埼玉県虐待禁止条例改正案は何が問題だったのか?

最近、世間を賑わせていたニュースとして埼玉県の虐待禁止条例の改正案をめぐる問題がありました
下記リンクがその改正案です
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/242395/gi_dai25_gou_joureian.pdf

ニュースではだいたい同じように下記のような形で報道されており、そして本日10月10日に取り下げが行われました


さて、この一連の騒動に対して、振り返りも兼ねて、私なりに思ったことを綴てみようと思います。

まず、改正案そのものを見て思ったのですが、ここで主に対象とされている人物は、子供と「養護者」です。
つまり、養護者に該当する人は子供を常に見ておいてくださいねというもの。

この「養護者」がどこまでの人を指すのか(射程範囲)によって話すべきポイントは、いくつか変わってきます。

まぁ、「養い護る者」ですので、親は間違いなく含まれます。
そしてこの言葉が、親のみに限定しているのであれば、あまりにもとち狂った条例です。

まず、この条例では、対象年齢の子供たちのみによる登下校も禁止とのことです。(https://youtu.be/Hepg7j3OUis?si=OVtwolC1WgBgpWFr)
そして、(養護者の監視の元でないと)公園に行く&遊ぶのも禁止です。

この養護者を親のみに限定して使用しているのであれば、登下校や公園に各児童の親全員がゾロゾロと集まって行動するというあまりにも非現実的で、異常な光景を招きます。(というか小さい公園とかだと入りきらないのでは……)

そして経済状況によっては、両親とも仕事ということも想定できますし、片親の場合は、もはや為す術なしです。
これは働かずに居ろということを間接的に指しています。

であるのなら、少なくとも金銭的な支援をしっかり行っていることが前提です。

そこをすっ飛ばして作るような内容の法律・条例では無いはずです。

仮に金銭的なその支援を行うのだとしても、殆ど子供と同じ空間を過ごさなくてはいけないというのは、可能なのかどうかも怪しいです。

人生には、不測の事態というのが付き物です。それは親とて同じです。そういった時に、一時的に子供のいる空間を離れなくてはいけないようなことは、恐らくあると思います。
にも関わらずそれは、虐待だと言われるのであれば、誰も子供を産み、育てようとは、考えません(負担が大き過ぎます)。

いま街中で(ボランティアなのでしょうか?)横断歩道で黄色い旗を持って子供達を見守っている親御さんや地域の方だけではダメなのでしょうか?

これを超えたやり方というのは、管理・監視の目が強すぎだと思います。

私が今回、問題だと思っているのは主に今太字にした管理・監視の行き過ぎという点です。

もし先程の養護者がもう少し広い意味、つまり、成人した年の離れたお兄弟や、叔父叔母、その他親戚と(好意的に)解釈してみても、結局この監視体制が強いことに変わりはありません。

もちろん、子供から完全に目を離せと言っているわけではありません。
しかし一方で、ある程度は親などからの目から離れた環境というのが子供の成長の上で重要だと私は感じています。

そうでなければ、いくら親と言えども、子供にとっては窮屈・閉塞的な状態であり、心的な負担が生じると思います。

今話していることは子供の心理的な側面になってきますので、多少親の目から離れることが、どのような形でメリットになるかは、各人によって異なってきます。

例えばですが私の場合。
私は、小学生のある時期は、校区外に出て遊びに行くことにハマっていました。(当時クラスに仲良しの子がいなかったからです。)
当然、校区外に行くのは親や先生の目が合ってはできない行為です。

ですが、校区外に出ることで、いつも自分が学校で見ている同級生とは全く違う子供達と楽しい交流ができました。

やや誇張した言い方に聞こえるかもしれませんが、この経験によって私の世界は広がったわけです。

いつもだったら出来ないこのある種の異文化交流は、何らかの形で今の私の人格形成に役立っているのでは無いかと思っています。

こういった創造的な逃走を妨げるのが、管理・監視の体制です。
常に見られている……果たしてそれは、子供の心的な成長という観点で見たとき、良いことでしょうか?

子供たちだけの時間というのは、とっても危険で、淘汰すべきものなのでしょうか?

この話を聞いて、伊藤計劃の小説『ハーモニー』で出てくる印象的な話を思い出しました。

『ハーモニー』の世界は、安心、安全、健康を徹底した超管理社会なのですが、その世界ではジャングルジムが存在しません。
子供たちが怪我をしてしまうリスクがあるからです(ジャングルジムに変わる遊具が代わりに設置されてますが)。

安心、安全の名のもとに、奪われたジャングルジム。
このジャングルジムは、何かのメタファーなのかもしれません。

条例の話に戻りまして、当条例は、親御さんへの負担を意味もなく増幅させるのみならず、子供の教育的側面においてもデメリットが大きい、そのようなことを考えた次第です。

そして最後に、そもそも論の話をして終わりましょう。

この条例は虐待禁止条例の改正案ですので、この改正案で虐待が改善されると思っているのでしょうが、そのことに問題があります。

要はネグレクト的な虐待への対策だったのだと思います。
さて、ネグレクトをしてしまう親を子供と付きっきりにさせて大丈夫なのでしょうか?

「子供を放置する虐待がある、なら放置させずにずっと居させる法律を作ればいいんだ」

もしこんな発想で作られたのであれば、あまりにも安直としか言いようがないです。

虐待発生のメカニズムを勉強してから、今後とも別の形で、虐待問題に取り組んで頂きたい、それを願うばかりです。

以上

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