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炎の魔神みぎてくんのほん

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卓上遊技再演演義シリーズでも活躍するみぎてくん、陽気で元気、食いしん坊でドジな炎の魔神族、みぎて大魔神ことフレイムべラリオスが人間界に留学!相棒コージや講座の仲間と繰り広げるほの… もっと読む
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炎の魔神みぎてくんのほんシリーズ 既刊紹介

陽気で元気な魔神族の留学生「みぎてくん」ことフレイムべラリオスと、相棒のコージ、そして個性豊かな仲間たちが織り成す学園ドタバタファンタジー小説のシリーズです。ここnoteで過去作品を順次公開してゆきます。なお、さきもりのおさ(ジーぽん)以外の作者の作品については公開未定です。 挿絵はさきもりのおさ(武器鍛冶帽子)、竜門寺ユカラさん、烏丸毛虫さんからいただいております。 短編 魔神と油揚げとお嬢様(1999年8月) 卓上遊技再演演義シリーズの短編として書かれました。みぎてく

炎の魔神みぎてくんキットバッシュ 9.「全部塗っちゃうと、精霊力がこもって」

9.「全部塗っちゃうと、精霊力がこもって」  さてエントリーが一応済んだということで、写真を撮ってもらう間コージたちはようやくほかの人の作品を見る余裕ができる。実際ペイントの経験が少ないコージたちにとって、ほかのうまい人の作品を見るというのはなかなか新鮮である。 「やっぱりすげぇなあ、これなんて…」 「すごいですよねたしかに…」  稲妻が鮮やかに描かれた剣を振りかざす勇者のフィギュアを見て、みぎてとディレルは感心しきりである。青白いアークがグラデーションで見事に表現され

炎の魔神みぎてくんキットバッシュ 8.「魂の写真家カフランギです」

8.「魂の写真家カフランギです」  さて土曜日、いよいよ「ホビーショップ・工業惑星第一回フィギュアコンテスト」の作品募集締め切りの日がやって来た。コージ達にとっては頭がいたくなる日の到来である。  模型屋さんの例に漏れず、ホビーショップ・工業惑星の開店時刻は平日なら午後、土日でもお昼である。コージ達は少し早いお昼御飯を済ませて、作品をもってお店に向かった。いつもなら大体二人前は平らげるはずのみぎてが、今日はコージより少し多いくらいの食事量というところが、この魔神の不安感を如

炎の魔神みぎてくんキットバッシュ 7.「こんな平和なイベントなんて、俺さまもおかしいと」

7.「こんな平和なイベントなんて、俺さまもおかしいと」  それからの一月というもの、コージたちは毎晩ディレルの家に集まってはペイント祭となった。まあコージたちにしてみると、ディレルの塗料を使わせてもらえる上に、作成途中のフィギュアを置いておけるのだから、ありがたいことこの上ない。まあ場所代として銭湯に入ってから帰るというのは、すこし汗ばむこの季節であるから衛生上も望ましいし、ディレルの(家族内での)顔もたつというものである。  もっとも毎晩ディレルの家に行くということで、多

炎の魔神みぎてくんキットバッシュ 6.「ここで俺さまたちがなにもしないで帰ろうとしたら」

6.「ここで俺さまたちがなにもしないで帰ろうとしたら」  さて、さすがにこうなってしまうと、コージたちも本気を出してコンテスト用の作品を作ろうということになる。まあとはいえ、コージにせよみぎてにせよ、ペイントに関しては初心者なので「参加することに意義がある」というか「ポリーニの暴走を監視するために参加する必要がある」という状況である。 「みぎてくん、コージ、どう?決めれそう?」 「俺さまは予算内だと…これかなー」  数日後、コージとみぎて、ディレルの三人はコンテストに出

炎の魔神みぎてくんキットバッシュ 5.「みなさん一応…コンバージョンの範囲で」

5.「みなさん一応…コンバージョンの範囲で」  さて、ことがこういう状況になってしまうと、コージたちももう少し積極的に動かざるを得なくなってしまった。もちろんポリーニやシュリの参加を阻止するとか、お店のほうに手を回すとか、そういうネガティブな方法はタブーである。なにせ魔神は今回ネットで注目のキャラなので、下手なことをしようものなら、それこそ(善悪はともかく)晒されてしまいかねない。となると、三人にできることはコンテストに参加しつつ、ポリーニたちのトンでも作品についてこっそり

炎の魔神みぎてくんキットバッシュ 4.「ツブヤキッターで話題になってると報告が」

4.「ツブヤキッターで話題になってると報告が」 「コージ、みぎてくん、どうですか?ネタとか思い付きそうですか?」  翌朝、講座に登校したコージたちは、ディレルの半分困ったような複雑な表情に出迎えられた。一目で昨夜のポリーニのヒートアップで頭がいたかったというのがわかる表情である。 「うーん、昨日は俺さま寝ちまった。けっこう遅くまでファミレスにいたし」 「みきては太平楽だな。といっても俺も疲れてたから…」  実はコージたちは昨日の予想外の展開で、けっこう疲れてしまったと

炎の魔神みぎてくんキットバッシュ 3.「みぎてくん、これで勝負ね」

3.「みぎてくん、これで勝負ね」  さてそれから数日の間は、コージたちは平和な大学生活を送っていた。毎朝講座に通って、実験をしたり、論文を読んだり書いたり、セルティ先生やロスマルク先生のお守りをしたりという感じである。  コージの研究は「魔神族の魔法学的生態」というやつなので、相棒の魔神との生活そのものが研究テーマである。といってもただ魔神のお守りをしていれば済むという気楽な研究のはずはない。もちろん観察や調査の結果をまとめるみたいな研究らしい仕事もあるのだが、一番の作業は

炎の魔神みぎてくんキットバッシュ 2.「これ実は老眼鏡なんです」

2.「これ実は老眼鏡なんです」 「なんだ、ディレルさんのお友だちだったんですか…」 「まあそうなんですけど…ちょっと僕もビックリしましたよ」  店長さんは意外な展開に笑う。どうやら店長さんの言動を聞く限り、ディレルはこの店ではそれなりの常連客らしい。店長が名前を知っているということから考えても明らかである。 「でもおどろいたな、二人がミニチュアゲームに興味があるなんて…」 「今日はじめて覗いてみたばかりだぜ。まさかディレルにばったりなんて、俺さまだって想像してなかった」

炎の魔神みぎてくんキットバッシュ 1.「ディレル、フィギュアとか好きだったんだ…」

1.「ディレル、フィギュアとか好きだったんだ…」  バビロンという街はこの地方では一番の大都会で、歴史もある。旧城壁の内側(旧市街地地区)だけでも人口は数十万人いるし、最近発展が著しい外の新市街地も合わせると三百万人くらいはいるだろう。  もちろん旧市街地は歴史があるところなので、街並みはよく言えば歴史感あふれる、悪く言えば古臭いところもある。コージたちの住む大学町などは典型的で、昔風の下宿とか、定食屋とか、雑貨屋さんが雑然と立ち並んでいる。  とはいえコージが大学町に住む

炎の魔神みぎてくんアルバイト 5.「うさみみがダメ」

5.「うさみみがダメ」  結局コージたちはその日大学を休んで、再び蒼雷神社へと向かうことなった。というか、セルティ先生も一緒に行くのであるから、もうこれは講座丸ごとがお休みというのに等しい。留守番は准教授のロスマルク先生だけである。  コージ達は大慌てで準備をして、大学のグラウンドへと集合した。日帰りで対処するつもりなので、着替えのほうは必要ない(はず)なのだが、結構荷物は多い。特にポリーニは前回以上の荷物を抱えて後者の階段を下りてくる。 「あ、ポリーニ大丈夫か?」 「み

炎の魔神みぎてくんアルバイト 4.「あ、それダメ」

4.「あ、それダメ」  さて、コージたちは蒼雷神社の本殿の隣にある社務所(といっても仮設のプレハブなのだが)で、それから二日間お札づくり地獄となった。実際の作業としては、まず蒼雷から習った神性呪文『お札作成』でお札を作る、それからそれを和紙でできた「蒼雷大明神」封筒に収めて赤い帯紙で封をする、というものである。お札作成の魔法は儀式呪文としてはまあ簡単な部類なので、コージたちのような魔法研究者にとってはさほど大変なものではない。蒼雷の指示通り、墨で古精霊語の文字を並べて念じな

炎の魔神みぎてくんアルバイト 3.「俺が教える。大丈夫」

3.「俺が教える。大丈夫」  さて、ドタバタしているうちにあっという間に金曜日である。大学の講座というものは毎日いろいろあるわけで、残念ながらほとんど準備らしい準備はできていない。といっても実際何をしたらいいのか、詳しい状況がさっぱりわからないのだから準備のしようもない。ただ最低限度一泊二日の旅行装備と、それから雑用のための軍手や動きやすい服や、長靴くらいは必要かもしれないのだが。 「コージ、みぎてくん、講座倉庫見てきたんですけど、全員分の長靴は無いですよ。困りましたねぇ

炎の魔神みぎてくんアルバイト 2.「俺さまが巫女さん?」

2.「俺さまが巫女さん?」  コージやディレルはともかく、この炎の大魔神みぎてすら二の足を踏むポリーニというのは、コージたちの学部では数少ない女の子である。理系の学部で女の子というのは、さっきも述べたとおりにかなり少数なので、それだけでも希少価値がある。が、これもさっき話した通り、「ファッションセンスが変」とか、「メガネっ娘」だとか、「なにかのすごいマニア」だとか、そういうイメージが付きまとうものである。もちろん実際のところ全員が全員そうだというわけではないのは当たり前なの