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相撲が好きだった母

妻が「お母さんはお相撲が好きだったね」と言った。私は「そうだよね、本当に好きだったね、本場所が始まるといつも大相撲を観ていたね」と答える。

母のひいきは千代の富士だった。昭和から平成にかけての大横綱、ただ強いというだけでなく、力強かった。アンコ型でもソップ型でもない、筋骨隆々とした近代的な力士だった。千代の富士、恐竜に例えれば、ティラノザウルスかな。

介護施設に入ったときに、時々スイーツを持って会いに行って、一緒に食べて、話をした。帰る時間になったら、ホールにあるテレビで大相撲をやっている。車椅子を押してテレビの前まで行き、さようならをすると、笑ったあとは、相撲に釘付けになっていた。そんな様子を見て、私は、少し安心して施設を去った。もうコロナ禍が始まる前のことだから、随分と前のことになる。


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