AI産業界に「中国脅威論」を持ち込むのはまだ早いのか?

最近、米国企業Cogitai(コジタイ)社との提携を発表したギリア社清水氏へのインタビューを元に書かれている記事。読んでみると『「中国脅威論」に踊らされてはいけない、日本企業はまだまだやれることがある』という力強いメッセージが含まれているように思える。一読以上の価値があると思うので、ぜひ。

https://www.businessinsider.jp/post-177783

そうそう、清水氏と言えば、DeepLearning界隈では知らぬ人間はいないが、昨年12月のNVIDIA社によるGraphicsドライバーのライセンス変更を世界で最初に気づき、Wrelesswireへ記事を配信した人物としても知られている。

https://wirelesswire.jp/2017/12/62658/

同記事は英語でも配信され、この記事が元となりシリコンバレーの世界で最も有名なシードアクセラレータであるY CombinatorのHacker newsでも取り上げられた。彼の記事を起点に世界中で多くの議論が行われた。

https://news.ycombinator.com/item?id=16002068

弊社はこの記事でNVIDIA社のGraphicsドライバーのライセンス変更を知り、AMD Radeon GPUベースのDeep Learningクラウドをリリースした経緯があり、彼がこの記事を書いていなかったら、その後もしばらくはNVIDIAの戦略変更には気付かず打撃を受けていたかもしれない。

さて、話を戻すと、中国脅威論については清水氏の指摘するようにあまり考慮する必要はないだろう。しかし、中長期的には直接/間接的に無関係でいられないのではないかと感じている。短期的にはあまり考慮する必要がないと考えているのは、「わざわざ外国の開発した製品を使う理由がない」ためである。これも清水氏が別の記事で述べている通りである。

https://shi3z.hateblo.jp/entry/20181022/1540178007

例えば、今話題のがんの早期発見はがん研がしっかり研究を進めているし、がんの画像診断でもDeepMindが先行しているように言われているものの、国内でも同様の研究開発は多く行われている。したがって、同領域では米国の製品であっても使う理由はないだろう。中国の画像分析スタートアップであるセンスタイムの製品についても、日本国内でまかなえる技術であれば必ずしも使う理由はない。

一方で、ソフトバンク&中国脅威論というのはあるのかもしれない。

Uber、GrabといったMaaS企業へ大規模投資を行っているソフトバンクが、中国の百度(Baidu)が提供する自動運転システムのプラットフォーム「Apollo(アポロ)」を搭載した自動運転バスの日本での活用に向けた協業を発表している。Appoloは別の記事でも書いている通りオープンソースベースの自動運転ソフトである。百度はハードウェアで稼ぐつもりである。

https://www.softbank.jp/corp/group/sbd/news/press/2018/20180704_01/

また、ソフトバンクはアリババの株主でもある。アリババ社は独自のAIチップを開発しているし、アリババクラウドはソフトバンクが販売している。現在のところ、AWS、Microsoft、Googleの牙城を崩せているとは言い難いものの、NVIDIA社製のAIチップは非常に高価なので、アリババが開発したAIチップの値段が経済合理性の面でメリットあるなら使う企業は出てくるやもしれない。

https://www.technologyreview.jp/s/105834/why-alibaba-is-betting-big-on-ai-chips-and-quantum-computing/

ソフトバンクの影響力はもはや世界規模である。そのソフトバンクが中国企業と組んでやってきそうなところに関しては、早めに開発しソフトバンクと組むのが吉である。もしくは、自力で国内への導入を進めておくのが良さそうだ。トヨタがソフトバンクといち早く組んだというのは英断であったと個人的には考えている。

注意すべきは中国以上にソフトバンクなのではないかも考えている。

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