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フィンランドで見つけた素朴で確かな幸せ

この間の週末何してたかっていうと、デザインの学生がやってるマーケットでハンドメイドのアクセサリーやオーナメントを眺めて、ワップの後のキャンパスのゴミ拾いのイベントに参加して、そのアフターパーティーでビール片手にバーベキューをしてサウナに入って、友達とラーメンを作って食べて、寝た。
つまり、マーケットに並ぶ繊細で美しい雑貨に癒やされて、晴天の春の森の中でのゴミ拾いで心身ともにリフレッシュして、そのお礼でサウナに入ってちゃっかり美味しいマッカラ(フィンランドでバーベキューで焼いて食べる太いソーセージ)とビールまでもらってちょっと得した気分になって、ありあわせのものでも友達と作ったラーメンが美味しくて、サウナでできあがったおかげでベッドに入った瞬間に深い眠りに落ちた、そんな1日。

つまり、とてもラッキーでハッピーで幸せだった1日。

ところで、ふと考えてみると、この日は私は一銭たりともお金を使っていないし、どこか特別な場所に出かけたわけでもない。特に予定がなかったから、その日たまたまたキャンパスでやってると聞いたイベントにフラ〜っと出かけただけ。

東京に住んでたときのことを思い出すと、時間のある週末はSNSで話題のレストランや新しくオープンしたレジャー施設・商業施設に行って時間を過ごすことが多かった気がする。
そして当然だと思っていたこのことが、もしかしたらものすごく特別なことなのかもしれない、と気付いたのはフィンランドに来てから3ヶ月くらいたったときのことだったと思う。正直ヘルシンキには出かける場所の候補がそんなになくて、週末に出かけるのに「もう行く場所ないわ、ヘルシンキ飽きてきた…」と思ったことは一度や二度の話ではない。
そのとき、東京の文化的、娯楽のための施設やサービスはとんでもなく充実しているのだと気付いた。東京にはそもそも無数の飲食店やレジャー施設や歴史的な観光地があるうえ、飲食店が限定メニューやSNS映えする新商品を次々と販売していたり、商業施設でも毎週のようにイベントやキャンペーンが開かれていたりと、20年間暮らしていても飽きたなんて感じたことがないくらい、いつでも新鮮な刺激に溢れている。
だから東京ってやっぱりすごいところで、外国人の友達にI'm from Tokyoっていうとみんな目を輝かせて「いつか行ってみたい!」と言ってくれる理由も分かるなと納得した。そしてそれと同時に、ヘルシンキは留学で1年間しか過ごしていない私ですらすでに飽きてしまっているのに、ここで長年生活しているフィンランド人は一体どう思っているのだろう?と疑問に思うこともあった。

そしてこの間の週末、その答えに気付いた気がする。
きっと彼/彼女らにとっては、いつもと何も変わらなくても、自分が好きなことをしてのんびりと過ごせれば、それが幸せな時間なのかもしれないと。毎週のようにレストランやカフェの新商品を食べに行ったり、新しいレジャー施設に行くことにはそんなに興味がなくて、むしろそんな暇があるくらいならのんびりしようぜ、くらいの感じなのかも知れない。
確かに振り返ってみると思い当たる節は他にもあって、例えばフィンランド人の友達は、毎年夏になればコテージかボートの旅、冬になればスキーに行ってそこでひたすらのんびりと休暇を過ごすのだそう。日本人の私からすると「せっかくヨーロッパに住んでるのに他の国に旅行とか行かないの!?」と思ってしまうけど、きっと彼/彼女らにとっては海外に行って有名な観光地をあくせく回る休暇より、行き慣れた地で森と湖に囲まれてひたすらのんびりする休暇のほうが幸せなのかもしれない。

別にどちらに優劣をつけるつもりはなくて、結局は好みとか価値観の問題なんだと思う。実際同じアールトにいた友達で、ヘルシンキより東京の方がご飯も美味しくて遊ぶ場所もたくさんあって断然魅力的!と言って今東京に絶賛留学中の友達もいる。フィンランドのこういうのんびりしたところが好きな私だって、ちょっと飽きてきたし東京に帰るの楽しみだな〜と思ったこともある。

でも、少なくともフィンランドのそういうのんびりした週末で満たされた感覚を経験してみて、東京の暮らしを突き詰めるとどこかで"空虚"さにたどり着くのかもしれないと思った。
確かにおしゃれをして電車に乗ってイマドキな場所に行ったり美味しいものを食べに行ったりする週末は楽しいけれど、今になって振り返ってみると、それでものすごく「満たされる」気持ちになったことはあまりなかった気がする。たぶん東京にある楽しさは誰かが私たちを楽しませようと意図的に作り出しているものに楽しませてもらっているのに過ぎなくて、だから心から満たされた気持ちになるのは難しいのかもしれない。しかも楽しませてもらうのにはもちろんお金が必要で、そのためにもっとバイトしなきゃ、稼がなきゃ、って、結局満たされるどころかむしろさらに欲求が掻き立てられていた気さえする。

だからそんな欲求を掻き立てられることなく、新しい特別な何かをするでもなくただただ友達と何かをするだけで楽しいと感じたフィンランドでの週末の1日が、私にとってはとっても満ち足りた幸せな時間に感じられたのかもね。

改めて語弊のないように言っておくと、東京の楽しさを否定するつもりはなくて、むしろ留学に来て外から東京を見たからこそ、いつでも私たちを楽しませてくれる東京の凄まじさに改めて誇りを感じている。でも同時に、誰かにお金を払って楽しませてもらわなくても幸せでいられるフィンランドの暮らしを経験してみて、東京みたいな楽しみ方"だけ"が幸せになる方法じゃないんだなあって気付いた。
よく「留学してみて、フィンランド人って本当に世界一幸せな国だと思った?(注:フィンランドは6年連続で世界一幸せな国に選ばれている)」って聞かれるけど、そういう意味でやっぱりYesともNoとも答えるのは難しい。東京とフィンランドの楽しさや幸せの尺度はあまりにも違い過ぎる。
でも、こんな幸せもあるんだなあってことを肌で感じて気づけたことがフィンランドに留学したことで得られた貴重な気付きの一つだし、そういう幸せを見つけたよってことを東京に帰ってからも忘れずに、ちょっとずつ周りにも伝えていけたら良いなって思います。

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ま、サウナで良い感じにお酒が回ればオールハッピーみたいなところはあるけどね。

読んでくれてありがとう!Kiitos!

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