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介護と親子関係。②【介護】

やはり無理だった。

たった半年の介護で、わたしは疲れ切った。
トイレも自分で行けて、認知症もなくて、週2回デイサービスにも行き。
手がかからない方だと思う。
関節の可動域が狭いので、着替えの手伝いは必要だったり、
目が悪くなっていたのでテレビやラジオの選局をしてあげたりはあったが、
食事は、どこに何があるか分かれば自分で食べられた。

毎日、大変な介護をされている人から見たら、
なんて甘いんだと言われる案件だと思う。
しかし、わたしは限界だった。

それはまさに、子どもの頃からの父との関係性が引き起こしたものだった。
父は、自分の不機嫌をわたしだけにぶつけた。
着替えをさせていても、わたしのやり方にことごとく文句を言い、
食事の時のお皿の並べ方がダメだとか、
わたしが普通に話しかけているのに、怒ったような口調が多く、
苦虫を噛み潰したような表情で、しょっちゅう強い口調で、
イライラを遠慮なく表した。

それだって、別に暴力をふるうわけじゃないし、
物を投げるわけでもないし、耐えられると言われればそうかもしれない。
しかし、父から受けるその仕打ちは、子どもの頃から母が亡くなるまで、
父がわたしを傷付けていた振舞いをフラッシュバックさせた。

父は暴力を振るったりしなかったと前述したが、
大酒飲みだった父は、歳を取るにつれて酔うと短気になり、
夕食時にも普段であっても、突然強い口調で言い返してきたり、
うるせえ!と怒鳴ったりすることもあった。
母と私は、酔っている父とは話さないようにしていた。
(定年してからは、酔ってない時がなかったけれど)

そういった出来事は、父に期待をしていなかったわたしにも、
やっぱり辛いことだったし、怖かった。
さらに歳を取り、倒れて弱り、思うように動けなくなったからか、
父はきつい言い方が増え、今や酔っていなくても、
急にイラっとして強い言い方をする。
怒らせないように、いつも気を使っていても当たりが強いし、
いつしか、父と接することが恐怖に感じるようになった。

そして、わたし以外の人には、とても愛想が良くて、
いい人として振舞っているのを見るのも、
悲しかったし、腹も立ったし、傷付いた。
なんでこんな思いをしてまで、介護しているんだろう…。

そして施設へ。

父が施設へ入所して、わたしの心を削る日々は終わった。
結局、施設に会いに行っても私との会話は退屈そうだし、
話しているうちにめんどうになればきついもの言いになるし、
父の言っていることが聞き取れなくて聞き返せば、
だから、〇〇って言ってるだろ!と言い返されるしで、
施設に会いに行くのもちょっと気が重かったりした。

その後、父も施設に慣れて来て、筋肉もついてきて、
体調も落ち着いてきた。
わたしは月に2,3回通院に付き添った。
時々、車に乗せて遠い病院に連れて行って、
広い病院内で車椅子を押すのだけど、
病院でも、車いすの押し方に文句、
クッションを敷いていてもお尻が痛い、
なかなか順番が来ない、早く帰りたい、
ずーっと文句を言っている。
そして、わたしと話す話題もないので、
ずーっと黙って、ラジオを聴いている。
なんだか、針のむしろだった。

なんで、わたしがこんなに気を使って、
機嫌取ったり、優しくしなきゃいけないんだろう。
わたしは、あなたから、愛をもらってないのに。

夫の存在。

ありがたいことに、夫は父を引き取ることに協力的で、
今でも、父の話し相手になってくれている。
わたしは父とは話題はないが、夫は父の興味のあることに関して、
それに関する話題を見つけて来て、楽しませてくれる。
日曜日ごとに施設に行って父の趣味に付き合い、
身の回りのお世話をしてくれる。

父も、段々と夫に気を許すようになり、
娘婿というちょうどいい距離感もあって、
外面もうまいこと使いつつ仲良くしている。
わたしが面会に行くよりも夫が行く方が喜ぶので、
わたしはすっかりお任せしてしまっている。
わたしが行くのは月に1,2回と病院の付添い。
父とは毎日電話はするけれど、以前よりは少し、
わたしにも気を使っているみたいだし、
わたしや夫に感謝をもしているみたいで、
ありがとうと言うことも増えて来た。

このバランスが、今は一番いいんだろうなと、
思えるようになって来ていた。
父がこちらに来て、3年以上が経とうとしていた。

数か月前、またまた父が一命をとりとめ、
今回はダメージがかなり大きく大変なのだが、
夫と2人でなんとかいい方向へ向かえないか、
色々と考えている。
具合が悪くなったことで、また私への当たりは強いが、
やはり見放すことは出来ない、
頑張って生き抜いて欲しいという気持ちはなぜかある。

ほんとに不思議なことだと思う。
親と子の縁というものなのだろうか。

貧乏な歌うたいに、ちょっといいマイクを。 まだまだ子育てにお金がかかるし。自分のためにはなかなか使えない。 でもでも、歌うことは生きること。いい音で録音できたら嬉しい♪ ということで、サポートいただけたら音楽に使わせていただきます。