読書感想#39 【中村元】「神秘主義と直感的認識」
一般的に知られているように、大乗仏教は、諸々の事象が相互依存において成立しているという論を展開することによって、空の観念を基礎づけました。この考え方によれば、何ものも真に実在するものではなく、あらゆる事物は見せかけだけの現象に過ぎません。
大乗仏教は主張します。実体とは、その真相についていえば空虚なのであり、またその本質を欠いているものである、と。もちろんだからといって、無が実在であるといっているのでもありません。あらゆる事物は、他のあらゆる事物に条件づけられて起こると