見出し画像

麻婆豆腐に合わせるワインはこれだ!

中国料理のレストランというと、紹興酒や中国茶を飲むイメージは強いですが、それ以外の飲み物の存在感は希薄なことが多いものです。そんな中、四川飯店グループで、ドリンクにとても力を入れているのが「スーツァンレストラン陳 名古屋店」です。同店の副支配人であり、ソムリエの資格を持つ井上慎平に話を聞きました。

ースーツァンレストラン陳 名古屋店では、特にワインに力を入れていますね。「四川料理とワイン」と聞くと、意外に感じるお客様もまだいらっしゃると思います。どうしてワインに力を入れるようになったんですか?

井上:僕自身がソムリエの資格を持っていますし、何よりワインが好きだということが前提としてあります。ただ、今の質問の通り、四川料理のレストランとワインとの間には、お客様の心の中でまだ距離があります。でも、そのことは裏返せば色々と提案できる余地があるということでもあります。決してワインだけを売っていこうということではありませんが、世の中にはワインが好きな方も多いので、お客様を見てお勧めするようにしています。

ワインが大好きなソムリエの井上慎平副支配人

ーボトルではなくグラス売りにも力を入れているのですか?

井上:今は、泡、赤、白、それからオレンジワインやそれに類するものを、それぞれグラスでご用意しています。ただ、メニュー上ではボトルの表記しかないものでも、お客様からリクエストがあれば、可能な限りグラスでもお出しするようにしています。そうやって封を切ったワインを他のお客様にどうお勧めして飲んでいただくかは、僕らサービススタッフの腕の見せ所でもありますね(笑)。

ーお客様からの反応はいかがですか?

井上:ワインにはかなり力を入れているので、店のイメージとしても、だいぶ浸透してきました。おかげさまで、うちの店にワインを持ち込んで、ワイン会を開催していただくようなこともあります。それから料理とワインのペアリングをお願いされることも、ちょくちょくありますよ

ーワインと四川料理の相性という点がとても気になるのですが、合わせ方を教えてもらえますか?

井上:例えば、四川飯店の代表的な料理のひとつに、オリジナルの「青椒牛肉絲(チンジャオニウロウス)」があります。昔ながらのクラシックなタイプもありますが、こちらは低温調理をしてまるでローストビーフのような牛肉と、切り方にこだわってシャキシャキした食感のピーマンが楽しめるモダンな一皿です。このお料理には、フランスのロワール地方のソーミュールシャンピニー、ちょっと酸味のあるカベルネ・フランがすごく合いますね。

モダンスタイルの青椒牛肉絲

井上:他にも「宮保鶏丁(ゴンバオジーディン)」という、いわゆる鶏肉とカシューナッツの炒めものも定番料理ですけれど、この甘酢ベースの味わいには、イタリアの熟成した白ワイン、ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノがピッタリです。

宮保鶏丁


イタリアの熟成白ワイン、ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノ

「干焼蝦仁(カンシャオシャーレン)」のようにチリソースの味わいには、ロゼワインもいいですね。あるいは、ゲベルツトラミネールみたいなビターなアロマティックのものも面白いです。それから、今のコースでは「樟茶鴨子(ザンチャーヤーズ)」といって、俗に「四川ダック」とも呼ばれる料理をお出ししています。うちでは低温調理のスモークダックを使うんですが、これにはピノ・ノワールが抜群に合います。えーと、他にもですね...

ーす、すみません。四川料理とワインとで色々な組み合わせが楽しめるのは十分にわかったんですが、あいにく私はそれほどワインに詳しくないもので、何を言っているのかよくわかりませんでした(苦笑)

井上:これは失礼しました!思わず、熱く語ってしまいました。。。いずれにしても、ひとつ言えるのは、四川料理もどんどんモダンになっていく中で繊細な味わいのものも増えているので、ワインとの相性もとっても良いですよ!

ーちなみに...麻婆豆腐に合うワインって何ですか?

井上:(ギクッ!)麻婆豆腐はですね...実は、なかなか難しいんです。何と言っても、かなりパンチのある味わいですからね。ただし、合わせるならば、まずはイタリアのカベルネで樽香のあまり効いていないものですね。あるいは、口の中をリセットさせるという狙いではメルローのロゼがいいです。これだと口の中の脂を切ってくれます。

ーやはり麻婆豆腐とワインの組み合わせは、なかなか難易度が高いんですね。

井上:ひとつとっておきがあります。「酒精強化ワイン」って聞いたことがありますか?シェリーとかポートワインとかが代表ですね。ポルトガルの酒精強化ワインに「モスカテル・デ・セトゥーバル」というものがあるんです。この20年物がありまして、それに氷を入れて炭酸で1:1で割るんです。もちろんそのまま飲んでも素晴らしく美味しいので、氷で冷やしたり、炭酸で割ったりするのはちょっともったいない気もするんですが、でもそれが麻婆豆腐にぴったり合うんです。程よい甘さと冷たさが、麻辣で満たされた口を優しく癒やしてくれます。

ー確かに適度な甘さがあると、ヒリヒリした口をリセットしてくれそうですね。

井上:モスカテル・デ・セトゥーバルには5年物や10年物もあるんですが、それだと甘みが勝っちゃうんです。麻婆豆腐の旨味に立ち向かうには、やっぱり20年物なんですよね。まあ少しお値段も高くなりますが、その価値は十分にあると思います。

ポルトガルの酒精強化ワイン「モスカテル・デ・セトゥーバル」

ー四川料理とワインのマリアージュ、とても興味深いですね!次回は紹興酒やソフトドリンクについても聞いてみます。お楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?