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新緑、沢と尾根。

この季節のツキノワグマの動向を探るため、連日山に入った。
去年は早々とクマの姿を見たが、今年はまだ一頭も見ていない。
入山前に少し川の様子を見に出かけると、
やや増水気味だが美しい渓相を見せている。
釣りにはよい季節だ。だがでもここはGWでずいぶんと叩かれているはず。
少しルアーを投げてみるが、やはりほぼ反応が無く、すぐに納竿。

場所を変え、クマのいる尾根を目指す。
途中いつもより下流で毛鉤を投げると、ぽつぽつとヤマメが釣れてくれた。
かつて放流された魚たちの子孫か、それともこんなところまで
放流魚が遡ってくるのだろうか…。
いずれにせよこの日の釣果が、僕にとって初めてのテンカラで釣る
天然ヤマメになった。

道東に住んでいた時、いつも目にしたいと思っていた魚はヤマメだった。
それは撮っていて、とても美しい魚であるという理由が大きい。

この流れでこれからも時々出会えるだろう。
次の機会には、きちんと写真を撮ろう…。そう思いながら
釣りもそこそこに竿をたたんで本来の目的地を目指した。

人気の無い谷あいに入る。山はすでに新緑を謳歌していた。
今年の季節の巡りは早い。一週間、ないし二週間ほど
昨年より早い移り変わりが見える。
かといって、動物たちも同じように早いかというと、
おそらく全てがそうだとは限らないだろう。

尾根にとりつくためのチェーンスパイクを履く前に、
足元の流れで少しだけ毛鉤を投げてみた。
脛ぐらいまでの水深、小さな淀みの中からも、ちゃんと魚信がある。
動物の出現を待ってこの沢沿いに待機していた時、
小さな魚影を足下に見つけて、それを眺めていた記憶がある。
だからこの沢筋に魚がいるのは知ってはいたのだが、
手元に釣りあげると嬉しいものだ。

尾根に上ると、下草も少なく、道は緩やかになった。
連日この尾根筋をチェックしたが、
ほとんどクマの痕跡を見つけることができなかった。
まだ早いのだろうか…。わずかな標高の違いが、
植生の季節を大きく変えるこの時期。
まだ断言はできないが、少し待ってみるのも良いかもしれない。

見晴らしの良い場所に出て谷を見下ろす。
いつもの風景だが、細く伸びる、白い流れの筋の中に
無数の小さな岩魚たちが潜んでいると思うと、なんだか微笑ましい。

夕方。下山途中、水深のある場所で八寸のイワナに遊んでもらって
帰途についた。
クマ追いにテンカラ竿。始めてみて既に多くの渓魚に出会い、
楽しい行程にはなってはいるが、まだ一頭もクマを見ていない。

今年はどうなるだろう。この季節の足は速い。
間に合うか、最後まで分からない。
毎年思うことだが、やってみるしかないだろう。






■2018年 5月8~10日 北関東渓流 (曇り・雨・晴れ)
釣果 :イワナ(25cm程度までのサイズ、数尾)、ヤマメ(23cm程度までのサイズ、10尾前後)
ロッド : アルファタックル PSテンカラ超飛330
ライン : テンカラレベルライン 3.5号 3.5m程度
ハリス : フロロ 4lb 1m、ナイロン6lb 1m  毛鉤 : 既製品 #16 ~#14
※ カメラ : Sony α7RIII + SEL24105G

いただいたサポートは、旅費や機材など新しい撮影活動の資金とさせていただき、そこで得た経験を、またこちらで皆様にシェアしていきたいと思います。