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人生百年時代に思う

人生百年時代という言葉が作られて久しいが、自分自身の現実とずいぶんかけ離れている感がある。最近はあまり聞かなくなったが、それでもテレビコマーシャルで広告の文句に使われて時々耳にする。

初めて地球にやって来た宇宙人がこれを聞いたら、人間の寿命は百年と誤解するに違いない。日本人の平均寿命は、2022年男性81.05歳、女性 87.09歳で百歳に程遠い。90歳の平均余命は 男性4.14年、女性5.47年で百歳に届かない。しかも、コロナ禍の影響もあるのかも知れないが、2021年から連続して下がっている。

どこから百年が出てきたのだろうか。百歳まで生きられる人がいるからか、人間は、本来、病気や事故に遭わなければ、百歳以上生きられる可能性を持っているということなのか。人生百年時代は、人生上手く行けば百年生きられますよということなのか。いわゆる老衰という診断が下される歳なのか。人生百年時代は、ひとつの夢に思われる。

人生百年時代と聞くと、生き生きと百歳まで生きられる時代だからと、一生働きなさいと励まされているようでもあり、鞭打たれているようでもあり、正に叱咤激励である。しかし、人は誰でも、生きて生命活動を行う限り、老廃物が溜まり、細胞は劣化していく。私を含めて、同年齢以上の人たちで健康保険の世話になっていない人はいない。一般論とされるのは、私には辛い。『人づくり革命 基本構想』(平成 30 年6月、人生 100 年時代構想会議)では「人生 100 年時代を見据え、意欲ある高齢者に働く場を準備する」という。意欲あるが、曲者である。意欲ある高齢者には、一生社会とつながっていたい人、年金では生活が苦しくて働かざるを得ない人、人さまざまだろうが、病気ひとつないと人となるとどれ程だろう。勤労人口減少による労働者不足と年金財源不足を補うための絞り出された知恵のようだ。

やはり、健康な高齢者の増加が最も望まれることである。重い病気を持ちつつ無理して働かなくてはならない社会にはなってほしくない。人生百年時代を見据えた、元気な人生百年を普通に可能にする、平均余命や健康寿命を伸ばす医療を含めた社会の発展に期待したい。



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