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ワーホリの話26

こんにちは、しんやです。


ブリスベンから飛行機で3時間ほど。ついにシドニーへやってきた!

シドニー中心部、セントラルステーションに到着

シドニーに来る前に仕事の面接を1件だけ予定していたので、それまではゆるりと観光することにしようと思う。

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そして、3月3日の土曜日。

街を歩いていると、レインボーの国旗がやけに目に付くことに気づいた。

旗には「YES! WE DID IT!」とある

調べてみると、今日3月3日は「Sydney Mardi Gras(シドニーマルディグラ)」と呼ばれるイベントがあるようだ。正式名称「Sydney Gay and Lesbian Mardi Gras(シドニーゲイアンドレズビアンマルディグラ)」なのだと言う。LGBTQIによるイベントのことであり、大規模なパレードが行われるとのこと。
“マルディグラ”という言葉自体は、フランス語でパレードなどが行われるカーニバルの最終日を指す言葉だが、ここシドニーではそれをLGBTQIに特化し、パレードを含めた音楽ライブや芸術作品の展示会、パーティーなど付随したイベントが多数行われている。
そして今日では、シドニーにおけるビッグイベントの一つに数えられるようだ。

パレードは19時から23時までで、街の中1〜2kmほどの距離でパレードが行われるのが分かったので、そのタイミングに合わせて見にいくことを決めた。

会場のパレードが行われる通りに行く途中でLGBTQIの象徴でもあるレインボーフラッグを掲げた多くのバイカーたちに遭遇した。
『イベントの際に走るのだろうか?』———— 妙な期待と好奇心を胸に、目的地へと歩を進めた。

開始30分前に到着することができた。会場の道路はすでに警察などによって封鎖、交通整理されており、パレード参加者が通る道に沿ってたくさんの観客で埋め尽くされていた。前線で見たいのもあって、人を掻き分け、最前の柵まで辿り着く。
辺りを見渡して気づいたが、観客の中にもパレードに合わせて衣装に身を包んだ人もいたり、多くの人がその象徴であるレインボーフラッグを手に持っていたり、フェイスペイントを施してあったりしていた。

———— 時間がきた。

最初に現れたのは、先程見たバイカーたちだった。クラクションと彼らの歓声、雄叫びで盛り上がる。みんな、手にはレンボーフラッグを握る。

(バイカーたちが右から左、左から右へと往復した後、)

パレードが始まった。僕が立っていた場所はパレードストリートのちょうど中間辺りで、バイカーたちが去ってから少し時間を空けて、第一弾がどデカイ音と共に歩いてくるのが見えた。

歓声は高まり、スピーカーからの爆音の音楽があたりを包み込む。

今年でシドニーのマルディグラが始まって40年だったようだ。
40周年の今年のテーマは【40 YEARS OF EVOLUTION】、「進化」を掲げる

車やトラックが通れば、そのクラクションが耳をつんざく。しかもリズムまで取ってる。運転手が遊んでいるようにも見える(笑)。
けれどもそのクラクションが会場を沸かせ、観客たちのボルテージは高まりまくるのだ。クラクションのリズムはパレードの盛り上がりに一役も二役も買っている。

———— ここからは少し早送りで。

ハチに扮装したおばちゃんとおじちゃんがDJやってる

40周年を強調するもの、シンボルのレインボーフラッグでアピールするものと様々だ。中には、観客と喜びを分かち合う人たちも。

カラフルが通る

スローガンやテーマを掲げて行進するグループも

「Sydney supports EQUALITY」、「LOVE makes FAMILY」
なるほど!、とうなづかされる言葉たちばかりだ。

インド系だろうかターバンを巻いたり、
アラブテイストな衣装を身に纏った男女が観客の僕らをあおる

銀行大手のANZ Bankも会社総出でパレードに参加している

この場に立っている時には気づかなかったが、このマルディグラパレードに参加することによって、LGBTQIへの寛容や社会的立場の平等性など多くの事象に対して、それらを受け入れること、賛同していることを示すサインになっているのだなと気づいた。

インパクト強すぎっ!!!!

驚いたことの一つにPOLICE(警察)のパレード参加があった。先程も書いたが、国家機関である警察がLQBTQIを受け入れ、肯定しているのだ。警察関連機関、ひいてはオーストラリア政府の度量の広さ、器のドデカさを物語っているワンシーンだ。

何より、みんな楽しそうに踊るし、歌を歌う。
婦警の人もノリノリだ。声もキレイだ。

「アオッ!」って叫んでいるんじゃないかと想像できてしまうのだが、正解は分からずじまい。署長さんだろうか(個人的には署長であってほしい)、動くステージに乗った男性の全力シャウトをみんなに送る。

熱唱・・・・!力強い歌声だ

本当に多種多様なグループがいるな、と感じた。
本当にみんな全力で楽しんでいるし、このイベントに対する喜びを満喫している。そして、それがビシビシ伝わってくる。

個人的には、このサンタクロースコスプレのグループのダンスが一番盛り上がったのではないかと思う。音楽と相まって多くの歓声と拍手喝采を得ていたと思う。季節外れだったけど・・・・(笑)

サッカーチームも参戦していた

鮮やかな布を振り回し、踊る。最高に艶やかだ

指揮者を先頭に、彼がこのグループのみんなを引っ張る

聖母のような方が乗っていらっしゃる

秋葉原で見かけそうなコスプレを彷彿とさせる

カサを使った行進も。上の写真は、プロ野球球団・ヤクルトスワローズの応援のようにも見える。

プロレスラーに見える彼らは何者なのか、何のグループなんだろうか。愛嬌があって、なぜだか分からないが、惹きつけられ、そそられた。ケムリが出るバズーカをドカドカ打ちまくる。

レインボーを纏ったプリンセス

キレッキレのダンスを披露するお姉様方

ガチムチのムキムキな身体でもって、これまたキレキレのダンスを踊る

レモン隊の行進

ワニが担ぎ出されている

独特なメイクアップをした太鼓隊。
頭に載せたヒラヒラのカラフルもあって、鮮やかさが際立つ。

UTS(University of Technology Sydney)の先頭トラック。
大学もド派手にこのイベントを後押ししている

「サンバ!!!!」

“この方”も登場していた。
みんなに手を振りながら、真っ直ぐに続くパレードストリートを行進していった

パレードの中でスローガンやテーマを掲げた看板を持って、訴求していたグループも多く見受けられた。観客の中にもワード入りTシャツを着ている人を見かけた。

気になったものをいくつか挙げていこうと思う。

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「GAY Pride」
「QUEER refugees welcome her」
「KNOWLEDGE = POWER」
「The choice is yours」
「Let’s talk about SEX」
「SILENCE = DEATH」
「Trans and Proud」
「Evolution to Exclusion」
「It’s a match」
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「KNOWLEDGE = POWER」は僕にとってはズシンときた言葉だった。このイベントで改めて知ることができたし、どういうものなのかと調べるまでにも至ったからだ。それが、POWER(=力)になっているかは分からないけれども、少しのKNOWLEGDE(=知識)は持てたのではないかと思う。他にも、「Let’s talk about SEX」は堂々としていてカッコイイな!と思った。おそらく、日本でこうしたことを言ったり、書かれた看板を持っていたら、白い目で見られることになるだろう。
また、「The choice is yours」「SILENCE = DEATH」には、LGBTQIの人たちやこのパレード自体を究極的に指し示している言葉のような気がして、言い得て妙だなと感じた。

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アメリカ・サンフランシスコでLGBTQIの聖地だとする「カストロ通り」に行ったことがある。街中を埋め尽くさんばかりの量のシンボルであるレインボーフラッグが目に入ってくることでも驚かされるだろうが、何より有名なのは、レインボーの横断歩道があることだろう。
もちろん、この地域だけでなく、アメリカでは行く先々でレインボーフラッグを見かけるチャンスに遭ってきた。僕の場合、特にレストランなど飲食店で見かけることが多かった。
「ウチの店は誰でもOKですよ!」「どんな(性においての)ステータスを持っていても飲食をすることができます!」というお店側の意思の表れだと知った。レインボーフラッグが意味するところが何であるかもアメリカ・ポートランドで友人に教えてもらってから認識するようになった。

僕自身はストレートだけれども、LGBTQIに関してはまだ知識も認識も浅く、何も分かっていないのと同レベルを指しているのと何ら変わりはしないのである。なので正直なところ、今回のイベントも『パレードが面白そうだ』とか、『派手そうなイベントだから』のような軽い気持ちで行ったし、観ていた。
そうだったからこそ、パレードで踊るみんなが堂々としていて、笑顔でその場・その瞬間を最高に強烈に楽しんでいる姿がものすごく印象的だったのだ。それほど訴えるもの、認知してほしいことが山のように、彼らにとってはとてつもなく巨大な障害・壁のように立ちはだかっているのだろう。

パレードの中で、警察や病院、大学、教会の関係ある人たち、ダンスグループ、銀行、保安官、海兵隊、サンタクロースコスチューム、サッカーチーム、工事現場の服装をした人たちを見た。各々がそれぞれの想いを持って、行進し、踊っていたのだろう。それらは隣人を動かし、コミュニティを動かし、街を動かし、国までをも動かしている大きなエネルギーとなっているのだ。
———— シドニーのマルディグラの始まりである第一回目(1978年)はデモ行進だった。シドニーがあるNSW(ニューサウスウェールズ)州で同性婚が合法化されたのは1984年。それ以前での、同性による結婚は犯罪扱いにされていたようだ。

それから40年 ————
交通整理をしていたのは警察官たち、空にはテレビクルーだったのか、ヘリコプターも飛んでいた。芸術作品たちは大学や美術館に展示されていた。そして、パレードでは何度も言っているがオーストラリア政府関係、警察や保安官、海兵隊のような人たちが参加しており、国家としてそうした社会を受け入れており、それだけの器があるということを指し示しているのだと僕は考える。

みんな煌びやかな衣装を纏い、裸に近い格好の人もいた。堂々と闊歩したり、ダンスしたり、叫んでいる。もちろん、パレードは参加自由らしいのでお祭り気分やイベントを楽しもうとしている人、ストレートの人たちも多くいるだろう。
けれども、そのパレードが開催されていること、それ自体を楽しんでいることが社会の一体性や融和に繋がっているのだと思う。それがこの国の大イベントの一つなのであれば、どれだけの深さや包み込む力に長けているか、大きいかが見て取流ことができる。次の社会の未来、姿、将来に一歩先んじているのではないか、と思わされる。

『知らない、そんなこと』と知ろうとせず、理解しようとせず済ますこともできるだろう。だけれども現に多くのLQBTQIの人たちはいて、中には苦しんでいる人たちも大勢いる。
今後ますます世界が、本当にいろいろな面おいて多様化していく中で、僕にとって考えさせられることは果てしなく大きい。



パレードで踊っている人たちも多くの観覧客もみんなが笑顔だった。「Happy Mardi Gras!(ハッピーマルディグラ!)」のかけ声、歓声と共に。
僕も気づかないうちにみんなに触発されてか、「ハッピーマルディグラ!」と叫んでいた。


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