カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
『わたしを離さないで』(原題:Never Let Me Go, 2005)を読んだのは初めてではない。
いつだったか正確には覚えていないが、かなり前に一度読んだことがある。
詳細な内容はほとんど忘れてしまっていたが、どういう人たちについての話であったかは、もちろん覚えていた。
今回、わたしはこの小説を、「初めて読むかのように」戦慄しつつ再読した(土屋政雄訳、ハヤカワepi文庫)。
主人公は、三十一歳の女性キャシー・H。例によって「一人称の語り」で、過去の記憶を回想する形式