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マリッジストーリー/ノア・バームバック


お互いの良いところをたくさんあげられる。どうして好きになったのか、どうして愛してたのか、その理由はわかっていて、一緒にいたくない理由よりも一緒にいたい理由の方が多いのに、でも一緒にいたら自分が自分じゃいられなくなる。お互いを愛していて、だからこそその愛を完璧なままにしようと、自分たちをすり減らしてしまうから。
だから弁護士を雇い、彼らは離れて生きる未来のためにその愛した過去達を使おうとする。そんな事したくないのに、思い出せばすぐそばに感じることのできる愛を汚したくはないのに、彼らにはそれらを差し出すことしかできなかった。

どうしてこうなったんだろう。

言い合いの中で君を愛していた、私の方が愛していたと言った後に「毎朝君なんか死ねばいいと思う」と言ったチャーリーの後悔。こんなこと言いたくないのに、愛してたから愛しているから。本当に嫌いになれればいいのに、離れようとするたびに見えてくるのは自分の嫌なところだった。

段々あなたが愛してくれた自分じゃなくなっていく、段々私が愛したあなたじゃなくなっていく。私が、そしてあなたが変わってしまったわけではないのに。
そう同じように思うからこそそれを理解し彼の肩に触れるニコール。

「矛盾しているけれど愛し続けるだろう。」是枝監督の真実を見て思ったことだけど、結婚や、家族の形はやっぱり曖昧な日常の積み重ねだと改めて思った。
愛してるから結婚して、その形を誰も崩したくはないのに、積み重ねれば重ねるほどそれらは危うげで、ひとつバランスを崩せば倒れてしまう。
けれど倒れても、夫婦という形ではなくなったとしてもその日々が無くなってしまうわけではない。お互いの素晴らしいところが無くなってしまうわけではない。でも一緒にいたらお互いのその素晴らしいところが無くなってしまう、見えなくなってしまう。だから二人は離れる。守るために。それを愛だと言わずになんだというんだろう。離れても存在する愛を否定する権利なんか誰も持ってない。

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