機会があって、阿部共実先生の「ちーちゃんはちょっと足りない」を読みました。阿部先生大好きだけど鬱を前面に出してくる彼の作品は苦手で、「ガラグロガラゲロ」とか「潮が舞い子が舞い」とかギャグ寄りの作品でギャグセンスの高さと常人には考え付かないようなワードチョイスを楽しんでいたのですが、さすがに代表作を読まずに阿部共実先生のファンを名乗るのは失礼に値するだろうと感じ、怖かったけど読んだ。
実は昔、小学生とかの時に1回読んだことがあって、僕が幼稚ゆえに純粋だったため、浅ましいナツの考えが理解出来ず、距離を置いていた。あとシンプルに描写(曇らせの時にキャラを全体的に黒く塗りつぶすなど)と内容の進み方が不気味だった。
しかし僕も歳を取り、浅ましくなってしまった今、ナツの考えが痛いほどわかる。
今回初めてどういう内容か理解したのだが、衝撃的だった。
進もうとする周囲(ちいちゃん含む)と、精神的に弱く、自分を責め変化を恐れるも、どこか自分を正当化しようとしているナツ。小学生のように純粋なちいちゃん。
ナツは事件から自己嫌悪に陥り、進めない自分を呪うが、結局自発的なちいちゃんの成長を止め、二人の世界に閉じこもり現実から逃げるという最悪の方向に逃げてしまう。ひえ～恐ろしい。

これは格差の問題でもある
格差社会の被害者であるナツが、盗んだ(ナツは直接盗んでないけど)金を使って"普通"を望むことは悪なのか?
資本社会によって作り出された格差を是正するために当事者が恵まれた人から強奪する行為は正当化されるのか?というお話である

この手のお話では、日本で資本主義というテーブルに乗ってる以上全員ポジショントークなので答えは無いと思うが。
自分なりの答えは「倫理的にはなんとも言えないだが社会的にはアウトである。」だ。
いやこれ答えになってないか
倫理的になぜなんとも言えないのか解説すると、現在のシステムは、みんなが少しずつ幸せになるために、少数のの不幸な人間を(精神的かつ相対的なものであり、僕は資本主義によってその被害者も 物質的には豊かになったと思う)
相対的に"恵まれた"人間を対象に行われる強奪。
これは明らかに善ではないが、恵まれた側である我々が批判することは難しいと考える。
なぜなら批判したところで結局恵まれたやつの意見でめちゃくちゃポジショントークなのだ。

だが、もちろんこんなことを許容しては社会が崩壊する。そのため、強奪行為の取り締まりのため、個人の自由のために個人の自由を縛る人類最強の発明、法が存在する。

なので僕はニュースレポーター当たりが言う「許せません。極悪非道な犯行。反省させるために禁錮にしろどうたら」みたいな言説に賛同できない。
当事者じゃない人間が何言ったところで"恵まれた側"の意見である

もちろん罪を犯せば逮捕されるべきだ。だが、芸能人様が個人の感情を持ち込み、倫理的理由から断罪されることを良しとするような風潮を公開電波で流すのは、いかがなものかと思う。

社会システムの崩壊を防ぐために制裁を加える(見せしめの意図もある。)のは、司法の仕事である。
シンガーソングライターとか自称社会派芸人の仕事では無い。

一方を絶対的な悪と決めつけ、の方が見てて気持ちいいのは分かるし、これを解決する手だてはないけれど。
ネット上での私刑、いわゆるネットリンチが増えたのも、上記のような芸能人様がこのような風潮を作り出したからだと考えている。

そもそもあの事件に有名人がコメントするみたいなコーナー、必要か？
あれって人が死んだのをドラマのように勝手にストーリーを持たせ、一つのコンテンツとして消費するものじゃないのか。めちゃめちゃ趣味悪くないかそれ。
もしあの5分ぐらいで建設的な議論ができるのならその道のプロになって、日本をよりよい方向に進めてほしい。結局やるのは意味不明な素人の推論によるである。
一般人の意見を入れることでとかだったら明らかに芸能人使う必要がない、芸能人って一般人の対義語ではないか。どうしても一般人16歳、ひねくれオタクの俺を使え。

あとTSUTAYA、いつもめっちゃ金使ってるとはいえ、立ち読みしてごめん。
次来た時はアニメ借りるね。