、ちゃんと反復の合いの手で“冷静な語り手”の立場を守る。

2日後です。兄さん、行ってきました。僕はやっぱSです!考えられへん!(中略)その後に正座せぇと言われるんすよ。あ正座せぇ。今から、アタシが女王様のアタシが、 

 

天然素材的なノリ 

吉本印天然素材(よしもとじるしてんねんそざい)……1991年に吉本興業所属の若手芸人たちで結成されたダンスとお笑いをミックスしたユニット。雨上がり決死隊・バッファロー五郎・ FUJIWARA・ナインティナイン・チュパチャップス・へびいちご。(Wikipediaより)

宮川大輔の悪戯にメンバーが悪ノリする感じ。FUJIWARA原西の屁に火を当ててバーナーみたいにしたり、星田英利の陰嚢に携帯を入れたら圏外になったりと。笑いの許容範囲が広くないと笑えないような飛び級の悪戯で遊び散らかす問題児だらけの素晴らしい彼等。宮迫が宮川の話をするということは絶対このノリがベースにある訳で、大輔がSMクラブに潜入すると言ったとき「確かにMも経験しておかないと」といつものように大輔の欲望にノッたんでしょうたぶん。このふたりを見ているとどこか羨ましくなる。汚いけど美しいブロマンスを感じる。

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