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世界人口1億人計画

ロシアの新聞のサイトからちょっとした記事を紹介するシリーズです。

いつものことだが、拙いロシア語レベルで太刀打ちできる都合の良いニュース記事を探し出すのに苦労している。

今回は『プラウダ・オンライン』(Pravda.ru)のサイトから。
ざっと目を通したところ「不穏な気配」が漂うインタビュー記事があり、興味を惹かれた。
これはいったいなんだろうと思いながら、以下に訳してみた。
一部訳しづらい部分があり、分かりにくいと思うが(これもいつものことだが)ご容赦いただきたい。

なお、『プラウダ・オンライン』は、もともとソ連共産党機関紙の『プラウダ』が起源であり、ソ連崩壊後に枝分かれして、現在のロシア連邦共産党機関紙の『プラウダ』とは別のオンライン・メディアとして独立したようだ。

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https://www.pravda.ru/economics/1853688-sokrashchenie_naseleniya/

専門家が語る、この惑星の住人を1億人まで減らす方法

この地球上に暮らすべき人口規模は、70億や80億ではなく「黄金のすぐれた10億」であるという考えは、すでに長い間世界中のエリートたちが主張しているものである。
この考えはどこから生まれたのか、それを実現するためにどのような方法が計画されているのか、そして「温室効果」が恩恵となるのはなぜか?
『プラウダ・オンライン』編集主幹のインナ・ノヴィコワに、財政アナリスト、エコノミストであり社会活動家でもあるアレクサンドル・リジャヴァ氏が語った。

――アレクサンドル・ワレーリエヴィチ、私は以前ワレンチン・ユーリエヴィチ・カタソノフ氏と対談したことがあるのですが、彼は、国境を超えた秘密組織が「黄金の10億」計画を推進していると言いました。最近あなたが発表した論文でも、世界的なエリートたちが人口の縮減のための研究を行っていると述べられています。このような考えはどこから生まれてきたのでしょうか?

「トマス・マルサスは200年前に初めて次のような考えを公表しました。地球上には人口が多すぎる。これらのすべての人々をこの惑星が養うことは不可能だ。したがって人口を減らさざるを得ない。この概念は多くの「卓越した人びと」によって展開され、例えばトマス・ハクスリーを初めとするハクスリー一族がいます。トマスの孫のジュリアン・ハクスリーは、英国優生学協会の会長を務めました。ジュリアンは、優生学トランスヒューマニズム(超人間主義)」と改称しました。というのも1940年代にドイツ人たちが優生学の概念を汚してしまったために、もはやその言葉を使うこと自体が醜悪となったためです。このプロセスは様々なレベルでゆっくりと進行し、この分野の研究機関全体が同じ方針で活動するようになりました。

最近私が出会った興味深い論文の趣旨は、もはや「黄金の10億」が問題なのではなく、地球は原初の「未開な」状態に戻らねばならないのであって、その場合10億はあまりにも多く、1億で十分であるというものでした。

200年間にわたりエリート層を悩ませた問題は、それ[人口の縮減(訳注)]をいかにして最も効果的に行うかということです。マルサスが感染症エピデミックを問題解決のためのありうる答えと見なしていたとすれば、H.G.ウェルズを含む後の世代の代表者たちは生物兵器や化学物質を考えていました。

西側のキャンペーンはLGBT、性別の変更、注射による避妊法などと結びついていて、これらはすべて人口を縮減するという目的にそったものです。

既に1930年代に、貧困層の人々が子どもを産まないようにするために化学的方法を用いることが提案されています。この際に、そのような医学的措置に同意する者たちは、生涯にわたる生計を社会の費用負担で保証するとされました。」

――かつては、人口規模の調整は自然に任されていました。人々は、際限のない戦争や、度重なる病気、劣悪な衛生状態によって命を失っていました。生まれるのが10人から15人ならば、生きのびるのは1人か2人だったのです。今や医学が目覚ましい発展を遂げ、人口は急激に増加しています。

「人口がさほど多くないうちは、人びとにとって自らを養うことは容易でした。さらに科学技術の発展に応じて、土壌の肥沃度は高まり、新たな土地も開拓されてきました。このため、最新の方法を用いれば、昔に比べてはるかに多くの人々を養うことが可能です。

そのことと、人口の縮減のために最も効果的な方法は何かというのは別の問題です。

・戦争
・飢餓
・疾病
・自然変動

しかし、人間は自然変動に対しては影響を及ぼすことができません。顕著な例が、1600年代の初頭、ボリス・ゴドゥノフの時代に起こった飢饉です。地球の反対側の南アメリカの火山の噴火が世界的な気候変動を引き起こし、何年にもわたる飢餓をもたらしました。

今は二酸化炭素や窒素による大気汚染を削減しなければならないと叫ばれています。しかし、人類が総がかりで挑んでも、中規模程度の火山の爆発で噴出するほどの量の塵や硫黄ですら生み出すことはできませんし、二酸化炭素で大気を汚すことなどできません。

さらに言えば、最も生産性が高かった時代は、大気中の二酸化炭素の量が増加したときであったことが分かっています。気候はより温暖であり、植物は著しく繁茂していました。ですから「温室効果」が悪いものだとは言えないのです。多くの西側の学者たちは、彼らが語る「意義のあること」の対価として報酬を得ています。ところが、その内容は客観的なデータに反しているのです。」

『プラウダ・オンライン』2023.7.5(2023.7.10更新、全文訳、強調部分は原文のとおり)

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若干のコメント

結局、なにが言いたいのかよく分からない記事なのだが、テーマとしては、どうやら世界的に秘密裏に進行している(らしい)人口削減計画が取り上げられているようだ。

最初に紹介したような、いちおう「由緒ある」来歴を持ったオンライン・メディアが、そのような真偽のほども分からぬキワモノめいたテーマを大真面目(?)に扱っていることに驚いたし、西側のLGBT運動の目的が実は人口削減であるなどという突飛な発言にも驚いた。

しかし、何より驚いたのは、温室効果ガスによる人為的な気候変動という今日の大問題を、いわゆる「専門家」がいともあっさりと否定し去ったことであり、それが当たり前のように掲載されていることだ。
世界中で連日のように、何十年に一度、何百年に一度という異常気象、極端気象が頻発し、大災害を引き起こしている近年の現実をどう考えているのだろうか?

念のために言えば、ロシアは温室効果ガスの排出削減のためのパリ協定の参加国である。その事実については、外交上の「おつきあい」の範囲内程度にしか考えていないのだろうか?

英語版のウィキペディア情報によれば、『プラウダ・オンライン』はしばしば「タブロイド新聞スタイル」のセンセーショナルな見出しで物議をかもしているらしいので、この記事もただ奇をてらって、読者の注意を惹こうとしただけなのか?

いずれにせよ、この記事の論調は「普通の日本人の常識」に照らせば、非常識以外のなにものでもない。
もし、このような記事を読んで少なからぬロシア人が納得し、共感するとすれば、彼らはわれわれにとって「非常識な人びと」であると言わざるを得ない。

しかし、ここでハタと考えるのだが、逆にそうしたロシア人の視点から見れば、このような記事を「馬鹿馬鹿しい」と一蹴する普通の日本人こそ「非常識な人びと」ということになるのかもしれない。

記事の最後に「西側の学者たちの語ることは客観的なデータに反する」という指摘がある。この言葉は、「客観的なデータ」として何を取捨選択するか、どのようなデータを採用するかによって、導き出される真実が正反対になることもありうるということを、図らずも示唆しているように思う。

ひょっとしたら、われわれは、ただ単に、自分たちが属する集団なり社会なりで最も多くの者に支持されている「常識」を「真実」とみなしているに過ぎないのではないか。

つまり、住む社会や国が違えば「常識」も変わって当然だということだ。

さらに、ひとつの社会なり国家が、必ずしも共通の「常識」でまとまるとは限らない。ひとつの国家の中で正反対の「常識」を掲げる二つの陣営が真っ向から対立する状況は、しばしば「分断」と呼ばれる。

気候変動対策の例で言えば、アメリカの民主党支持者と共和党支持者の主張は対極的な傾向に二分される(トランプ前大統領が就任早々パリ協定の離脱を宣言したことは記憶に新しい)。
人工妊娠中絶や銃規制に対する立場も同様だ。

そうしてみると、われわれがふだん疑いもなく「常識」と考えていることが、間違いなく「常識」であるのか、なぜそう言えるのかという問題は、実は案外厄介で、一筋縄ではいかないものであるように思えてくる。


……それにしても毎日暑い!
やはり人為的な気候変動という大問題は決して見過ごせない。
せめてこの問題については、全世界が「常識」と「危機感」を共有してほしい。

猛暑の夏に切にそう願う。







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