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【文章作成の基本】一文を短くする矯正術

 私に限ったことではなく、どこの国語の先生も、またどの「文章の書き方」本でも、「一文は短く書きましょう」と注意しています。これ自体は全く珍しい話ではありません。

 しかし、なぜ一文が長いといけないのでしょう。

 それは、「文構成が乱れがちになり、文意の通りにくい文」になるからです。文構成が複雑になることで、主語と述語、修飾語と被修飾語などの呼応関係が乱れがちになり、理解しにくい文になるのです。だから、一文はなるべく短くまとめるようにします。

 『源氏物語』などの、平安時代の文学作品を読んだときのことを思い出してください。あれ、読みづらくなかったですか。「今の時代と言葉や文法が違うから読みづらい」、それもあります。しかし、あの時代の文章が読みづらい最大の原因は、「一文がとても長い」ことにあります。一文が長い文章を書く人は、あの「読みづらさ」と「わかりづらさ」を読み手に味合わせていると思っていいです。

 一文が長くなりがちな人は、二つのタイプに大きく分けられます。「考えすぎ」か「考えなし」かです。

 「考えすぎ」の人は、書いてる間に、「これも言いたい」、「あれも書きたい」、「あれも言わなければ」となってきます。次々と書きたいことがあふれ出してきます。そして、その調子で書き進めてしまうのです。その結果、一文に多くの話題を「マシマシのてんこ盛り」にしてしまい、「二郎系ラーメン」のような文になってしまいます。

 こういう人に言いたいのは、「一文では一つの話題のみ扱うことを徹底しましょう」、ということです。あれもこれもと話題を、一文に「わんぱくに」詰め込まないでください。一つの文には一つの話題に限ること、次の話題になったら次の文に移行することを心掛けてください。

 なお、このタイプの人の文章は、繋辞(つなぎことば)が多いのが特徴です。「~ですが」、「~(し)て」、「~ので」などの接続助詞でつなぎ始めたら要注意。もう話題は変わっています。書き進めずに、そのタイミングで文を切り、次の文に移行してください。

 逆に「考えなし」の人も、一文が長くなりがちです。中高生に多い感じがします。書く気のない読書感想文、書くことの決まっていない作文、でも「宿題を明日提出しないといけない」、「テスト時間終わりまでに書かないといけない」、とりあえず書き始めるか…なんてときに、この「症状」が出ます。書きながら「着地点」を探している、あるいは自分でもこの文章がどこに行き着くかわからない、けれどもとりあえず書く、という状況ですね。

 こういう方には、「まず書くことを決めて、整理して、書き始めてください」と言いたいです。書くことが決まっていなくて書き始めるなんて、何を作るか、レシピも決めずに料理を作り始めるようなものです。「とりあえず鍋に食べられるものぶち込んで、火をつけます(何ができるか知らんけど)!」、そんな料理の作り方、ありませんよね。物事には段取りがあります。何を書くか決めて、その内容をいったん整理して、書き出して欲しいものです。

 また、こういう人の文は、「余分な言葉」が多く含まれていることが多いです。「余分な言葉」にはいろいろありますが、一例あげると、「心情や強調に関わる副詞や形容詞、形容動詞」などです。「とても」、「大変」、「惜しくも」、「すごく」、「すごい」などでしょうか。こういう人の文では、こうした「飾り言葉」が多用されがちです。きっと書くことが見つからずもがいているため、苦し紛れに出てくるのでしょう。しかし、これらの言葉は削っても、全く文意に影響はありません。こうした言葉は極力削り、一文を短くしましょう。

 とはいえ、「一文を短く、と言われても何をどうして書いたらいいものか…」、「では適度な文の長さって何なの?」と思案する人もいるでしょう。もともと書き慣れていて文章をうまく書ける人でしたら、こうしたことに困りませんよね。

 そこで、一文を短くまとめるための矯正術を、ここで三つ挙げたいと思います。

1 新聞を読んで、その文章を参考にする。

 新聞記者は、あの限られた紙面に必要な情報をしっかり収めます。その文たるや、一切の無駄がありません。聞いた話では、新聞記者は、一文を40~60字にするよう訓練するとのこと。そのプロの技術を真似してみましょう。

2 村上春樹氏の本を読んで、その文章を参考にする。

 村上春樹氏の文体は参考になります。アメリカ作家からの影響による、簡潔で平易な言葉遣いが特徴の作家です。読むことで、「適度にわかりやすい文とはどういうものか」が体感できます。小説の内容や世界観が嫌いでなければ、読んでみてもよいでしょう。ただし、物語はやや難しいかもしれません。またこれは、どの小説家でも参考になるということではありません。野坂昭如氏のように、一文がとても長いタイプの作家もいますので、ご注意を。

「そもそも読書が嫌い」、「文章は書くのも読むのも苦手」という方には、こんな方法もあります。

3 Xにポストするつもりで、文章を書く。

 Xにポストするときの気持ちで、文章作成に臨むのはどうでしょう。Xは1ポスト140字以内(全角)です。「弁当食った後の体育。マジでダル。眠くて草。」みたいなポストを、その字数内で投稿するつもりで書くと、自ずと短く書けますよね(オジサンは140字にぎちぎちに長い文を書きますが、中高生などの若者の皆さんはそうではないはずです)。ただ、話し言葉など「正しくない表記や表現」は、くれぐれも避けてください。「今日は昼食の後に、体育の授業がある。しかし、体がだるく、体育の授業に身が入らない。ついには、笑えるほど眠気が襲ってきた。」としっかりとした文章にまとめること(こんな作文、あり得ませんが)。なおLINEだとダメです。あれはチャット(会話)なので、文章作成の練習にはなりません。

 是非、参考にしてみてください。

 ちなみに、LINEが若者にとって文章ではなく会話であるのは、下の記事で書いています。お暇でしたら、読んでみてください。

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