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落ち葉の唄

ご多分に洩れず、今回もワクチンの副反応にやられています。コロナワクチン4回目の接種となりましたが、前回、前々回同様に接種後11時間きっかりに身体の変調が始まりました。ホント、我ながらこれだけキッチリ反応する自分の身体を尊敬します。もう少し勉強にもキッチリ向き合って欲しかったなと思うほど。


オミクロン株にも効くという新しいタイプのワクチンだったせいか、今回の発熱は39度の壁を越えず、接種部位の鈍痛も極々短い時間で何処かへ消し飛んでしまったようです。さすが新型って感じでしょうか。


4日(金)に有給を頂いてワクチンを接種。土日はどっぷり副反応とお付き合いするつもりだったのですが、意外と熱は高くない。ロキソニン君の手助けもあり、こんなに清々しい秋を自宅で蝉の抜け殻のように過ごすのは勿体無いと感じ始めていました。


自室のベッドから秋空を眺めていると、鱗雲がとっても高いところにぽっかり浮いていて、更にその上を飛行機がすぅっと追い越していく。時折吹き付ける風と共に、公園で遊ぶ子供たちの声が家と家の間を駆け抜けて行く。


「なぁ、ちょっと出かけようか」
「えっ、熱は大丈夫なの」
「あぁ、大丈夫だと思う。農業センターでもぶらぶらしようか」


農業センターと言うのは、自宅から車で5分くらいの場所にあり、市が経営する公園のような施設。勿論無料だ。我が家では、自宅周辺に限り妻が運転手になる決まりなので、僕は助手席にドカッと転がり込むだけ。


「よろしくね!」



FUJIFILM XF 35mm F1.4


農業センターのベンチに腰をかけ、そっと風の音に耳を傾けていると、うっすらと紅色に染まりはじめた樹々に目が移る。青い空と紅色のコントラストが妙に初々しく、柔らかい日差しと共にずっと遠くから降り注いでくる。


アスファルトの傍らに視線を落とすと、昨今染まり始めたばかりの葉っぱが積み重なるように堆積している。こんなに綺麗なのにもう落ち葉になってしまうのか。ぼんやり落ち葉を見つめながら、ふと小学生の頃を思い出す。


校庭の掃除当番に割り当てられる時は、何故か決まって秋か冬。だから自動的に枯れ葉がどっさり溢れていました。あの当時は、落ち葉ではなく、単なる枯れ葉。竹蓑たけみが一杯になるまで枯れ葉を集めて、それを焼却場へ運ぶのです。実際には、枯れ葉集めは女子に丸投げで、僕ら男子は見回りの先生が来た時だけガムシャラになるんだ。だから女子からはいつも白い目で見られていました。


「お前ら枯れ葉集めが上手いなぁ」っていじると、血相を変えて追いかけてくる女子が堪らなく滑稽で笑えた。今思えば微笑ましいですね。未だに枯れ葉を見る度に、追いかけて来る女子の顔を思い出してしまいます。


春には新芽としてキラキラ輝き始め、梅雨や暑い夏を経て深い緑色へと出立を変える。しっかりした陽光、爽やかな風や小鳥たちの囀りと調和を繰り返しながら、やがて気温が下がり始めると紅色へと染まり出す。更に秋が深まると、自らを切り離して次の世代へと思いを託す。この歳になると単なる枯れ葉ではなくなるのです。ちゃんと物語になっているんだと気づくのです。


自宅へ戻る途中、運転手の妻がイライラしはじめました。前を走る高齢男性の運転する軽自動車が、時速20kmで超ノロノロ走行しているではないか。しかし、ナンバープレートの横にはしっかりと落ち葉マーク(もみじマーク)が貼付されている。


「枯れ葉じゃないよ、落ち葉なんだから。ゆっくり走らせてあげようよ」


最後まで読み進めて頂き、ありがとうございました。🍁



FUJIFILM XF 35mm F1.4



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