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ハイデガー流恐怖とは何か?

はじめに


こんにちは、こんばんは、コテンです!
えー、先日「恐怖」について哲学的に話してくださいというリクエストを、インスタのフォローワーさんから頂いたので、やってみようかなと思います笑
お時間ある方はお付き合いください!

参照する文献

今回リクエストを受けてから、かなり早い段階でこのnoteを執筆しております。
その理由は超直近で「恐怖」について、あれこれ論じている哲学書を読んだからです!
その本が、ハイデガー『存在と時間』になります笑

『存在と時間』30節(私の読んでいる光文社古典新訳文庫だと4巻の47頁に該当)で主に人間の状態性(=感情)である「恐怖」について分析しています!
ちなみに、なんでこの人は「人間の状態性(=感情)」なんかを分析してるのかというと、この「状態性(感情)」がモノの見方・認識を左右する大きなものだと考えていらっしゃるからです!

そのうえで人間にとって重要な状態性が「不安」だという結論へハイデガーはむかうのですが、この「不安」が何たるかを理解をするうえで「恐怖」の理解が役立つのだ、という文脈で恐怖論が展開されます!
では以下よりハイデガーの「恐怖」に対する見解を見てまいりましょう!

注意:本稿はあくまでも「恐怖」というものを考えるために『存在と時間』を参照しますので、本書を読んでいない人にも伝わるように書きます。故に、専門用語などは基本的に使用せず、少し雑な表現も行います。

「恐れ」に対する三つの視点と考察

本節の冒頭でハイデガーは、「恐れ」は三つの観点から考察可能と主張しています。

①私たちは〈何について〉恐れるかという恐れの対象について
②恐れそのものについて
③〈なんのために〉恐れるのかという恐れの理由について

以下にて詳細!

①私たちは〈何について〉恐れるかという恐れの対象


恐れの対象となるものは、「私たちが出会う」ものです!
なんらかの物であることもあれば、なんらかの生物・人間であったりもします。

では、なぜそれらが〈恐ろしい〉ものになるのか?それは、ある性質が備わっているからです!
その性質が「脅かすもの」であるということ!

「恐れ」(の対象)とは、「脅かすもの」であるという、性格を備えたもの。
この点を抑えたうえで、〈脅かすもの〉であると呼べるものとは、

一.害をなしてくる
二.害の範囲がある、つまり、空間的なもの
三.安心ができないもの
四.対処できる範囲に近づいてこないが、それでも近づいてきているもの
五.接近という性質がある、つまり、遠いものではない
六.その被害を被らないという可能性もある

これが〈脅かすもの〉の条件であり、「恐怖・恐れ」という概念を構築し、対象としているものです!
(メリーさんの怪談は割といい例かもですね)

②恐れそのものについて

何かあるものが〈近づきつつある〉ことを確認してからそれを恐れるのではなく、近づきつつあるものが、それ自身恐ろしいものであることを、あらかじめ露呈させているのである。

ハイデガー著 中山元訳『存在と時間』、光文社古典新訳文庫、四巻、2018、50頁

①でご覧いただいたように、「恐れ」というのは、「空間-距離-近さ」という概念と密接に関係しています!

それに付随して注意点ということでしょうか?
「近づいてくるものが怖い」のではなく、あくまでも、「恐ろしいものが近づいてくる」ということに、恐怖の本質はございます、と!

まぁなので、「恐ろしいもの」が何かということが、あらかじめ露呈されているのが前提にあるわけですねー!
そして、それが近づいてくると、「恐れ」を生じさせるのであると言いたいわけです笑

(つまり、メリーさんが近づいてくるから恐ろしいのでなく、初めからメリーさんが恐いものだと露呈した上で、それが近づいてくるから恐いのだと) 

※主張に循環論法があるように見えますが、ハイデガーは恐らくこれを解釈学的循環だと言って主張の正当化を試みるでしょう

③〈なんのために〉恐れるのかという恐れの理由について


ハイデガー曰く、恐れの理由は、私たち人間自身にあるようです笑
つまり、「人間だから恐れることができるんだ!」ってことを言いたいようです笑

なるほど、物はもちろんのこと、他の動物が「恐れ」という感情を抱いているかは(一旦議論が必要なところだとは思いますが)、無いとハイデガーは考えたわけです!

一応、ハイデガーなりの考えとして、まず「動物」というのは、「存在」というものについて考えることができませんし、この概念もおそらく知らないです。

「存在とは何か?」って考えてる人間以外の動物は、いらっしゃいません!

ところで、恐怖というのは、「私の存在を脅かすもの」です!
私の存在を脅かすから、それが恐怖なので、「存在」という概念を知らない動物には「恐怖」がないよね、っていう考え方だと思われます笑

これは、ハイデガーが直接言及はしおてりませんが、恐らく「私の存在を脅かすもの=生命を脅かすもの」ではないと考えています。

「私の存在を脅かすもの」はもっと広い意味で、これまでの自分の在り様をガラッと変えてしまうようなモノのことを指しているのだと思われます。
(ここは、私の解釈が大きいのでご注意を)

恐れの諸形態

以上のように、「恐れ」こと「恐怖」についてハイデガーの考察を辿ってきましたが、そんな「恐れ」には、色んな形態がありますよとのこと!

本書では、三つの形態が説明されており、①その恐怖に「唐突さ」があるのであれば「驚愕」(例:お化け屋敷の仕掛け)②あまりに親しみのないものであれば「戦慄」(例:心霊写真)③その両方だと「仰天」(例:リアルお化け登場)とあります(例は筆者によるもの)。

他にも「怯え」「懸念」などの恐れの諸形態があるみたいですが、説明はされておりません。
ハイデガーがここで主張しているのは、「恐れ」というのは、様々な形を取りうるものであるということですね!

おわりに

いかがでしたでしょうか?
最後に、これら上記の総括を私なりに記しておきます。

以上の考察を見て分かったことは、「恐れ」という概念には、「脅かすもの」という性格が含まれている点です。

そして、この「脅かすもの」と言いうるための条件を六つ見たわけですが、本書を読んでいなければ、「恐怖=脅かすもの」という思考で終わっていたかもしれません。
いや、それどころか、「脅かすもの」という性格に辿りつくことができていたかすら怪しいですね!
更にそれは、「存在」というものと関わっていたり、様々な諸形態があったりと色んなことが見えました!

「恐怖・恐れ」という「言葉」や「経験」に対する深い解像度での理解が可能になったのではないでしょうか?
言葉・現象・経験などなど様々なことに対して、深く物事を捉えることができることに哲学の醍醐味があると思っていますし、今回の投稿でそれが出来たのではないかと思います!

以上、ここまで読んで下さりありがとうございました!

ご感想等ございましたらInstagramの方にまで!
https://www.instagram.com/koten.book?igsh=MTUyZDZ1YnBnc2xueQ==

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