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製版勉強会 第3回 印刷研修 at 東京印書館

SKGでは、印刷の知識を深めるべく、不定期に印刷研修会を開催しています。

第3回となる今回のテーマは「製版」
普段私たちが作成したデザイン入稿データは、どのような工程を経て印刷に至っているのか。その流れを実際に見て学ぶため、印刷会社·東京印書館さまのオフィスを訪ねました。

今回のレポートでは、スタッフ·Sの目線から、その様子をお届けいたします。



1.はじめに

そもそも、「製版」とは何でしょうか?

デザイン入稿データは、入稿後そのまま印刷機にかけられる訳ではありません。印刷機に合わせた「版」という状態になってから出力されます。
この「版」を作るために必要な作業工程を「製版」と呼びます。

ネット印刷が普及してきた昨今では、データ入稿から仕上がりまでの工程を想像する必要性がなくなってきています。

しかしながら、「製版」をしっかり行うことは印刷物を美しい仕上がりにする上でも必要不可欠な工程です。

手元から離れたデザインがどのようにして仕上げられているのか、印刷の現場は実際どんな状況なのか···印刷に携わる者としてその工程をしっかり理解しておくことはとても重要です。

百聞は一見にしかず!ということで、今回はSKGがお世話になっている東京印書館さま(以下敬称略)のご協力のもと、製版の現場を知る勉強会の場を設けていただきました。

東京印書館
創業以降およそ70年にわたって数多くの出版印刷を手掛けてきた印刷会社。
SKGでは、2017年からデザイン制作に携わっている『日本機械学会』の学会誌などの印刷を担当していただいております。
プロジェクトの詳細はこちらからご覧ください。

2.製版の流れ

デザイン入稿データは、デザイナーによる入稿後、主に以下のような流れで製版にかけられています。


1.製版指示
製版管理部が入稿データを確認し、必要部署への指示出しを行います。

2.分解(スキャン)·色変換
原稿の取り込みとデータ化、リンク画像の補正などを行います。RGB画像をCMYKに変換してもイメージが大きく変わらないように、階調や明度の調整が行われます。

3.DTP(編集作業)
2で補正した画像への差し替え、入稿データに不備がないかどうかのチェック、印刷機に合わせた紙面設計(面付け)などを行います。
印刷機に適したデータに整える作業とも言えます。

4.校正出力
本番用の用紙、あるいは校正紙を用いて入稿データの出力を行います。色味や質感を確認するための色校正も、この工程で出力されています。

5.検版
初校と責了を比較し、修正箇所の確認と、意図されずに変更された箇所がないかなどを検査します。


どの工程も沢山の学びと気づきがあったのですが、次章では特に印象に残ったものをご紹介します。


3.製版ならではの視点・技術を知る

【分解】

色補正の作業工程を見学している様子(日本機械学会誌の誌面作業中)。

印刷に適した画像データを作る【分解】の工程では、データ化した画像の色補正を実際に見せていただきました。

ご担当の片山さんに気をつけている点をお伺いしたところ、

「どのような意図で見せようとしているのか」
「前後の文脈がどうなっているのか」

など、関連する情報を丁寧に拾い上げることを大切にされているそう。

デジタル写真であれば、撮影時の絞り値やISO感度まで目を通しているのだとか。プロファイルから撮影者の意図や目線を探り、適切な仕上がりイメージを想像する、という観点は目から鱗でした。

また、画像の意図を正確に汲むためには、情報を読み取ることは勿論、デザイナーとの認識の共有も重要になってきます。

例えば『朱色』一つとっても、黄味が強かったり、真紅に近かったり、人それぞれ思い浮かべる色味はさまざま。仕上がりイメージを現物や明確な言葉ですり合わせることが、より良い成果物に繋がるのだと感じました。


【校正出力】

校正機やスキャナーの紹介、部署の説明など、製版課の佐藤さんに丁寧にご案内いただきました。

【校正出力】では、以下のさまざまな出力機械を、用途やその仕様によって使い分けているそうです。

その中でも、簡易校正などで使用される出力機械は、色の再現度を高く求められます。そのため、「測色」と呼ばれる色調整を行なっているそうです。
例えばインクジェット紙は、通常よりも少し黄味掛かっているため、測色した結果を参考にしてその差分を調整しておくのだとか。気の遠くなるような作業とその繊細さに驚くばかりでした。

測色用に印刷したもの。


【検版】

デジタル検版の様子。あおり検版をしていた時代の名残で、平置きの画面で見る方が進めやすいそうです。

検版の工程では、液晶タブレットを用いたデータ検査が行われます。実際に検版の様子をご解説いただきました。

初校から責了までの間に修正が発生した場合、デジタル検版機がその場所を自動で検出。液晶タブレットを使用することによって、確認した印や注釈などもすぐに書き込めるため、効率良く検版作業が行えるのだそうです。また、PCモニターではなく、紙の印象に近い見え方だからこそ気づくことも多いそう。

こうした機材の導入やアプリケーションの活用など、時代に合わせて積極的にツールの見直しを行なっていることが印象的でした。
一定の生産性を保つ工夫も、印刷品質の保持に繋がっているように感じます。


4.データ作りで気をつけること

勉強会の最後には、デザイン入稿データの作り方について、私たちが普段疑問に感じていることを質問してみました。


Q.画像は入稿時に必ずCMYKにしなければいけないのか。
A.必ずしもそうである必要はない。
東京印書館のように印刷業者側が画像補正を行う場合もあるため、事前に印刷会社とデザイナー間で確認を取ると良い。

Q.sRGB·Adobe RGBの使い分けを知りたい。
A.印刷に向いているのはAdobe RGB(色域がより広く拾えるため)
Webのみの展開であればsRGB(対応機種がより多く、安定性が高い。)

Q.EPSデータの扱いについて知りたい。
A.Photoshop EPSデータは極力使わず、イラレやフォトショなどのネイティブデータの使用を推奨する。
作業時の動作が軽いことから重宝された時代もありましたが、
①デジタルソフトが発展してきてその必要性が薄れてきている
②Photoshop EPSというフォーマット自体が、ライトやシャドウにブロックノイズが出やすい性質である
などの理由から、東京印書館では推奨していないそうです。

Q.大きすぎる画像データの配置が良くない理由は何か。
A.面付けを行う際に、アプリケーションの動作が重くなってしまうため。
画像はできる限り配置サイズに合わせてリサイズした上で入稿してほしい。


SKGスタッフからは他にも沢山の質問が挙がり、いずれもとても丁寧にご回答いただきました。
具体的な理由や経緯までご説明いただくことで、正しい知識を持ってデザイン制作に取り組める、という自信に繋がりました。


5.勉強会を終えて

制作したデザイン入稿データにどのような手が加えられているのか、どんなこだわりを持って作業されているのか、実際に見聞きすることで、私たちの制作物はきめ細やかな技術の上に成り立っているのだということを実感しました。

技術的な側面は勿論のこと、プロならではの目線と判断力による支えも大きいと感じます。普段見えにくい工程も、沢山の人々の力で補われているのだということがわかり、身の引き締まる思いです。

通常では知り得ない貴重な情報もお伺いすることで、プロジェクト全体の動きをいつもと異なる視点から見つめ直せたような気がしました。
いつも尽力してくださっている皆様に深く感謝し、今後もより一層業務に励んでまいりたいと思います。

最後に、貴重なお時間をくださった東京印書館の皆様方に心より感謝申し上げます。

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